第1回 意識を変えるだけで。
(まわりのスタッフに)
今日は、またおもしろいね。
ボク、糸井さんと話するとおもしろいね(笑)。
去年も、おもしろかったですよね。
糸井
ねぇ(笑)。
ぼくはただ、ふつうに正直に
しゃべってるだけなんですけど。
いや、なんか引き出されてるような感じがします。
糸井
じゃあ、もうひとつ、正直に訊きます。
去年もここでこうやって、シーズンがはじまる前に
原さんに1年間の展望をうかがいましたけど、
去年のシーズンが優勝しながらも
思ったようにいかなかったというのは、
目指した野球が間違っていた、ということですか?
いや、決して間違いではなかったと思うんです。
やっぱりそれぞれの選手が
コンディションをつくれなかった。
本来の力を発揮した人がいなかった、
ということだと思います。
糸井
たしかに、十分に力を発揮したっていう
選手がいなかったですねぇ。
ほんとに、誰ひとりとして‥‥。
いや、もう、あれが100パーセントの力であるならば、
クビですよ、今年、その連中は。
糸井
はははは、クビではないけれども(笑)。
まだ彼らは本来の力を出し切れてない、
と思うからこそ、球団は彼らと契約したんです。
うちの選手は、あんなもんじゃない。
糸井
はい、ファンとしても、そう思います。
でも、去年は、それでも優勝できたという、
ほんとうに不思議なシーズンでした。
やっぱり、さきほどもお話に出ましたが、
守備がよかったですね。
守備はもう、随所に、
神業みたいなプレーが出ていました。
糸井
あと、走塁面もよかった。
(鈴木)尚広を筆頭に。
はい、よかったですね。
あと、去年のチームのよかったところとしては、
個の力が出づらかった状況のなかで、
「ここはチームとして動こう」というときに、
誰しもが、パッと同じ方向を向けたんです。
糸井
ああー、なるほど。
四番バッターであろうが、
ここは「バントだ」っていうときには、
サッとチームプレイに徹することができた。
糸井
そうですね。
過剰に自分を犠牲にして奉仕するわけじゃなく、
やるべきときにきちんとチームプレイができた。
そう、そう。
チームとして動いたけれども
結果としてうまくいかなかった、
というケースはもちろんあります。
しかし、チームとして動こうというときに、
誰かがそれを乱してうまく動けなかった、
ということはなかったですね。
糸井
それは、去年、優勝できた
大きな要因なんでしょうね。
ええ。団結力ですよね。
糸井
団結力。
このチームは、団結力と、
さきほどから言ってる守備力というのは、
そうとう高いものがあると思っています。
糸井
今年、チームを「解体する」とはおっしゃってますが、
団結力に関しては、引き継いでいきたいですね。
そうですね‥‥。
まぁ、しかし、団結力は大切なんだけども、
その団結力をいつ発揮するのか、
ということもありますよね。
糸井
え?
つまり、1点をしのぐギリギリの状況になって
団結力をみせていくのか、
あるいは、点差の開いた余裕のある展開において、
さらに団結していくのか‥‥。
ボクは、後者だとラクなんだけどなぁ(笑)。
糸井
監督としては(笑)。
そう(笑)。
糸井
いやぁ、ほんとに、
今年は力を発揮してほしいです。
ええ。力も技術も、すばらしいものを
持っているわけですからね。
糸井
ちょっと違うテーマになりますが、
ぼくは、「技術」について、最近よく考えるんです。
たとえば、画家の横尾忠則さんは、
ぼくが「横尾さん、いま、欲しいものはなんですか?」
って訊くと、「技術だ」って言うんですよ。
ぼくは絵の専門家ではありませんが、
横尾さんって、技術はもうぜんぶ持ってるんじゃないか、
というようなイメージがある人なんです。
でも、「欲しいのは技術だ」って言うんですね。
「技術がないからこれしかできないんだ」って。
ともすれば、人って、
「技術じゃないんだ!」という言い方で
「技術」ということばを使うんですけど、
ぼくは、年を取るにしたがって、
「できたことは技術があったからできたんだし、
 できないことは技術がないからできないんだ」
っていうことを、しみじみ思うんです。
原さんは、技術について、どう思われますか?
ボクは、技術は個性だと思ってますね。
糸井
はー、「個性」。
技術は個性。
プロ野球選手でいうと、
髪型とか、ユニフォームの着こなしとか、
そういうことをイメージするかもしれませんけど、
そんなの個性じゃないです。
やっぱり、技術を持つことが個性。
そこでいう技術がどういうものかというと、
ここぞ、というときに発揮できるもの。
そういうものが技術であり、
その選手の個性なんじゃないかと思います。
糸井
たとえば、かつての、
川相選手のバントとか。
そうです、そうです。
もう、あれなんか、
まさに技術であり、個性ですよね。
糸井
いまいる選手でいえば、井端選手の右打ち。
いや、もうあのしつこさね。
うちは、いい打者は多いんだけど、
「凡打が淡泊」な選手が多いんです。
そういうなかで、やっぱり、
井端は凡打でもしつこいですからね。
糸井
そうですねー。
「凡打が淡泊」も、よくわかる(笑)。
今年は、そうならないようにしたいですねぇ。
いい打者でも7割は凡打ですからね。
10打席のうちの2本とか3本のヒットも重要ですが、
7打席、8打席の凡打の内容を
我々は問わなきゃいけない。
糸井
はい。
まぁ、ひとりひとりの選手が
100パーセントとはいわないまでも、
8割、9割の力を発揮するだけで、
チームの力はものすごく大きくなります。
去年は、8割くらいの力さえ、
発揮できなかった選手が多かったですから。
糸井
そうですね。
その意味では、今年はすごくたのしみですね。
ええ。そこを見てください。
「やっぱりか」と
思われないようにがんばります(笑)。
「また接戦か!」ってならないように(笑)。
糸井
監督がほめられてるようじゃいけないですね。
ぜんぜんダメです、それはもうほんとうに。
去年は、少なからず、采配や試合運びを
ほめていただくこともありましたけど、
正直、ちっともうれしくなかったですから。
糸井
「誰でもできるよ、あそこの監督は」
って言われなきゃダメですよね。
そうです、そうです。
「あそこは選手がいいから」って。
「誰が監督だって勝つよ」って。
糸井
言えるように準備しておきます。
「原でもできるんだよ」って(笑)。
そうです、そうです。ほんとうにそう。
糸井
言われたいですねえ(笑)。
「ボクはなんーにもしてませんでした」って言いたい。
初回からサイン送ってるようじゃダメです。
違うんだ、プロ野球は。
糸井
はい(笑)。
違うんだ、プロ野球は。
糸井
何回も言うほど(笑)。
はい。がんばります。
糸井
たのしみにしています。
ありがとうございました。
はい、ありがとうございました。
糸井
今年もおもしろかった(笑)。
糸井さんと話すといつもおもしろくなる。
(原監督との話はこれで終わりです。
 そして、ペナントレース、開幕!)
2015-03-31-TUE
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