怪・その59

「猫の目の中」

あれは私が中学2年の頃のお話です。

そのころは、母と妹と3人で
古い団地に住んでいました。

妹は空手を習っていたため
塾の時間は私が一人で留守番をすることが多く、
あの夏の夜も、いつものように妹が空手に行き、
その迎えに母が出かけ、
家に一人になった時でした。

家で飼っている猫が、
ひざの上に乗ったまま
ジッと天井を見上げているのです。

「さっきから上見て、どーしたの?」

と猫の目を覗き込んだ瞬間

“やばい”

直感でそう思いました。


すぐ目を離しましたが、

猫の目の中、

つまり私の頭上、

着物を着た長い髪の女性がこちらを見ていて

目が合ってしまったのです。


相変わらず天井を見つめる猫をひざに乗せたまま
頭の中はパニックで

どうしよう、ここから逃げたい

でも外は真っ暗だし逃げた所で怖い

どうしよう、動けない、上も怖くて見れない

考えながら冷や汗と夏の暑さで
汗がダラダラと出てきて
恐怖でいっぱいになった時
母と妹が帰ってきて、
金縛りが解けたかのように
走って玄関へ逃げました。

妹に確認してもらっても何もいませんでしたが、
たしかにあそこに居た、
と今でも言えるほどハッキリと覚えています。

今では団地から引っ越してしまいましたが、
猫がどこかを見つめていると
あの日を思い出して冷や汗が出ます。

(miz)

こわいね!
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2018-08-28-TUE