強さの磨き方。格闘技ドクター二重作拓也 ☓ 糸井重里 どうしたら人は、もっと強くなれるのだろう?

強さの磨き方。格闘技ドクター二重作拓也 ☓ 糸井重里 どうしたら人は、もっと強くなれるのだろう?

挌闘技ドクターこと、二重作拓也さん。
現役の医師でありながら、
国内外で挌闘技セミナーを開いたり、
敬愛するプリンスの名言をまとめた
『プリンスの言葉』という本を書いたりと、
枠にはまらない活動をつづけている方です。
そんな二重作さんと糸井重里がはじめて会い、
いろいろなことを長く話しました。
キーワードは「強さ」について。
なぜ人は強さに憧れるのか?
なぜ人は強くなりたいと思うのか?
発見と驚きのつまった対談を、
全8回にわけてお届けいたします。

二重作拓也さんのプロフィール
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第2回 武術とマンモス狩り。

糸井
格闘家としての二重作さんは、
「こんなおもしろいものはない」と思いながら、
人と殴りあったり、組んだりしてるわけで。
二重作
冷静に考えると、
おかしなことなんですけどね(笑)。
糸井
でも、格闘技の要素って、
じつはいろいろなところにあって、
よく「何々の格闘技」って言いますよね。
二重作
「氷上の格闘技」とか。
糸井
そういう言い方からしたら
「じゃあ、格闘技はなに?」って。
二重作
究極というか、原液というか‥‥。
糸井
原液なんですよね。
その原液の格闘技というのは、
それこそなんなんでしょうね。
二重作
格闘技の存在意義やルーツは、
いろいろあると思うんです。
例えば、原始時代を想像すると、
男の人はマンモスとかをやっつけて、
それで家族や集団を養っていたわけです。
代々それがつづいてきたおかげで、
いまのぼくたちがいます。
そういう背景はきっとあると思うんです。
糸井
そうですね。
二重作
じゃあ、その原始時代に
「人はマンモスと1対1で戦ったか」というと、
たぶん戦ってないはずです。
糸井
うん、戦ってないね。
二重作
そうですよね。
もし戦ってたら人類はとっくに絶滅してます。
おそらくいろんな方法でマンモスを弱らせて、
いまなら絶対に勝てるという状況をつくって、
それから襲いかかっていたはずです。
つまり、それって格闘技ですらない。
むしろ真逆のものと言えます。
糸井
たしかその時代って、
マンモスを沼地に誘い入れて
狩りをしていたそうですね。
二重作
そういう戦い方ですよね。
で、いわゆる「実戦」とか
「武術」と呼ばれるものって、
まさにそれなんです。
糸井
えっ?
二重作
武術でいうところの「一撃必殺」とは、
例えば「相手の目に砂をかけてから殴る」
という感じなんです。
現代に伝わる「型」にも、
砂や海の水をつかった動きがあります。
なので、武術の世界に「正々堂々」はない。
糸井
つまり、マンモス狩りだ‥‥。
二重作
どれだけ「汚ない、ずるい」ができるか。
糸井
はぁーーー。
二重作
だから、街中で戦うという話になれば、
相手を細い路地に引き込んでパッと隠れて、
うしろからバカーンと殴るって話になっちゃう。
糸井
もはやケンカですね。
二重作
それが、ケンカですらないんです。
だって、スタートがないから。
糸井
あぁ、そうか‥‥。
二重作
スタートというのは、
お互いの暗黙的ルールのひとつです。
きっかけがあるから
お互いに身構えることもできます。
だけど、もし「親の仇!」みたいなことを
本気で実行するとしたら、
まずは笑顔で近づいて、
3年ぐらい一緒に酒を飲んで仲良くなって、
それからグサッとやったほうが効率的です。
糸井
まったくその通りだ(笑)。
つまり、ケンカにしてしまったら、
相手も卑怯な手をつかっていいことになる。
二重作
そうなんです、際限がない。
だから格闘技の選手ってすごいんです。
だまし討ち無しという約束の中で、
正々堂々と相手を倒すわけですから。
1対1でマンモスと対峙する人、みたいに。
糸井
おもしろいなぁー。
そうなると「強さ」というのは、
もはや「観念」の話になってきませんか。
二重作
そうなりますね。
考えれば考えるほど混沌としてきます。
糸井
ねぇ(笑)。
二重作
だから「こうきたらこう」みたいな護身術は、
想定の範囲を超えるとつかえません。
ほとんどの護身術は、
テロ以前の路上を想定しています。
いまはもうそんな時代じゃない。
毒や細菌に護身術は効きませんから。
糸井
怖ろしいですね、人間社会って。
二重作
怖ろしいです。
そうやって考えていくと、
成熟した社会でいちばん怖ろしいのは
「やさしく、つよく、おもしろい」人かも(笑)。
糸井
ほんとだね(笑)。
二重作
そういう人はある意味、最強です。
やさしい人は想像力もはたらくし、
相手の懐に入っていけちゃう。
そういう人はやらないというだけで、
毒を混ぜることだって、
ほんとはかんたんにできちゃいます。
糸井
方法は無限にあるわけだし。
二重作
ありますね。
さらに「おもしろく」ということば。
これを「創造的」と解釈するとしたら、
「何をやってるかよくわからない人」は、
やっぱりどの世界でも強いです。
糸井
ああ、そうだね。
ぼくはそれ、けっこう意識的にやります。
二重作
やっぱり。
糸井
わかられるようなことを考えた時に、
負けだって思っちゃう。
二重作
ジョン・レノンも
「俺は相手がわからない方法で勝ちたい」
って言ってたらしいです。
糸井
しびれるねぇ(笑)。
たぶん、そういう考えになるのは、
単純に「自分をわかってない」という
前提があるからなんでしょうね。
自分のことが固定してわかるものだったら、
けっこういろいろ方法があるんだけど、
「自分ってわからねえなあ」が前提にあるから、
ほんのちょっぴりだけ
「これは自分だなあ」と思うものを
あてにするしかないんですよ。
二重作
なるほど。
糸井
でも、自分の正体はわからないけど
「こういうことはするまい」とか
「こうありたい」ということはいつも思うから、
だから逆のことを言うと、
負ける要素もそこなんでしょうね。
本気の本気の戦争みたいになったら、
もう何をしてもいいわけだから、お互いに。
二重作
逆に「こうありたい」が
ブレーキになってしまうんですね。
糸井
だから、最強って、
たぶん永遠にないんじゃないかな。
二重作
それこそ観念みたいなもので。
そこに向かっていくというか。
糸井
形づくっちゃうものは、
とにかく形があったら負けなんでしょうね。

(つづきます)

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