ほぼ日カルチャん

おいしい浮世絵展

ミュージアム

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いつの時代も食はたのしい。

あやこ

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「おいしい浮世絵展」
という展覧会タイトルを聞いただけで
くいしんぼうのわたしは
ぐっと興味をそそられます。

わたしは歌舞伎が好きなのですが、
江戸の町人を描いたお話のなかにも
「飲み食い」するシーンが
いくつも思い浮かびます。
遊郭でお酒を酌み交わしたり、
そば屋でかけそばをすすったり、
旅先の茶屋で腰かけてお茶をのんだり。
「髪結新三」という演目では
初鰹をおろす場面が印象的です。

江戸時代に限らずですが
人々のくらしにはいつも食があって、
おいしいもの、おいしい場所では
物語がうまれるんだろうと思います。
その物語を想像するたのしさが
「おいしい浮世絵展」にはあると思います。

この展覧会のメインビジュアルになっている
歌川国芳が描く女性は、
うなぎの串を両手でつかんで
豪快に食べています。
おすましな表情でないのが、とてもいいです。

春の虹蜺(歌川国芳、個人蔵)

作品タイトルの
「虹蜺(こうげい)」は虹のこと。
たしかにうしろには虹がかかっています。
うなぎを食べるその瞬間に虹がかかっている‥‥
特別でうれしい気持ちがあらわれているのでしょうか。
こうやって考えながら見ていくと
わくわくしてきます。

また、おいしい食べものそのものが
描かれている浮世絵以外にも
魚河岸や屋台の風景などの
情景を描いた浮世絵も
この展覧会には展示されるそうです。
おいしいを求めて人々が集まる様子は
現代に通ずる風景だと思います。

たとえばこちら。
ワイワイガヤガヤと
江戸の街の音が聞こえてくるようです。

日本橋魚市繁榮圖(歌川国安、江戸ガラス館蔵)

ひとりひとりにズームインして見ていくと
魚を運ぶ人、さばく人、売る人に買う人、
右の「寿」の暖簾の奥に見える背中は
お寿司を食べるお客さんです。
食材も、まぐろ、タコ、鯛、貝‥‥と
とってもゆたか!
実際の浮世絵を前にしたら
さらに気づくことがたくさんあって、
ずっと居続けてしまいそうです。

葛飾北斎の「北斎漫画」に描かれる
ユーモラスな人々の姿もたのしいです。
「曲喰(きょくぐい)」なんて、
いまも昔もやっていることは
変わらないなあと思います。

「北斎漫画」十編( 葛飾北斎、浦上満氏蔵)

やはり、いつの時代も食はたのしい!
このテーマで集められたことで
人物や風景に気を取られて
これまでだったら気づかなかった
「おいしい」にも目がいきそうです。
添えられた作品解説も
じっくり読んだらおもしろいだろうなあと思っています。

「おいしい浮世絵展」、
開幕をたのしみにしています。

基本情報

おいしい浮世絵展

会期:2020年7月15日(水)〜9月13日(日)

※日時指定入館券が必要です。
くわしくはこちらのご案内をご覧ください。
※当初の開催予定は4月17日〜6月7日でしたが
新型コロナウイルス感染拡大のため
開幕が延期されました。

会場:森アーツセンターギャラリー
(六本木ヒルズ森タワー52階)
開館時間:10:00〜20:00
※7月21日.7月28日.7月30日
8月28日は17時閉館
※入館は閉館の30分前まで。

公式サイトはこちら