フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

ドーピング疑惑の嵐。
イタリア・サッカーはどうなるんだ。


イタリア・サッカー界では短期間のうちに、
まったく同じ光景が3回くり返されるという、
なんともあきれた事件が起きました。

どういう光景か?
まず、ドーピング検査で
陽性と出た選手にその事が告げられます。
すると、その選手が泣き出します。そして
「ミネラル・ウォーターしか飲んでいないのに!」
などと訴えたかと思うと、
同じ選手が同じ口から
奇怪としか言い様のない
とんでもない言い訳をひねりだし始めるのです。

今日の僕は、嘆きと怒りのフランコです。
そんな“クスリ漬け”のイタリア・サッカーなんて!

石鹸で検査に引っ掛かったって!?!?


イタリアの大きなチームは、
ヨーロッパ・チャンピオンズ・リーグに参加していますが、
前回ほどの結果は今のところ出せていません。
昨年度のヨーロッパ・チャンピオンであるミランは、
トヨタ・カップの準備に入っていますが、
キャプテンのパオロ・マルディーニが負傷しており、
その回復に望みをかけている始末です。
これらの不調にかぶさるように、
ドーピングでひっかかる選手が相次いでいるのですから、
イタリア・サッカー界は、
まさに嵐で転覆するような危険に
さらされているも同然です。

審判が下されるまで出場停止処分になった3選手は、
3人とも、前述したような、
まったく同じような言い訳をしています。

最初のひとりは、パルマのブラージ選手でした。

尿から薬物が発見されました。

それを知らされた彼は、
まず泣いて、何も使っていないと誓い、
それから、実は髪の毛のために特殊な石鹸を
何度も使った、と言い始めました。

誰が信じますか、
髪の毛のための石鹸で
ドーピング検査にひっかかったなんて?

はい、次の選手。
何とイタリアの人気チーム、
インテルのモハメド・カロンです。
アフリカの象牙海岸から来た選手です。
(インテルについては、先週の記事も参照してください)

彼も泣きました。
何も使っていないと誓いました。
彼は特殊な石鹸は使いませんでした。
でも「特殊なクリーム」を使ったようです。
なんでも肌の黒さを少なくするクリームだそうです。

ポップ・スターのマイケル・ジャクソンがやっているのと
同じようなことだ、と彼は言ってます。

もちろん誰も信じません。
インテルはカロンを、そのまま出場停止処分にしました。

ガウッチ会長、ちとまずいぜ。


さて、3番目の選手。
インテルより、もう少し小さなペルージャの選手ですが、
彼の名前は世界中で有名です。
サーディ・アル・カダフィ、
もう長きに渡ってリビアを統治する権力者の息子です。
(カダフィ入団のいきさつは
 こちらの記事にあります)

「カダフィの息子」という宣伝力だけをあてにして、
彼と契約したルチアーノ・ガウッチ会長でしたが、
今回のコメントは実に彼らしい奇妙きてれつなものでした。

「猪の肉を食い過ぎたんじゃないか?」

あらら、これは、まずいでしょう。
ガウッチは気の利いたユーモアのつもりかも知れませんが、
案の定、これを新聞で読んだ
「カダフィの息子」は激怒します。
彼らイスラム教徒は豚肉を口にするのは
厳しく禁じられています。
猪というのは野生の豚の一種ですからねえ。
ガウッチさん、もちろんこれを知っての上で、
インテリで過激なユーモアを
ひけらかしたつもりでしょうか‥‥



ところで、ブラージ、カロン、カダフィの3人の尿から、
大量に検出されたのは「ナンドロロン」という
筋肉を増強し、疲れを感じにくくする化学物質です。

ブラージとカロンは
今シーズンもすでに何度も出場していましたが、
カダフィは、1分たりともプレイしていないんです。

10月5日の対レッジ−ナ戦では、
とうとう補欠選手のベンチへ入ったきり
籤で名前が引かれたら出られるかも、
というくらいの立場のようです。
返り咲いていません。

こんなふうですから、
ヨーロッパ内でのイタリア・サッカーは
下降状態と言わざるを得ません。
イタリア・ナショナル・チームのアズーリも、
当初の予想ほどに輝いてはいません。
チームを支える組織の多くは借財にあっぷあっぷしています。
そこへもってきてのドーピング・スキャンダルの嵐です。

ああ、可哀想なイタリア・サッカー‥‥
なんと落ちぶれてしまったことか!!!

訳者のひとこと

Forza Italia!!
イタリア、頑張れ!!

イタリアで一番多く食されるのは
牛肉です。
脳みそもフライなどにして食べます。
ふわふわで、おいしいです。
「狂牛病」は
mucca pazza (ムッカ パッツァ)
と俗称されています。

翻訳/イラスト=酒井うらら


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2003-11-10-MON

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