BOOK
男子も女子も団子も花も。
「婦人公論・井戸端会議」を
読みませう。


人はなぜ風邪をひくのか
(全5回)


ありふれた病気、とあなどることなかれ。
人はもちろん、トリだってブタだって
くしゃみをしています。
予防法からそのつき合いまで、シーズンたけなわ、
マスクの用意の前に、ご一読を


構成:福永妙子
写真:外山ひとみ
(婦人公論2000年1月22日、2月7日
 合併特別号から転載)


加地正郎
久留米大学名誉教授、
呉共済病院顧問。
九州大学医学部卒。
風邪ウイルス研究50年の
「かぜ博士」として
知られる。
著書に
『コモンコールドから
 インフルエンザまで
 --かぜの医学・社会学』
『新型インフルエンザ
 パンデミック』(編著)他

田中聡
ライター。
1962年富山県生まれ。
富山大学人文学部卒、
同大学院文学専攻科修了。
人間の身体や
健康に関する著書も多く、
『健康法と癒しの社会史』
『なぜ太鼓腹は
 嫌われるように
  なったのか?』
『正露丸のラッパ』
『「超人」への
  レッスン』など
糸井重里
コピーライター。
1948年、群馬県生まれ。
「おいしい生活」など
時代を牽引したコピーは
衆人の知るところ。
テレビや雑誌、
小説やゲームソフトなど、
その表現の場は
多岐にわたる。
当座談会の司会を担当。


婦人公論井戸端会議担当編集者
打田いづみさんのコメント

「微熱が続いてます」と糸井さんがおっしゃいました。
時はまさに、寒さが厳しさを増す99年の師走。
ここはひとつ、冬の健康を考えますか、ということで、
風邪博士の加地先生と、健康法にお詳しい田中さんを
ゲストにお迎えしました。

担当者としてセキ・鼻水で効果音を、ともくろんだものの、
当日の体調は万全。
「いつ風邪をひいたか、もう思い出せない」と
バカ自慢をしたら、
「いやいや、人は1年に6回は風邪をひくんですよ」と
加地先生に言われました。

さあさあ、「風邪知らず」のあなたも、
ひとまず誌上保健室へ入ってみてください。

第1回 その正体は?

糸井 今まさに、風邪のシーズンです。
加地 インフルエンザだと12月頃に始まり、
1月がピークですからね。
糸井 風邪はひかれますか?
加地 私はひかないです。
糸井 さすが、“風邪博士”。
その秘訣はあとでうかがうとして、田中さんは?
田中 僕はよくひきます。
糸井 そうでなきゃ(笑)。
きょうは、加地先生に、
いろいろ教えていただくという形になりそうですね。
田中 風邪について面白いなと思うのは、
病気は普通、「罹る」と言いますが、
風邪だけは「ひく」とも言いますよね。
加地 英語でも、「キャッチ・ア・コールド」と。
田中 他動詞と自動詞の違いもあるし。
それで風邪の場合、疾病観なんかもほか
の病気とは違うのかなあと思いまして。
糸井 くじ引きの「引く」とか「引き込む」みたいな
言葉の使い方ですよね。
悪いクジ引いちゃったみたいな。(笑)
加地 ほかの病気と異なるのは、
あまりにポピュラーだという点ですね。
詳しく調べてみると、1人の人が1年間に
平均6回くらいは風邪をひいています。
糸井 そんなに?
加地 ちょっとした風邪だと、
いつのまにか治ってるものだから忘れてるんです。
「風邪なぞひいたことがない」と豪語する方がいますが、
血液を調べると
ちゃんと風邪のウイルスに対する免疫があるんです。
免疫ができてるということは、
自覚はなくても、しっかりひいておられる。
糸井 申告は主観の部分も大きいんだ。
加地 なかには、会社を休むための口実に使う、
“政治的風邪”もありますが。(笑)
糸井 お医者さんのカルテには、「風邪」とは書きませんね。
加地 風邪は、いろいろな原因によって
起こる呼吸器系の急性炎症性疾患の総称です。
症状としては、鼻水が出る、鼻がつまる、
くしゃみが出る、喉が痛い、咳が出る。
と同時に、発熱、頭痛、体のだるさ……。
それらを一括したのが「風邪」で、
正確には「風邪症候群」と言います。
原因のほとんどはウイルスで、
そのウイルスもいろんな種類がありますから、
患者さんを診ただけではわからない。
そこで、呼吸器のどこがいちばん強く冒されているかで
病名をつけることが多いです。
鼻水も出るけれど、診ると喉の炎症がいちばん強い。
その場合は「咽頭炎」とか。
糸井 それ、よく診断書に書かれます。
加地 咳がひどいときは「急性気管支炎」という診断がついたり。
いちばん多いのはいわゆる鼻風邪。
くしゃみに始まり、ティッシュペーパーを
山ほど使うくらい鼻水が出て、1週間くらいで治る。
これは医学用語で「普通感冒」といいます。
糸井 普通感冒。
ずいぶんいい加減な名前のような……。(笑)
加地 英語で「コモン・コールド」。
非常にコモンだから。
それから「インフルエンザ」がありますね。
インフルエンザは症状がまたちょっと違います。
急に高い熱が出て、頭痛や腰痛、筋肉痛、
関節痛なんかがあって、
全身がだるいという症状も強く出ます。
鼻水とか咳、喉が痛いという症状はちょっと遅れて出て。
田中 ひとことで風邪といっても、さまざまなんですね。
加地 病原体もいろいろで、ウイルスでも
どんなウイルスかを調べるには手間も時間もかかります。
ようやくわかった段階では、もう患者さんは治ってる。
それにウイルスを特定できても、
直接効く薬はないんですよ。
ウイルスは細胞に寄生しているので、
薬となると、細胞に影響を与えず、
ウイルスだけをやっつけなきゃいけない。
それが非常に難しいんです。
糸井 イヤなもんですねえ。
加地 この頃やっとインフルエンザウイルスに対しては、
直接、効く薬ができつつありますが……。
糸井 ああ、希望の光。(笑)
加地 でも、ウイルスの種類は多いですから。
鼻風邪はライノウイルス、喉を主にやるのは
アデノウイルスとか、9種類くらいある。
しかもライノウイルスならライノウイルスの中に、
さらに100種類以上もの型があるという具合で……。
糸井 ひゃーっ。
加地 たとえばライノウイルスの中の一つの型に罹ると、
それに対しては免疫ができますけど、
残りの99の型には免疫がありませんから、
そのつど感染して症状が出る。
だから1年に5、6回も風邪をひくし、
それが一生となると、
どのくらい風邪をひくかわからないわけです。

第2回 ウイルスは賢い

第3回 ひいてしまったら・・・

第4回 寒くたってダイジョウブ

第5回 ワクチンは受けるべきか

2000-11-26-SUN

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