雑貨を仕入れに世界中を旅する
松本さんのお話。その3
[アジアでの雑貨探し]

── アジアでの雑貨探しの話、
もうすこし聞かせてください。
松本 僕らの雑貨の旅は、
ベースはタイからはじまったんです。
だいだいの情報として言うと、
いま雑貨の主要な場所は、アジアで4カ国あるんです。
タイ、フィリピン、インドネシア、そしてベトナム。
で、ベトナムって一時ブームだったでしょ?
── そうですね。旅行もそうだし、
雑貨もベトナムブームでしたよね。
松本 何と言っても、安い。
で、けっこう、“草物”が豊富なんです。
植物の蔓などを使って、編んであるヤツですね。
その草物が豊富だっていう情報が入って、
「これは行かないとダメだぜ」
ってなって行ったんです。
タイとベトナムは飛行機で1時間半くらいですから、
タイに行ったときに
ベトナムに寄ることは十分可能です。
タイで見た草物とベトナムのものを比較して
いい方をとりましょうっていうことで
タイにまず行きました。
タイにたまたまウエアを作っている工場があって、
僕はもうすでに何回か行ったことはあったんです。
でも、雑貨探しには行ったことがなかったので、
ちょっといろいろ問い合わせすると、
「雑貨で買い付けにけっこうたくさんの人が来てる」
と言うんですね。
こりゃ、遅れちゃまずいって思って、
行こうと思ったんですが、
ところがやっぱり、
身近なところに雑貨のことに詳しい
情報ソースがないんですよ。
たまたま地元の雑貨のエージェントと
知りあいになって、
その人にコンタクトをとって、
そのエージェントさんといま一緒に
買い付けにまわってるんです。
その人がとりあえず、
僕たちのテリトリーを紹介しますよ、
っていうのからはじまって。
で、ベトナムに正式に
f/dとして足を踏み入れたのは
ここ最近のことなんです。
── 今年に入ってからのことなんですね。
松本 はい。
その前に僕は単独で何度か行ってて、
会社には、
「いまこんな話があるから探してるんです」
なんていう報告はしてたんですけど。
で、ようやくデザイナーが
「じゃあ、現地に行こうよ」
ということになって、本腰が入りました。
ところが、木ものとか草ものには
けっこういいものがあるんですけど、
キャンドルなんかは全然なくって。
じゃあ、木、草に限定して
探しましょうってことになって。
── 陶器もいいものがありますよね?
松本 陶器もたしかにありますね。
でも、デザインが
どうしても東南アジアっぽくなるんで
f/dのテイストとちょっとずれるから外して、
草物で探していこうよ、っていうことになりました。
でも、やっぱりもうだいぶ日本人が
買い付けに来てる。
雑誌にもよく載ってるドンコイ通りとか
なんちゃらマーケットなんてところは
安くてものすごくいいところなんだけど、
そんなところは、もうみんなが行ってるわけで、
だったら、とりあえず、
メーカーに直接見に行ってみようよ、
ってなって行ったんだけど、
メーカーには
僕らが求めているようなものはないのね。
そんでエージェントの人に
「なんだー、全然いいものないじゃない」
って言ったら、
「だったら、そのマーケットに出している店が
 買い付けに行くところに行きましょうか」
ってなったの。
で、ベンタン市場っていうのが実はあって。
有名は有名なんですけど、
日本人はほとんど行かないんですよ。
すごいんだ、これが。
── それはフォーチミン?
松本 フォーチミンの大統領府のところの
そのまわりにいわゆる観光スポットがあるんですけど、
その観光スポットにはドンコイ通りとか
みんなが行くところがたくさんあるんです。
僕らは、それとは全然関係ない北の方に行くんですよ。
で、行ったら、
中国系の人とかベトナムの人しかいないんですけど、
露天商でもなくて、
でっかいプレハブみたいなところに風呂敷を敷いて、
その上に商品を並べて
青空マーケットの屋根つき版みたいなものなんです。
── いっぱい店の数は出てるんですか?
松本 もう、すごいの。
全然観光っぽくない。
そういうベンタンマーケットっていうのは
卸商売ですからね。
── サービスはなくてもいいんですよね。
松本 小売りの業者の人に売る、
その人たちが買い付けに来るようなところだから。
「さあ、ここなら何でもあるぞ」
ってなったんだけど、ところが、
さすがにね、あそこには
僕らがイメージするような商品は
なかなかないんですよ。
── 他のところでは見たことない商品はあるけど、
それがf/dに合うかというと、
そうでもないんですね。
松本 「こういうものが欲しい!」という
具体的な思いに見合うものが
なかなか見つからなかったんですね。
そういうものが
ちょっとしたヒントでもいいから見つかると、
そこから目的のものをたぐり寄せるんです。
「どこで作ってるの?」
というところからはじまって、
「ちょっと連れてってよ」
っていうのを繰り返しながらやって、
根元のメーカーのところに
たどり着こうとするわけですよ。
しかし、さすがというか、
日本とはずいぶん違う商談風景で、
面食らいました、最初は。
もともとタイに行こうってなったのも
「バハリ」ってブランドを見てなんですけど、
そこだってメーカーとの商談はどこでやるの?
って言ったら、外でやるんですよ。(笑)
── 立ち話みたいに!?
松本 それこそ、屋根だけついてて
テーブルがバーンと外に置いてあって、
メモとったら、風でひゅーっと
飛んで行っちゃうようなとこで
商談やってるんです。
そういうところでも、デザイナーはちゃんといて、
その感性が非常によくって。
── そういう感性がいい人がいるとやっぱいいんですね。
そういう人を見つけないといけないんですね。
松本 それはやっぱり出会いですね。
── それも「足」で見つけるほか、ないんですか。
── そういう人から、
次の人を紹介してもらうのも出会いですよね。
この人がこの人を紹介して、みたいな。
松本 そういうことの繰り返ししかないでしょう。
── じゃあ、いまベトナムのものは
これからお店に並ぶんですね。
松本 そうです、これから出そうとしてる段階ですよ。
ベトナム雑貨を置くというのは
新しい試みですが、
うちのブランドはウエアだけでなく、
雑貨も非常に売れているので、
ちょっとここでいろんなことにも
トライアルしたいという気持ちがあるんです。
── f/dの雑貨は今後がますます楽しみです!
いまある雑貨はタイ・中国あたりですか?
松本 そうですね。
ベトナムものではいまバックを作っています。
あと、雑貨関係で言えば、
もうちょっといろんなところに作ってもらっていて、
たとえば、コースターだったら
インドのインド織りのものだったり。
── ところで、買い付けたもので、
商品としてお店に並ばない、 というものは、
いっぱいあるものですか?
松本 だんだん減ってきてますけど……
たとえば、物性データ(品質)がよくないとかね。
一応品質検査をするんですよ。
そうすると、色落ちしたりするものは
商品として、出せませんから。
── 海外で自分で買ってきたものだと、
たとえ品質が多少悪くてもあきらめてしまいますが
日本で売るのですから、厳しくなるんですね。
松本 また、搬送の途中で壊れてしまったり、
そういうものも、ありましたよ。
そういう意味でも、まだまだ、甘いと思っています。
(雑貨屋として)走りはじめたばかりなので、
僕らが雑貨探しに歩いてる量なんて、
他の雑貨をやっている方々に比べたら
10分の1も動いてないんじゃないかな。
── でも、これからもf/dに行くたびに
違うものが並べられる可能性がありますよね。
松本 そうですね。
たかだか半年で、
全員でつごう何回行ったかわからないですけど、
ポプリみたいな出会いがあったからよかったです。
そういうことが、ちょっとずつちょっとずつ
増えていったらいいですよね。

 

第一回 [ポプリ]
第二回 [足で回る、足で考える]

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