フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

試合のない季節、
みんなの注目はカルチョ・メルカート


サッカーは「試合」以外の場面でもわくわくさせてくれる
素晴らしいスポーツです。
日本でもそうじゃないかな。
もちろんイタリアでも、同じです。
いっそ、試合がないほうが
気がもめなくて良いかもしれません。
(‥‥って、そんなことはあり得ませんね!)

カンピオナート(国内リーグ)のシーズンも終り、
UEFAチャンピオンズ・リーグも
ミランの優勝で、めでたく終了し、
バカンスに入ったサッカー関係者たちをよそに、
ティフォーゾたちは興味津々で、
ある出来事の様子を伺っています。

いまイタリアでスポーツ新聞が
売れている理由は?

その出来事とは、カルチョ・メルカート
(サッカー・マーケット)の動向です。

スポーツ新聞は、彼らの知りたがりと期待と夢のお陰で、
シーズン中より売れているくらいです。

テレビの視聴率も、
選手たちの移動情報が流れる時間帯に
ピークを迎えます。

ティフォーゾたちは、シーズンの日曜ごとに
ハラハラさせられる試合がない分、
空想や希望の中で思いのままに勝利を描ける幸せを
満喫していることでしょう。

さて、ACミランはベッカム獲得のために、
あの手この手で言い寄りましたが、
結局はレアル・マドリッドに取られてしまい、
すべてが無駄に終りました。
それではとばかり、次にミランがねらっているのは
パルマの中田です。
インテルはロナウジーニョを、ユーヴェはスタンを、
それぞれ希望しているようですよ。

僕は1970年からずっと、
カルチョ・メルカート(サッカー・マーケット)
についての記事を書いていますが、
毎年6月が来ると
チーム会長たちの言う事はいつも同じです。

「金が無い。もはやサッカー黄金期は終った・・・」

そんなことは、ありません。口だけですって。

去年だって、まさにシーズン開始直前の8月に、
大買い物の数々が繰り広げられたんですから。
ミランはリバウドとネスタを、インテルはクレスポを、
ユーヴェはディ・ヴァイオを、どーんと買い込みました。

今年もきっと同じです。確実に、絶対に、疑い無く、
去年みたいな事が起こるに違いありません。

多くのサッカー組織が借金だらけで、
破産の淵にいるとしても、
最後の大買い物劇が、また見られるでしょう。

「人間と動物との唯一の違いは、借金だ」

と言った人がいますが、そう言えるかどうかは別にしても、
イタリアのサッカーにとって
「借金」と「夢」が同じなのは確かです。
その心は‥‥「どちらも無くならない」。

ペルージャにやってくる「カダフィ」。
彼の父上とは!?

ユーヴェ、インテル、ミランといった大きなチームが
メルカート上で華々しいパンチを応酬する一方で、
小さいながらも素早さと話題性では引けをとらない
一撃を持っているチームがあります。

ペルージャです。
イタリアの中でも個性的なウンブリア地方にある、
ペルージャの街のチームです。

ヨーロッパで最も有名な
「外国人のための大学」がある街ですが、
ここに来る外国人選手たちも
イタリア・サッカー界を驚かせる個性的な面々です。

中田英寿、彼がやって来た時は
町中が盛り上がりました。

イタリアに来た日本人選手は彼が最初ではありません。
その数年前に、三浦カズがジェノアに来ましたね。
でも、中田の時には、日本中から記者やファンたちも
ツアーを組んでやって来ました。
お陰でペルージャは、すいぶんと儲かりました。

この小さいチーム、ペルージャの話題性は、
まだイタリアのどのチームも選手を呼んだことのない国から、
先頭に立って選手を呼んでみる、という大胆さにもあります。

エクアドルからはカヴィエデ、イランからレザエイ、
中国からマ・ミンギョ、フィンランドからレコスヴォ、
韓国からアン、オーストラリアからカラク、
といった具合です。

でもこれらは序の口でした。
先週のこと、ペルージャはさらに衝撃的は一撃を放ちました。
契約にサインさせた選手はカダフィ。
彼の国はリビアです。
リビアのカダフィ・・・
ピンと来た読者もいらっしゃるでしょう。
この選手の父上は、そう、
リビアのあのカダフィ大佐ですよ。
リビアは国際的テロリストに加担したということで、
アメリカからにらまれている国ですね。



そういうわけでカダフィ大佐の息子は、
父上の私設のガードマン10名付きで
イタリアにやって来るようです。
昼も夜も危険から彼を守るガードマンたちです。

「カダフィの息子」は30才。
豪華で快適な生活を送り続けてきたでしょうから、
自分を犠牲にする事や、
プロ選手にば欠かす事のできない
ハードなトレーニングに耐えられるのでしょうか?

僕がこの質問をしている間も、
ペルージャのルチアーノ・ガウッチ会長は
満足そうでした。

本当のスクデット獲得(国内リーグ優勝)には遠いものの、
カルチョ・メルカートの話題性では勝ったね、
というところでしょうか。

訳者の一言

ミランのベルルスコーニ会長には悪いけど、
ベッカムはミランには似合わないよ、
と思っていましたが、やっぱり、の結果でした。
ラテン系にはラテン系が似合う気がします。
(レアルもラテン系ですが)
皆さんはどうお思いでしょうか?
しかしペルージャのガウッチ会長も、
一癖も二癖もありそうです。
W杯では安貞桓のゴールで
イタリアが負けたと、
彼を首にしたことで有名になりましたね。
もう韓国から選手を呼ばない、とも
言ったのでしたっけ?

翻訳/イラスト=酒井うらら


フランコさんのくわしいプロフィールはこちら、

フランコさんのホームページはこちらです。(日本語もあるよ!)

フランコさんへの感想などは、
メールの表題に「フランコさんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ろう。

2003-06-23-MON

BACK
戻る