フミ子さんの ゆず胡椒。   ─── 福岡の母に「どうつくるか」を学ぶ物語 ほぼ日読者の原田さんという男性(東京在住)から こんなメールが届きました。 「福岡にいる73歳の母に、  ゆず胡椒のつくりかたを学ぼうと思います」 ゆず胡椒。 湯豆腐とか、焼いた豚バラ肉に、ちょんとのせて。 ああ‥‥おいしいですよねぇ。 原田さんのお母さんの名前は、フミ子さん。 フミ子さんがつくるゆず胡椒は、 風味・辛味ともに絶品なのだとか。 ‥‥そのつくりかた、ぜひレポートしてください! え? レポーターは原田さんの奥様が? もちろんオーケーです。 ちいさなお子様もごいっしょですね。 ご家族そろって、よろしくお願いいたします。
第6回 ゆず胡椒の完成と     フミ子さんの感想
 

ゆず胡椒づくりは、いよいよ後半です。
果たして、ゆず胡椒は完成するのでしょうか?!
‥‥って、まあ、ここまでくれば完成はするでしょう。
問題は、味です。
フミ子さんに教えてもらいながらつくる
ゆず胡椒の味は、フミ子さんに認められるのでしょうか?

というわけで後半は、
胡椒(唐辛子)に、がっちり向きあいまショウ!
胡椒の処理も柚子とほぼ同じ。
細かくして塩をなじませる‥‥というシンプルな行程だけ。
それだけなんですが、
ナマヤサシイ気持ちで行うと痛い目をみることに。

どうぞ小さな子どもや大事な愛犬、
愛猫、愛豚、愛イグアナなんかが
近づかないように注意してください。
汁や種が目やちょっとした傷にでも入ろうもんなら、
地獄を見るぞよ‥‥と言われています。

実際、急いでいてうっかり素手で
作業をしてしまった経験があるフミ子さんは、
「んもぅ、そんときは5〜6時間は
 手がアツ〜くて痛〜くて
 何もできんやったとよ〜」
と言っていました。
なので、ゴム手袋の上から軍手もして、
ゴーグルをつけて準備万端!
完全防備で立ち向かいます。

まずは、柚子と同じく、
水で洗うなどして汚れを落とした
胡椒のヘタを取り除きます。

ついでに、後でミキサーが回りやすいように、
2つか3つに切っておきます。
調理ハサミを使うと簡単です。

フミ子式は種ごと使うので、種も気にせずチョキチョキ。

やっぱりキャリア40年のフミ子さんの作業は手早い。
「毎年やっとるけんね。
 カオリさんは初めてにしちゃ上手よ」
と言いますが、唐辛子切るだけなのに私の1.5倍は速い!

私も負けじと
「3個同時切り」の技を駆使して応戦しますが、
ついに勝てませんでした。

さて、切り終わったらここにも塩を入れなじませて‥‥

ミキサーやみじん切りで細かくします。

 

この作業こそが、
ゆず胡椒づくり最大のデンジャラスゾーン!

汁が飛び跳ねるので本当に要注意です。
そして、気をつけていても手には汁がつくので、
ゴム手袋をしていても徐々にジンジンしてきます。

粉砕係のトモさんも、アイスノンを傍らに置いて
手を冷やしながらの作業。

だいたいこういう作業をやっていると
汗もかいてくるのですが、
うっかり汗を拭おうものなら‥‥キ・ケ・ンです。
(殿方は、途中のトイレ休憩も
 キ・ケ・ンが伴うそうなのでお気をつけて)

でも昨日の柚子皮と違って、
柔らかいし水分もあるのでスイスイ進んで終了!
きれいなきれいな緑色のペーストができました。

これと、昨日つくって保冷しておいた
柚子皮を、1:1で合わせれば‥‥

はい、よっこらしょーーー。

混ざったら、瓶に詰めて。

かーんせーいでーす!

パチパチパチーーー。

これができたてゆず胡椒!
まさに「生ゆず胡椒」であります。

さっそく味見をしてみようではありませんか。

豆腐にのせて‥‥

神妙な面持ちで、ぺろっ‥‥。

どうでしょうフミ子さん。どうなんでしょう。

フミ子 「うん。…うん。
     んー、からーい! 水、水水水!」

フミ子 「ほぅっほぅっ。
     ‥‥うん、ようできとるんやないね。
     私がひとりで作るのと変わらん」

‥‥てことは? 合格?

いただきましたバッチグーポーズ!

はあー、よかったぁ、ほっとした。
私も食べよう。

作り立てはまだ塩がとがってますが、
これが少しずつ合わさって溶け合って、
1ヶ月くらいした頃からがちょうど食べごろですって。
それでも市販のものにはない、
フレッシュさが感じられます。

あとは日を追うごとに風味が変化していくのも
楽しみのひとつ。
人によっては「1年もの」の
まろやかな辛みと風味を好きなかたもいれば、
一緒に食べるお料理によっても相性があるし。

こだわればこだわるほど深いゆず胡椒の道。
なのでありました。

いやぁ、それにしても、
胡椒の不作という思わぬハプニングがあっただけに、
出来上がってほっとひと安心。

しかも、手前味噌でありますが、
美味しい「フミ子のゆず胡椒」ができましたからね。
こりゃ、うひひです。

肩の荷がおりたところで、
ふとフミ子さんと二人になったので聞いてみました。
息子が母親の作るゆず胡椒の味に惚れ込み、
それを習いたいっていうのってどんな気持ちなんだろう。

あの‥‥ええと‥‥
トモさんって、その‥‥孝行息子ですよね?

フミ子 「うーん、そうやねぇ。どうやろ。親孝行。
     ‥‥あんまり感じんねぇ」

・・・・・・え?

カオリ 「い、いやでも。
     今回もこうしてゆず胡椒の作り方を
     自分から教えてもらおうとしてるし‥‥。
     私とか、周りの友だちなんかと比べると
     やっぱり親孝行っていうんか、
     なんか色々気づかってて
     偉いなと思ってたんですが‥‥」

フミ子 「うーん。他の姉兄と比べても
     別に変わらんと思うがね。うーん。
     まあ、親孝行っていうとしたら、
     ヒヨちゃんが生まれてから変わったかね。
     トモヒロも親の気持ちが
     少し分かったんやないかね」

そっか。そういうもんか。

親子の泣ける話を期待しちゃってた私は肩すかし。
っていうか、
柄にもなくそんな話を持ちかけた自分が
ちょっと恥ずかしいっす。

しかも後から聞いた話によれば、
その直後フミ子さんはトモさんのところへ言って、

「カオリさん大丈夫かね。
 せっかく休み取ったのに
 こげなゆず胡椒づくりに付合わせてから。
 気の毒よ。
 なんかね、あんたのこと親孝行ですね、
 て言いよんしゃったけど、
 そんなこと無いとよ、て言うたんよ」

などと話していたとか‥‥。

あたたたた。
ほぼ日でレポートするから
良い話でも探さなきゃと思って
下心を出したのがバレバレです。
あぁ恥ずかしいっ。

みなさん、
「フミ子の生ゆず胡椒」に親孝行成分は入っておりません。
無添加・無着色の天然エピソードだけでした。

ただただ40年分の失敗や成功から導かれた手法と、
テマヒマ惜しまぬ製法だけが、
ここに辿り着く道だったのです。

そんなゆず胡椒、食べてみたくなったでしょうか。
よかったらおうちで
自分なりのゆず胡椒を作ってみてはどうでしょう。
ことしはもう青柚子のシーズンが終わりましたが
材料さえそろえば、少量ならけっこう簡単ですよ。
黄色い柚子と赤唐辛子で作ってみてもいいですし。
あ、くれぐれも胡椒を扱う時はご用心です!

ふ〜〜〜〜。
以上で、原田家のヨメ担当、
わたし原田カオリからのレポートを終了いたします。
(※編集注/コンテンツはあと1回つづきます)
お読みいただいて、ありがとうございました!
それでは〜。

‥‥ん?
ああー、はいはい、わかりました。
原田家の台所大臣・トモさんが、
ゆず胡椒の食べ方いろいろをご紹介したいそうです。
もうすこしお付き合いを。

トモヒロのおすすめ! ゆず胡椒のおいしい食べ方。

こんにちは、トモヒロです。

ゆず胡椒は味噌汁、冷や奴、湯豆腐、
鍋物、おでん、串焼き、漬け物など、
本当に何に合わせても美味しいのですが
ゆず胡椒の芳醇な味をよりダイレクトに味わうための、
超簡単な料理をいくつかご紹介します。
分量は目分量! 美味しいところを見つけてください。

 

ゆず胡椒茶漬け

材 料:炊きたてごはん一膳、ゆず胡椒小さじ1、熱湯

作り方:茶碗に入れた炊きたてごはんの上に
    たっぷりのゆず胡椒を乗せ、熱湯をかけます。

食べ方:ざっと全体をかき混ぜて、
    ゆず胡椒の香り・塩味・辛みでいただきます。
    昆布の佃煮を乗せても、これまた美味しい。


 



イカのゆず胡椒塩辛

材 料:イカの刺身一杯分、日本酒、ゆず胡椒小さじ2

作り方:細切りにしたイカの刺身を日本酒で洗います。
    洗ったイカをボウルに取り、ゆず胡椒と和えます。

食べ方:醤油などは不要。そのままいただきます。

 




材 料:なめこ100g(1パック)、えのき50g、
    鰹出汁150ml、醤油大さじ1.5、味醂大さじ1.5、
    日本酒大さじ1、柚子胡椒小さじ1〜2

作り方:濃いめの鰹出汁をとっておきます。
    なめことえのきは石突をとっておきます。
    えのきは3cmくらいに切り分けて。
    えのきは石突部分ギリギリで切り落として
    できるだけ根っこまで使います。
    出汁、醤油、味醂を鍋に取り、
    沸騰したらなめことえのきを入れ
    一煮立ちさせます。
    キノコの甘い味と香りが出たら火を止めます。
    これを丼に盛った熱々ごはんの上にかけ、
    ゆず胡椒を乗せます。

食べ方:ゆず胡椒をくずしながらいただきます。

 



大根おろしゆず胡椒風味

材 料:大根適量、ゆず胡椒小さじ1、千鳥酢小さじ1

作り方:大根をおろしボウルにとります。
    ゆず胡椒、千鳥酢をかき混ぜて出来上がり。

食べ方:醤油などは不要。そのままいただきます。
    パンチと酸味の効いた大根おろしとして、
    ドレッシング代わりにもなります。
    炊きたてごはんの上に乗せて、
    しらすとの相性もバッチリ。


 



たら白子の昆布焼きゆず胡椒のせ

材 料:たら白子 (片手に乗るくらい)、
    昆布2枚(真昆布など厚めで幅広いもの)、
    日本酒、ゆず胡椒小さじ1〜2

作り方:昆布2枚に日本酒を吹きかけてしみ込ませ、
    柔らかくなるまで置いておきます。(下ごしらえ)
    たら白子はさっと水洗いして水気を切り、
    一口大に切り分けます。
    黒いスジも取り除いておきましょう。
    たら白子を昆布一枚の上に適量乗せ、
    もう一枚の昆布で蓋をしてグリルで焼きます。
    焼け具合を見ながら中火で5〜10分、
    途中昆布が焦げ出して煙が出ますが気にせずに。
    焼け方が激しい場合はスプレーなどで
    水または酒を吹きかけて焦げを抑えます。
    ときおり蓋の昆布を開けて、
    たら白子の焼け具合を確認。
    表面が乾いた状態になったらOK。
    蓋の昆布を外して皿に乗せます。
    たら白子の上にゆず胡椒を少量乗せて完成。

食べ方:塩、醤油などは不要。
    (昆布の塩味と旨味で十分に味がついている)
    そのままいただきます。
    熱々を一口で一気に食べるとたまりません!
    写真は手に入りやすい
    スケトウダラの白子で作りました。

 



ふろふき大根

材 料:大根、昆布、日本酒、ゆず胡椒
作り方:@1.5Lくらいの昆布だしをとって、
     日本酒を90ml加えておきます。
    A大根の皮を剥き、厚さ2cm〜3cmの筒切りにする。
     面取りもしておきます。
     米のとぎ汁で茹でる。(以上が下ごしらえ)
    茹でた大根が串が通るくらいまで
    柔らかくなったら@の昆布だしに移します。
    弱火で30分ほど煮て
    火を止めて30分置いて冷まします。
    食べる直前に火を入れ、
    沸騰しないように熱々に温めてお皿に取ります。
    大根の上に小さじ半分くらいの
    ゆず胡椒を乗せて完成。
食べ方:ゆず胡椒の香り・塩味と
    昆布出汁のうまみだけで熱々をいただきます。

 

(もういっかい、つづきまーーす)

2013-12-06-FRI
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