怪・その36

「後始末の最中に」

昨年末、友人が自死しました。

身寄りのない人だったので、
暮らしの後始末をする人がいません。

仕方なく、私がする羽目になりました。

まず、身寄りがまったくいないかどうかを
調べなければならず、
住んでいたアパートを引き払わねばならず、
いろいろな手つづきもしなければならず、
供養のこともお寺さんと
相談しなければなりませんでした。

貯えもまったくない人だったので、
何で私が‥‥、と思いつつ、
毎日のように
片付けのために、アパートに通っていました。

掃除のため、水道と電気は切らずにいましたが、
ガスと電話はもういいか‥‥、
と思って打ち切りました。

何の音もしなくなったことを確かめ、
電話器をコンセントから抜き、
明朝来るはずの業者さんに渡すために、
外に出しておいた荷物の
一番上に載せました。

あともう少しで帰ろう、
と、一人で薄暗くなった部屋で働いている時、
電話が鳴りました。

え?
さっき抜いた電話が鳴っている!

え?
なんで?
そんな馬鹿な。

私はそこを飛び出して逃げました。

恨まれる筋合いはないはず、
と思っても、
面倒を押し付けられたなあ、
という思いが
あの世の彼女に知れちゃった、と思いました。

翌日、荷物が、もちろん電話ごと無いのを確かめ、
友人に付き合ってもらって
やっと部屋に入れましたけど‥‥。
あの日のことは嘘じゃありません。

(よしえ)

こわいね!
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2019-08-29-THU