怪・その38

「娘と間違えて」

去年の夏、高校生の娘を
学校に迎えに行った時の出来事です。

私は学校の敷地の隣にある、
駐車場に車を停めて、
娘が来るのを待っていました。

その駐車場は、道路に面したところに
金網のフェンスが建ち、
私はフェンスの中央に
道路が見えるよう、駐車していました。

時間は夜の7時頃、
辺りは薄暗くなっていました。

着いてから数分後、
制服を着たショートヘアの高校生が、
校門の方から道路を走って来ました。

その子は
私の車の正面に向かって走って来たので、
私は自分の娘が来たのだと思い、
車に乗せやすいよう
出入口の方に車を移動させました。

移動させてから5分ほどたっても、
娘は車に乗って来ません。

辺りを見回しても、
娘どころか
誰一人いません。

何か変だなと思い、
娘の携帯に電話をしました。

「今部活が終わって
 着替えてるから待ってて。」

と娘。

えっ?
さっき走って来た子は娘じゃないの?

私は納得がいかず、
さっき見た事を
もう一度思い返していました。


その子は笑み浮かべて走って来て、

フェンスがあるのに車の正面に来て

パッと消えていました。

私はその時、
「あれ?今消えた?」と思ったのに、
気にせず娘だと
思い込んでいたような‥‥。

それに娘の学校の制服はリボンなのに、
その子はネクタイをしていて、
何も荷物を持っていませんでした。

その後、
校門から出て歩いて来る、
大荷物を持った娘を見て、

全く違うと確信しました。

「あー、またか。」

いつも私はそうなんです。

ハッキリと見え過ぎて、
生きている人だと思っては、
つじつまが合わないことに気づき、
後から「違う」とわかるんです。

今でも娘を迎えに行く度に、
あの時のことを思い出します。

笑顔で私のところに走って来た
あの子を、
娘と間違えて
車に乗せて帰っていたらと思うと、
ゾッとします。

(S)

こわいね!
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2018-08-13-MON