BOOK
男子も女子も団子も花も。
「婦人公論・井戸端会議」を
読みませう。

第1回  第3次性徴が来た!?

第2回 不毛のスケベ論法

第3回 カツラという正装

第4回 「すてきなおじさま」を探して

糸井 モテるモテないの話にもどると、
僕の男の見方の中に、
「モテたい髪形」というジャンルがあるんですよ。
トシとっても髪の毛フサフサで、白髪か白髪まじり。
それもこれ見よがしの長髪だったりして。
流れでいえば、
五木寛之、筑紫哲也、鳥越俊太郎なんかそうですね。
それは嵐山光三郎も指摘している。
白髪、長髪、進歩的文化人がセットになってるのね。
糸井 それでパイプでもくわえた日にゃあ(笑)。
「すてきなおじさま」系とも言えるね。
清水 「おじさん改造講座」をやってるとき、
すてきなおじさまになるにはどうしたらいいか
っていう質問はいちばん多くて、
みなさん、今おっしゃた白髪、長髪あたりを
目指しているらしいんです。
糸井 そして、そのジャンルの中に収まろう収まろうとして、
みんなが「すてきなおじさま」マジックにかかっていく。
強迫観念みたいに……。
「すてきなおじさま」系に、
ぜったいゲーハーは入んないんだよ。
糸井 僕なんか子どもが高校生くらいになると、
明らかにモテたいという気持ちは減ってきたけど、
「すてきなおじさま」系は、いくつになってもモテたい。
だいたい、ロン毛のじじいって、何か企んでるよ(笑)。
俺はあっちに行くのを避けようとして髪を短くしたね。
それはやっぱり見識だね。
俺は三十代くらいまでは、言論人、文化人のあり方として、
「すてきなおじさま」系の方向に行くのが
いいんじゃないかという意識があったんだよ。
その後、物書きとして、
ある程度、自分の考えがまとまった段階で、
その路線は避けたけどさ。
糸井 はあ、呉智英先生でさえ。
恥ずかしながら。(笑)
糸井 「すてきなおじさま」地獄だ。
清水 でも、ロマンスグレーで長髪でって、
イメージとしてはあまりにワンパターンすぎますよね。
糸井 老齢化したときの価値観を、
みんなまだ見つけてないんじゃないの。
橋本治が
「トシとりゃあ、みんなハゲるじゃない。それ自然だよ」
ってアッケランとしてたけど、
たしかにそうで、女の人だって、
ハゲなくてもシワはできる。
でも魅力的な人は、シワがよっていようがいまいが、
魅力的だもんね。
糸井 みんなが「すてきなおじさま」系に走らないためには、
それ以外のモデルも必要ですね。
清水 そのためにもハゲを隠そうとしちゃいけませんね。
アナウンサーのハゲさんにも、
ニュースを読んでもらいたい。
糸井 ハゲを自らウリにするという路線もあるけど、
そのルーツとして柳家金語楼の存在は大きいね。
「ハゲましておめでとう」と言って笑いをとったり。
手拭いで簡単にできるカツラを考えて、
それをギャグに使うとかね。
俺の場合、ハゲにポジティブイメージもったのは
ショーン・コネリーからだね。
カツラつけてジェームス・ボンドやってた頃じゃなく、
『薔薇の名前』なんかの。
清水 日本でも竹中直人さん、西村雅彦さんとか、
素敵なハゲさんがいますよね。
2枚目じゃないけど。
糸井 でも、女性の「キャーッ」は入る。
「すてき」系に替わるモデルを選ぶなら、
「いなせ」系なんて、いいんじゃない?
清水 ええ。私、おっちゃんが出てくるようなテレビドラマ、
作ってほしいですよ。
サラリーマンっぽくない……。
職人とかね。
腕1本で家族を食わして、2人いる弟子を
俺が一人前にしてやらなきゃあっていうような。
おっちゃんでも職人でも、
そういう生き方がカッコいい男の姿として
テレビや映画にどんどん出てくれば、
変わってくるとは思う。
糸井 毛のあるなしで勝負するなってことだね。

(終)

2000-10-21-SAT

BACK
戻る