怪・その57

「母が怖い」

私の母は、霊感があると自覚している
ちょっと変わり者です。

しかし、幽霊を信じない父が
母の霊感を認めているのが不思議でした。

父に理由をたずねると、
こんな話をしてくれました。

家に父と母、まだ赤ん坊だった姉と
3人で家にいるときに、
母が急に「線香の匂いがする」と
言い出したそうです。

うちには仏壇などなく
父には匂いもしなかったそうです。

そして、電話が鳴りました。

それは祖母の訃報の知らせでした。

母は、
「お母さんがうちの周りを回ってから
天国に行ったんだよ」
と言ったそうです。

その話が、
我が家の伝説となってから約10年後。

父と母と私が
外出先からの帰路を歩いていると
母が空を見上げて、

「光がうちの方向から
空に上がっているのが見える」

と言い出しました。

私には見えません。
父にも見ないようでした。

しかし、私たちは慌てて家に帰りました。

そして、家の前に着くと
電話が鳴っているのに気づきました。
すぐに父が鍵を開けて、
私が電話に出ると、
それは祖父の訃報でした。

私は祖父の訃報を悲しみながらも、
同時に

“母が怖い”

という感情を持ったのを、
今でも覚えています。

(Y.A)

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2018-08-19-SUN