KUSUNOKI
楠かつのり・
詩のかくれ場所。

発見28

「夕日の里」

採取場所 羽越本線(勝木駅から鼠ケ関駅あたり)
採取時間 1999年7月29日 午後3時40分頃

新潟駅で特急「いなほ」に乗り換えて、
山形県の酒田に向う。
途中で、美しい日本海を見ながら、
どこからか夕日に関係することばが多くなってきた。
そして、極めつけのように、
「夕日の里」と書かれた看板が目に飛び込んで来た。
 
その看板の立てられていた場所から見る夕日が、
夕日の中でも最高だということなのか。
その看板の後ろの日本海はとても綺麗でした。
そこに夕日が沈むのを想像すると、見てみたいと思った。
でも、一方には、夕日をひとりじめにするなんて、
と嫉妬している自分がいたりしておかしかった。


 

発見29

「ここの人は夕日ばかりで、朝日が見られねんだ。」

採集場所 らかん亭(山形県遊佐町吹浦)
採集時間 1999年7月29日 午後7時10分

夕食をした後で、その店の窓から海に沈んで行く夕日を
見ながら、酒田の友だちの友だちのシュウコちゃんが
そういっていた。
そうだったのか、とぼくは納得した。
いや、そうだったのだ。
  
ぼくのように分地で育った者には、山の中から現われて、
山の中に隠れて行くのが、朝日と夕日だった。
ここの人たちには、海の中に沈んで行く美しい夕日には
海の中から現われる綺麗な朝日が、朝日なのだ。

そう思うと、心のバランスがどこか崩されたような
感じになった。
しかも、朝日しか見られない大平洋側の人たちも
同じような感覚でいるのではないか、と思ったりした。



発見30

「かなかなかなかな、かな」


採取場所 熊野宮神社(小平市)の参道
採取時間 1999年8月3日 午後6時59分

暑い、今年の夏は暑いが続き過ぎる。
夏はこんなに暑かったのでしょうか。

犬の散歩をしながら神社の参道を歩いていると、
かなかなかなかなと近くの木にとまったヒグラシが
鳴き始めた。
ぼくは子供の頃、この蝉のことをヒグラシオン
と呼んでいた。
まるでドイツ語のような発音。
だからかな、ヒグラシのことを蝉ではなく、
いまでもなにか楽器のようなものに感じてしまう。

それにしても、他の蝉は、暑い暑い
といっているようなのに、ヒグラシだけでは、
「涼しいね」
といっているように聞こえるのは不思議ですね。

1999-08-11-WED

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