強さの磨き方。格闘技ドクター二重作拓也 ☓ 糸井重里 どうしたら人は、もっと強くなれるのだろう?

強さの磨き方。格闘技ドクター二重作拓也 ☓ 糸井重里 どうしたら人は、もっと強くなれるのだろう?

挌闘技ドクターこと、二重作拓也さん。
現役の医師でありながら、
国内外で挌闘技セミナーを開いたり、
敬愛するプリンスの名言をまとめた
『プリンスの言葉』という本を書いたりと、
枠にはまらない活動をつづけている方です。
そんな二重作さんと糸井重里がはじめて会い、
いろいろなことを長く話しました。
キーワードは「強さ」について。
なぜ人は強さに憧れるのか?
なぜ人は強くなりたいと思うのか?
発見と驚きのつまった対談を、
全8回にわけてお届けいたします。

二重作拓也さんのプロフィール
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第6回 のび太とジャイアン。

糸井
なぜ人は強いものに憧れたり、
魅せられたりするんでしょうね。
二重作
うーん‥‥。
糸井
それって人間が最初からもってる本能なのか、
それとも別の何かなのか‥‥。
二重作
個人的な話になってしまいますが、
ぼくの場合は
強さへの憧れというより、
弱い自分が嫌いだったんです。
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糸井
こどもの時にそう思ったんですか?
二重作
はい。
何か言いたいけど言えないとか、
強そうな人を見たら気をつかってしまうとか、
そういう自分自身がすごくイヤで、
それで空手をはじめたんです。
だからぼくにとって格闘技は
「変身ベルト」のようなものなんです。
糸井
あぁー。
二重作
リングみたいな試合場があった時、
格闘技というものが
自己顕示の場という人たちも
おそらくいると思うんです。
そういう場所で
自分の才能を発揮する人もいるでしょう。
挌闘技という世界の中なら、
そういう人たちが
いてもいいと思うんです。
糸井
いわゆるジャイアンたちだよね。
二重作
そうです。
腕っぷしの強いジャイアンたち。
そういう人たちって、
やっぱり格闘技に向いてるんですよね。
選手になる前からケンカ慣れしてたり、
やんちゃだったりしますから。
糸井
そうだね。
二重作
ぼくがよくする例えで、
格闘技の世界にはふたつの入口があって、
「強い人の入口」と「弱い人の入口」がある。
ぼくはのび太側の人間なので、
「弱い人の入口」から入ったんです。
だからこそ弱い人の気持ちがわかるし、
弱い人が強い人の練習を
同じようにやっても強くはなれないよ、
ということもわかってるつもりです。
糸井
なるほど。
二重作
そうとう矛盾した話なんですが、
ぼく自身は、人を殴って、蹴り倒して、
相手が目の前で気を失うのを見るのは、
そんなに好きじゃないんです。
KO勝ちした試合もありますが、
ぼくにとっての格闘技はそうじゃなくて、
自分のテリトリーを守るものだったんです。
侵略してくる人に対して
「ストップ!」と言うのがぼくの格闘技。
だから言ってしまえば、
究極的にディフェンスなのかもしれません。
糸井
たしか沖縄の空手ってそういうものですよね。
二重作
そうですね。
沖縄の空手は家族や集落、
島を守るというのが目的でした。
糸井
いまおやりになってるのも、
そういう系統のものなんですか?
二重作
伝統的な空手の経験もありますが、
いまはもっとミックスした感じです。
ポイント制や直接打撃制の空手、
アメリカンカラテに柔道の試合経験もあります。
そのあと、チームドクターとしてK-1選手や、
総合格闘技の選手と練習してきたので、
つまり、ごった煮なんです(笑)
糸井
いろいろやってますね(笑)。
二重作
みんなそれぞれ違いますが、
やってるのはぜんぶ人間なんです。
そこは絶対に変わりません。
ぼくにとっては、
そのへんにすごく興味があります。

例えば人間の手が
こういう形に発達した理由って、
進化の過程で、
手を伸ばして果実をとって、
体に引きつけるという、
その基本動作がもとになってるそうです。
糸井
あぁ、なるほど。
二重作
そうじゃないと、
手がこの大きさになる理由がないんです。
そう考えると、手を伸ばして、
ひねって、引きつけるという動きは、
じつはあらゆるスポーツに共通する動きです。
糸井
たしかにそうだ。
二重作
ピッチャーの投球もそうで、
「球を投げる動き」と
「果実をとる動き」には共通性があります。
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糸井
つまり、逆再生だ。
二重作
はい、逆再生なんです。
だからその連動した動きから大きく外れると、
故障したり、ケガをしたりします。
そういう人間の根本の動きや機能に
興味があります。
人として本来もってる強さを、
どうすれば底上げできるんだろうって、
そこを探るのがおもしろいんです。
糸井
いまの「強さの底上げ」というのは、
言い換えると
「自分のポテンシャルをどう活かすか」
ということですよね。
二重作
ああ、そうです! まさにそう。
糸井
生まれながらに備わっているものを磨くと、
こんなにも活かせるよ、っていうね。
その考え方は、ぼくとすごく近い。
二重作
人間の可能性を解放するというか、
ちょっと光の当て方を変えるだけで、
大きく変わることがあるんです。
「脳のイメージを変えると、運動が変わる」
ということに興味があります。
糸井
脳のイメージを変える?
二重作
脳のイメージを変えるだけで、
運動が確実に変わるんです。
これはもう絶対に変わる。
みんなにも体験してほしいくらいです。
糸井
それは誰でも体験できるんですか?
二重作
かんたんにできます。
いま、ここでやってみましょうか?

(つづきます)

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