その11 成長のイメージは螺旋形。

北 折 健康のためにがんばる、
っていうようなことで、
ずーっとがんばれる人って
日本にはそうそういないと思いますので、
とりあえず方向がそっちだってことを確認する
っていうことだけできていれば、
もうあとは、たのしいってことが
一番のモチベーションに
なっていけばいい話ですね。
糸 井 光のある方向だけは、見失わない、
っていう感じですよね。
北 折 はい、そうだと思います。
 
糸 井 がんばって、きつい目標立てたり、
意志で乗り越えようとしたりすると、
光の方向じゃないところでも、
へんな満足ができたり
自分にがっかりしたり、
ということにすぐなりますよね。
北 折 なりますなります。
糸 井 それはもう、組織なんかでもおなじで、
さっきのうちあげを毎週やってる話って
すごくよくわかるんですけど、
熱を込めて、がんばるぞ!
って、やって、こう、ものすごい
例えば、業績を伸ばしたとか、
あいつすごい活躍だなぁみたいなことが、
すごすぎるっていうのは、ほんとに迷惑で、
来年さらい年になったら、
すっかり疲弊しちゃってたりする。
その意味では、成長のイメージって
ぼくはいつも、螺旋形で描こうとしてて、
ぐるぐるおんなじようなところ、
回ってるように見えるんだけど、
高さがちょっと変わってる。
北 折 ああー。
糸 井 バネみたいな形で人間は成長していく。
北 折 うーん。
糸 井 これはもう、進化の速度もみんなそうで。
堂々巡りをおんなじようにしてるんだけど、
季節ごとの変化だけをしっかり見てれば
変化するから、みたいな。
そうじゃないと、組織の成長っていうのも、
急激な右肩上がりとかやっちゃうといけない。
この体重のグラフもそうですよね。
北 折 あ、それはそうですね。
糸 井 ガクッと落ちちゃうと。
北 折 それはてきめんに。
ちょっと無理しようとすると
次の日それが出ますからねぇ。
 
糸 井 あと、このグラフの作り方が
上手だなぁと思うのは
縦のラインを細く長くつくってること。
えらいですよね。
これ、発明ですよね。
北 折 これね、また、エクセルだからできるんですけど、
停滞期になったときに、
一番下の希望をしている目標数値をゆるめて
レンジを広げると、
グラフのでこぼこが大きくなるので、
もっといろんなことが見えてきます。
パソコンで簡単にできますので。
糸 井 そうか。
北 折 はい。
やっぱりここまで下げたいっていうのが
下の方にあると
つまり、目標が大き過ぎると
見失うことがあるっていうのは、
ここの中にもあるわけですね。
日々の変化が楽しめなくなるわけですから。
糸 井 あー、そうかそうか。
ぼくは、なんにも考えないで、
やっちゃったんですけど。
北 折 はい。
糸 井 目標の数字を書き込むところだけは
自分でやればいいですよね。
北 折 あ、そうです、はい。
糸 井 これって別に特許じゃないですよね。
北 折 もう、ぜんぜん特許じゃないですね。
しかもこの本買わなくっても
ダウンロードができますから(笑)。
観 客 (笑)。
糸 井 そうですね。
来年ぼく、ほぼ日手帳につけようかと
思って。
北 折 あ、はい。
糸 井 そしたら、みんなが、
自然につけてくれる。
じゃあ、著者の許しを得ていいでしょうか。
北 折 ぜんぜんOKです。
はい(笑)。
糸 井 そうですか。
たぶん、数字のところ、
自分で書きこみましょう
っていうふうにしないと
ダメですよね。
北 折 その場合、ひと目盛
100gぐらいにしたほうがいいですね。
糸 井 そうですね。
そうだそうだ。
いまね、ちょっと
これでもおもしろいんですけど、
ちょっとつまんないんですよね。
もっとガンガン動いた方がいいね。
 
北 折 そうですね。
レンジを変えると、
なんか急に見えたような気がして
またたのしくなったり。
糸 井 ああー。
そういうことも、
組織論の中に応用できますよね。
小さい目標を立てて、
おもしろがるっていうのが、
仕事していくときにも、
すごい励みになって。
ぼくらで言うと、
アクセス数ってあるじゃないですか。
北 折 あ、はいはいはい。
糸 井 アクセス数にこだわるなよって
いうのもおかしいし、
こだわれよもおかしいし、
ちょうどいい何かが
あるんだろうなと思うんですけど、
北折さん、さっきおっしゃったことが
全部、自分たちがやってる仕事にも役に立ちそうで。
とってもおもしろかったです。
逆に、北折さんのほうから、
オレなり、あるいは、
「ほぼ日」なりみたいなものを見てて
こういうことをいま聞いてみようかな
みたいなことありますか。
北 折 うーん、次回までの宿題にさせてください。
糸 井 たぶん、また
お会いしていいって言われれば
お会いしたいと思ってるので。
北 折 ぜひお願いします。
糸 井 ぜひ、いろんなことで、
出会いたいと思ってるんですけど、
もう一個じゃあ、ダイエットじゃないところ、
ガッテンの、おもに、料理に関わるところで、
たくさんの工夫をやってらっしゃってますよね。
例えば、チャーハンの作り方とか、
こういうふうに失敗してるでしょ、
ここであきらめたでしょ、
でも、あるんですね方法が、
っていうような、
4段重ねぐらいで。
北 折 その通りです(笑)。
糸 井 これで、パラパラチャーハンが
家庭のガスでできますよ
って書いてあったりするの読むと、
この人と飯島さんを会わせなきゃって。
北 折 (笑)。
糸 井 もうね、呆れる。
あの探究心というか、方向性の探し方。
どういう心でやってるかっていう、
じゃあ、チャーハンだけで、
ひとつだけ教えてもらえますか、例として。
まずは、一般論として、強火でやるんだよ
これをやってみます、みたいなことから
ちょっと教えてもらえますか。
どう段階を踏んだか。
北 折 ま、チャーハンに限らず
なんでもそうなんですけど、
結局ぼくたちがやってることで、
「ガッテンまでしてもらう」ってときには、
あ、こういうふうに考えればよかったんだとか、
こういうふうにものの見方の角度を変えれば
よかったんだっていうことが起こったときに
ガッテンガッテン!なんです。
つまり、これまでの常識がかわらないといけない。
で、それからすると、
考え方の方法論っていうのは1つなんですよ。
それは何かっていったら、
通常の常識っていうものを
徹底的にあらうっていうことですね。
ですから、みなさんは普通にこうやってるでしょ、
ところが──、っていうようなところを、
とにかく探していって、
それのいくつかのうちで、
ここだったらいけるってところに
思いっきり特化していくっていうことから
すべて考えてるんですね。
糸 井 うんうん。
北 折 そうやって、最終到達点を見つけて、
で、あとは、結論からの逆算で組み立てます。
ですから、チャーハンで言うと、
──まぁ、チャーハンの場合はいくつか
複雑に絡まってるんですけど──
卵を、水と油をくっつける役だ、
っていうふうに認識できれば、OKですよ、
っていうところに落し込むことが決まってから、
そこからの逆算でいきます。
そうすると、その途中に、
べちゃべちゃするのは、
水分のせいだと思っているでしょ、
っていうのもあるし、
油のせいだと思っているでしょ、
というのもでてくるわけです。
糸 井 うん。
北 折 で、それは、水分のせいではありませんよ、
っていうと、え、なに?
っていうふうになったり、
油のせいではありませんよっていうと、
じゃあ、なんなの?
っていうようになっていく、
っていうことを、
下から逆算してくるって感じですね。
 
糸 井 できあがりの図があって
できあがりの中のポイントになる肝の部分は、
卵が水と油をくっつけるというか、
仲良くさせる、秘密であると。
北 折 はい。
糸 井 つまり、卵がなかったら、
ガッテンチームもパラパラチャーハンなんか
つくれやしませんよ、と。
北 折 はい。
卵の乳化作用っていうもので
説明がつくとわかったときに
そこへ向かっていくルートっていうのは、
スタート地点から向かっていくんじゃなくて
ゴールから、戻っていく感じで、
すべてそうやってつくってるんですね。
(つづきます!)
2010-06-04-FRI
まえへ このコンテンツのトップへ つぎへ