『トントンさん』その1

2月といえば、寒い日々。
8月のコンテンツ「ほぼ日の怪談」とは
真逆の時期です。

その2月、
一通のメールが「ほぼ日」に届きました。

メールには、
「夏に募集されていた怪談話にでも
 応募させていただこうかと思っていましたが、
 少しニュアンスが異なる話なので」
とありました。

ということは、逆に言えば
少しニュアンスは違うけれども、怪談系。
すなわち担当は、わたくしです。

「怪談」に限らず投稿はいつでも、
1年中募集しているので、
別にふしぎではありません。
でも、「怪談」ならば、
時期はずれであることは、間違いありません。

ともあれ、そのメールは、こんな内容でした。
はじめまして。
京都市在住のK子と申します。

夏に募集されていた怪談話にでも
応募させていただこうかと思っていましたが、
少しニュアンスが異なる話なので
どことはなく、送らせていただきました。

文章が苦手なもので長くなってしまうかと思いますが
ご了承下さい。
何回かに分けて送ります。

『この世は目に見える物だけが全てじゃないんだ』と、
何かのドラマの台詞にありましたが正にそんな実体験です。

主人公は長野県上田市在住の
私の母(以下、ばあちゃんと書きます)と、
孫にあたる私の娘(S子)です。
娘は小学校低学年の頃より、毎年の様に
京都からばあちゃん宅に一人で遊びに行っていました。

小学3年生の春休み、
いつもの様に寝室でばあちゃんの得意な
おもしろい小話や童話を聞いて、
きゃっきゃと二人して笑い転けて騒いでいたら、

ガサガサッ、ガタガタッとあちらこちらで音がして
S子は「怖い〜っ」とばあちゃんにしがみついたそうです。
でもばあちゃんは、その時はネズミかな?
と思ったそうです。

これが始まりでした。
たしかに、不思議な話ですが、
ここでメールが終わっていたので
ちょっと「?」な気持ちでした。

メールは実名で書いてくださっているようで
疑うわけではないのですが、
連作の投稿は「ほぼ日の怪談」では見たことがなく、
この時は「へえ〜」で、終わりました。

そして翌日、2通目が届きました。
さらにその3日後、3通目。翌々日に、4通目‥‥。

メールはこんなふうに、続きました。
続きです。

ばあちゃんの住居は、
築百年以上経つ親戚の家(母屋)の敷地内にあり、
昔、お蚕さんを飼っていた場所を改装した家です。

その音はやがて、
枕元の畳をトントン叩くようになっていました。
が、ばあちゃんはどういう訳か怖くなく

S子はS子で、ばあちゃんが楽しくしていたから
怖くなかった、とのこと。

毎夜S子とばあちゃんが二人で騒いでいる内に、
ばあちゃんの歌(童謡やトルコ行進曲など)に
リズムを合わせトントン叩くようになり、
ばあちゃんが問いかけると、
「はい」のときは「トンッ」と畳を
叩いて答えるようになりました。
答えが違う時には畳を「ザザッ」と擦ります。

最初の内は夜寝るとトントンとして、
遊んで、という感じだったそうですが、
次第に昼間でも、気配を感じるようになったそうです。

ばあちゃんが、ある昼間、冗談で
「干し物をたたんでくれる?」と言い、
しばらくして洗濯物を見ると、
ばあちゃんのパジャマの袖と身頃が、
クルンと縛ってあったとか。

それから、ある時には、
居間のカーテンやのれんが、
きれいに一重に縛ってあったり、
茶箪笥の引出し3つが階段状に段々に空いていたり、
不思議な現象が続いたそうです。

極めつけは、大きな重いちゃぶ台の上の板部分が
ガタガタ言ったかと思うと、
グイグイと回りはじめ、
ばあちゃんもS子も「ヒャーヒャーッ!」と言いながら、
びっくりして見ていたそうです。

縛ったりするのは、見ているとしないそうです。

続きます。
続きです。

この話は娘のS子が小学生から中学生の頃の出来事で、
ばあちゃんは60歳代でした。

春休み、夏休み、冬休みと、
S子がばあちゃん宅にいる時に限り、
この不思議な現象(トントンさんと名付けます)が
起こりました。

その他の時期におこらないのは、ばあちゃんが
「S子ちゃんが帰ったら、怖いし、出ないでね」と
トントンさんにお願いしていたからだそうです。

隣の母屋にはその頃、ばあちゃんの姉と息子一人、
その息子の子供二人(S子より少し歳上の男の子)が
居ました。
ばあちゃんがこのことを話し、現場を目撃(?)したのは
母屋では息子とその子供の二人の男の子で、三人います。

ある夜、ばあちゃんが大切に持っている
二段のハーモニカを披露し、枕元に置いておくと、
押入れの中の方からフーフーと
ハーモニカを吹く音がしたそうです。

下手だったので見本を吹いてやると、
またしばらくしたら吹く音がして、
次第に音が出るようになり、
終いには婆ちゃんが吹く「ふるさと」や
「浜千鳥」なども、上手に吹いたそうです。

さらにばあちゃんのまったく知らない
「結婚行進曲」やチャルメラの音階まで
吹いてみせたと言います。

あとから、ハーモニカをトントンさんが吹いている時、
枕元に置いたハーモニカはどうなっているの?
と聞きました。

答えは、その時ハーモニカは、無くなっているそうです。

続く。
続きです。

トントンさんが返事を返してくれる事が分かった時、
ばあちゃんは質問をしました。

男なの?
女なの?
いくつなの?
どこから来たの?
など。

でもその問いかけには何も答えなかったそうです。

夏のお盆には毎年、近くでお祭りや花市、花火があります。
ある年、ばあちゃんとS子は、自転車で出掛けました。

ひとしきり楽しんでの帰り、夕立にあい、
ずぶ濡れになって帰宅。
そして母屋の仏壇に御参りしました。

その夜、寝床で婆ちゃんはトントンさんに尋ねました。

花火見た?

トン。

何発上がった?

トントントントン、、、、。

雨に降られたけど濡れなかった?

トン。

どこにいたの? 頭の上?

ザザッ。

荷物のカゴ?

ザザッ。

帽子?

トン。

帽子の中?

トン。

トントンさんはばあちゃんの頭と帽子の間に居て
一緒に付いて来てたみたい、とばあちゃんは話しました。

また、お仏壇に御供えした線香の本数も、
提灯の数も当てたと。
お祭りで屋台があったので、
焼き鳥は好き? と聞くと、トン。
お寿司は? ザザッ。
お腹空かないの? トン。

またある夜、枕元にいつも置いている小さな懐中電灯が
勝手に点いたり消えたりしながら、
あちらこちらを照らしたそうです。

布団の中でも点いたので、布団を捲ると
懐中電灯はS子のお腹辺りに立っていて
パタンと倒れたと‥‥。

また壁に掛けてあった布団叩きで
寝ている布団の上を叩いてきたこともあり、
ばあちゃんはさすがにこれは危ないと思い、
薄明かりの中、布団叩きを掴むと、
向こうからも、引っ張られたそうです。
その力は今でも覚えている、と‥‥。

続く。
長く「ほぼ日の怪談」を担当していますが、
もともと私は怖がりで、怪談話が苦手です。

わたしはこのお話のふしぎさと、
「このあとも、ほんとうに、続きが来るんだろうか‥‥
 もし、気になるところで
 メールが止まったりしたら、よけい怖い‥‥」、
という気持ちとで、

だんだん、
続きをあまり気にしないほうが
いいかもしれない‥‥と考えるようになりました。

しかし、メールは続きました。
<コンテンツも、明日に続きます。>

(掲載したメールはすべて、一部抜粋、
 また内容を変えない範囲で加筆しています。)

「ほぼ日の怪談」本編は、8月より開始。
ただいま投稿を募集しています。

あなたの身の回りであった不思議な事を、
なにか思い出されましたら、
どうぞ、教えてください。

あなたが実際に体験した、
または体験した人から聞いた
不思議な話をメールで、件名を「怪談」として
postman@1101.comまでお送りください。

もちろん、「ほぼ日の怪談」を読んでの感想でも、
結構です。

みなさまからのメールを、こころよりお待ちしております。
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2013-07-28-SUN

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