KUSUNOKI
楠かつのり・
詩のかくれ場所。

発見22

採取場所 楠自宅郵便受け
採取時間 1999年3月18日 午前10時15分

手紙
吉増剛造さんの沖縄からの手紙


吉増剛造さんはいつも旅をしている。
沖縄から電話が掛かって来た夜には、
NHK番組『わが心の旅』で
ブラジルにいるといった風に。
しかも、電話の喋りがすでに詩であり、
映像の中でただ歩いているだけの姿が詩になってしまう。
これではもうどんな詩人もかなわない。
「仙人が実在している」、吉増剛造さんは
ぼくにそう感じさせる唯一の詩人です。
この手紙(お見せできるのは部分的ですが)は、
絵日記になっているのと同時に
スケジュール表になっていて、詩人の仕事振りもわかる。
この手紙もみごとな詩になっている。




発見23

採取場所 佐野洋子宅
採取時間 1999年3月19日 午前1時20分

「ヨウちゃんはね、これでもかっていうくらい、
運が悪くさぁ、会社が潰れたり、辞めさせられたり、
そんなことを何度も繰り返して、
社会から転がり落ちちゃったんだけど、
いまは北海道に住んでいてすごく貧乏なんだけど、
とっても、優しいのよ。
もう、すんげぇ、人の気持ちがわかる人なんだよ。
そういう人もいるんだよ」。

絵本作家の佐野洋子さんが、
真っ当な人について話してくれる。
佐野さんの話しに出てくる人たちは
ぼくをいつも励ましてくれる。
真っ当な人には、すごく根性の悪い人も出てくるけど、
これがすごく情が深かったりして、
その根性の悪い人にも
ぼくはいつのまにか慰められたりしている。
佐野さんの話は面白い。
だから、今朝の二時半までお邪魔してしまった。




発見24

採取場所 新宿ジャズ喫茶 DUG
採取時間 1999年3月23日 午後4時16分

「ゴジラがアーケードを壊していて、
みんな逃げようとしているんだけど、
みんな松葉づえをついてるんですよ」。

ちえちゃん
友だちの伊東千絵ちゃん(写真)が、
そんな小学生の頃の夢の話をしてくれた。
ぼくは一度空を飛んでいる夢を見てから、
何度か空を飛ぶために、丘のようなところで
思いっきり走って滑走してみるものの、
結局飛ぶことはできなかった夢を見ている。
その夢に対して千絵ちゃんが、
「でも、それって積極的な夢ですよね。
空を飛ぼうとして走ってるなんて。
わたしのは、松葉づえをついて逃げようとしている
消極的な夢です」という。
いや、ぼくにすれば、速く逃げなくてはならない時に
松葉づえをついてるなんて、けっこうスリリングな、
これぞ夢という夢を見られて幸せだと思うんだけど。

1999-03-31-WED

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