KUSUNOKI
楠かつのり・
詩のかくれ場所。

発見9

採取場所 楠自宅二階廊下
採取時間 1999年1月15日 午後4時41分

『あなたは確かにぼくに
甘え過ぎていたと思います、
でも考えてみるとぼくも
あなたへの甘えがありました。』

谷川俊太郎さんから届いた
ファックスの中の言葉。
………。

発見10

採取場所 楠自宅リビング
採取時間 1999年1月19日 午前10時50分

『犬は人の感情を理解している』

フジテレビの番組「どうなっているの」の中で
誰かが喋っていたのを声だけ聞いた。
楠ピッチ(柴犬、雄 8才)は確かに
飼い主の感情の動きをかなり理解していると思う。
でも、変わり者で、
いまだに飼い主に何か隠していることがあって、
心を完全に開いていない。
彼にどんなトラウマがあるのか、
人間の声帯をつけて話せるなら聞いてもみたいけど、
でも、やっぱり、犬と人との間には
言葉がないほうがよいと思っている。

柴犬

発見11

採取場所 武蔵野線府中本町行き電車車内 東所沢駅付近
採取時間 1999年1月20日 午後8時12分

この発見は言葉ではなく、
しかもその時、デジタルカメラも持っていなかったので、
こういった光景だったと話すしかありません。
それは、電車が駅に止まりかけていた時、
中学1年生くらいのかわいい女の子が、
鞄から小さなスケッチブックをやにわに取り出し、
さらさらと鉛筆を動かし始めた。
彼女の目は、ぼくの隣に座っている人を
ジッと見据えたままだ。
そして、電車が止まると、
彼女はスケッチブックを手際よく鞄にしまい降りて行った。
それは15秒ほどの出来事だった。
まるで西部劇の早撃ちのようなスケッチだった。
短い時間で何かが完成される、
その光景はとても気持ちよかった。
鞄にしまいかけた彼女のスケッチブックには、
確かに人の顔が描かれていた。
後で、隣の人を見たんだけど、
な、なんでこのおじさんなの、と思った。
でもね、だから、彼女のことが印象に残ったんだけど。

1999-01-27-WED

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