KUSUNOKI
楠かつのり・
詩のかくれ場所。

発見25

「がんばってください」

採取場所 楠自宅リビング
採取時間 1999年7月21日 午後3時10分 

糸井さんが突然テレビに現われて、そういっていた。
こういって声を掛けられるのが嫌だったんだけど、
これはあいさつだった。
それもことばが体にさわるような
あいさつだった。

ことばが体にふれる。糸井さんはテレビの前にいる
ぼくにも、がんばってください、といってくれていた。

テレビを通して、もう4ヵ月間も
ご無沙汰しているぼくに、
糸井さんのことばがさわってきた。



発見26 

採取場所 楠自宅玄関の外の塀
採取時間 1999年7月22日 午後2時12分

うちの塀のところに蛾がいた。とても大きな蛾だった。
蛾を嫌がる人がいるが、その模様の緻密な美しさに、
ぼくはいつも感嘆する。それは敵から身を守るために、
編み出された模様であり、色であるかもしれない。
それを無気味だという人もいる。
不思議な粉をまき散らすのが、嫌だという人も多い。
でも、ぼくは、あれは正しく身を粉にして、
身を守っているのだと、その行為にも感嘆するのです。



発見 27

採取場所 楠自宅ポスト 
採取時間 1999年7月23日 午前11時13分 

「したさげ、なんだじゅーな」

山形県の酒田市の友だちから手紙が届いた。
その手紙で教えてもらった方言。
「だから、どうしたの」という意味だが、
友だちが言うのとぼくが言うのとでは、かなり違う。
実感が込められているのと、込められないのとでは、
同じことばを使っても、そのことばの生死が
はっきり区別できてしまう。

ところで、方言は死語なのだろうか。
それとも、不死のことばなのだろうか。
「したさげ、なんだじゅーな」。

1999-08-03-TUE

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