怪・その31

「聞きなれた音楽に」

大学では
「オカルト研究会」というサークルに
所属していたほど、オカルトに関することが好きで、
普段から怪談を探したりしています。

そのため、多少不思議なことがあっても
大概は原因を見つけて出そうとし、
怖がることはあまりありません。

しかし、これは大学一年生のときに経験した
未だに原因も分かっていない話です。

「オカルト研究会」での研究発表のため、
私はテーマを「怪談」にして調べものをしていました。
その研究の一環で、怪談を深夜まで、
パソコンとノートでまとめていたときのことです。

私は作業中に、好きな音楽をループ再生して
パソコンで聞いていたのですが、
その音楽の中に
聞き覚えのない音が混じっていました。

それは、泣いている、
軽く咳き込んでいるような、
しゃくりあげる、低い男性の呼吸の音のように
聞こえました。

私は隣の部屋の人や
外を歩いている人のものだろう、
とイヤホンを外しました。

しかし、夜遅いこともあり、
部屋に聞こえるものはありません。

再びイヤホンを耳にすると、
聞きなれた音楽に混じって
呼吸のような音が聞こえます。

いくら何度も聞いた音楽といっても、
覚えていない箇所や
気付いていなかったフレーズがあるのかと思い、
音楽を一度止めて、再度聞き直しました。

すると、
さきほど聞いていた楽曲の部分に差し掛かっても、
普段聞きなれた曲が聞こえるばかりで、
気になった呼吸の音はまるでありませんでした。

怖い、とも思いつつ作業に遅れが出ていた私は、
そのまま深夜二、三時頃まで
怪談をまとめる作業を続けました。

それからずっとパソコンで音楽を聞いていますが、
時折ノイズが混じったり、止まったり、
といったことは起こりました。

しかし、呼吸のような明らかな異音が
混じることはありません。

どうやら機械の故障でも、
他の場所から聞こえていたものでもないらしい
あの音は
何だったのだろうかと未だに気になっています。

(t)

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2018-08-11-SAT