おさるアイコン ほぼ日の怪談

「闇からの訪問者」

その年は、阪神大震災など
大きな事件が毎月のようにどこかで起きていて、
日本中がどうかなってしまうのではないかと
不安にさせるような年でした。
そんな気持ちをどこかで安心させるように、
クリスチャンというわけではないのに
「マリア様のメダイ」というお守りを
地方の神父さんにお願いして
送って頂く事にしました。

そろそろ着く頃だという日の夕方
私はベッドでうたた寝をしていました。
すると頭のナナメ上の方で
外を見ているような後姿がぼうっと見えました。
「母親かな?」と思って、
またぼんやり眠ろうとした瞬間、
突然身体が動かず金縛りにあってしまいました。
今まで何度も金縛りにはあいましたが、
とにかくまったく動きません。
すると、その人影が近づいてきて
「あっ!」
それは、母親ではなく
人の形をしたようなただの真っ黒い影、
真っ黒な闇のようでした。
あまりに怖いので、
薄目を開けてその動向を見ていると、
その真っ黒な影のようなものが
どんどん近づいてきて、私の顔をのぞきこみます。
心なしかニヤニヤ笑っているような気配も感じます。
あまりの恐怖と不気味さで、もうだめだー!!
誰か助けてー!と思った瞬間、
私は無意識に「マ・リ・ア」と声を絞り出して
叫んでいました。
すると、その瞬間真っ黒な影は、
『ギャアアア』と
世にも恐ろしい不気味な声をあげながら、
空間のある一点の中に一瞬にして消えていきました。

それから、あまりのことに
放心状態で呆然としていましたが
夕刊をとりにポストをのぞくと
私がお願いしていた
「マリアさまのお守り」が届いていました。
あれは一体なんだったのだろう、
もしかしたらこの世と別次元の世界とは
紙一重で隣合った世界なのかもしれません。
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