怪・その22

「店子がいつかない理由」

友人が話してくれたことをお伝えします。

彼女は不動産業界のベテランです。
そんな彼女のお得意様の
いくつかある賃貸物件で、
どうしても店子がいつかない、
入ってもすぐに出て行く、
という部屋がありました。

理由をきいても、特に決定的な理由は
でてこなかったそうです。

つい最近も、店子が部屋を出て行く、
ということになり、お得意様は、
「あんたんとこの対応が悪いからじゃないのか」
と怒り出したそうです。

これから部屋を出る店子に
「なにかありましたか」ときいたところ、
「玄関に悪臭が漂っている」と言われたそうです。

「足の臭い」がするそうです。

玄関だからそういうものかな、
その内なくなるだろう、と消臭剤を置いてみたり、
芳香剤にかえてみたり、
靴箱をすみからすみまで拭き掃除をしたり、
玄関の三和土部分も水拭きしたり、としてみたけれど
どうしても臭いが消えない、
時には玄関だけでなくキッチンにまで
「足の臭い」がすることがあり、
臭いが鼻について仕方なく、出て行く、
ということになったそうです。

店子が変わる時はハウスクリーニングを入れて
半月ほど手入れをしてから貸し出していたので、
思いつくこともありません。

万策尽き、社内で「見える」と言われている
若手男性社員に
「一緒に行ってちょっと見て」と頼みました。

彼女と男性社員がその部屋のドアを開けたところ、
彼はまるで当たり前のように、

靴を脱いで上がってすぐのところに
おじいさんが裸足で膝を抱えて座っている、

と言ったそうです。

白髪、黒縁メガネ、
白地に紺色の大きなマス目模様のボタンダウンに
ベージュのカーディガン、
下は普通のズボンをはいた裸足のおじいさんが、
座っていたそうです。

後日お得意様に見た状況を
そのまま伝えたところ、

「『そんなところに座られたら迷惑だ。
さっさと成仏して、ここからは出ていけ』
と言え〜」

と言われたとのこと。

男性社員にそれをお願いすると、

「(自分は)見えるけれど、
話しかけてはいけないし、
祓う能力がないので
もらって帰ってきたら大変。
そういうことは、
かえって何も感じないひとが
言った方が良いですよ」

と断られました。

そこで彼女は男性社員に同行を頼み、
その部屋に行き、ドアを開けて

「とにかくここから出て行って。
商売に迷惑、絶対絶対出て行って」

と叫んでドアを閉めました。

その後ドアを開けて
男性社員にもう一度見てもらったところ、
おじいさんはいなくなっていたそうです。

(ふなちゃん)

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2018-08-08-WED