怪・その26

「感じる、見える人」

私の母方の祖母はいわゆる「感じる、見える」人でした。

私は、祖母の感覚をところどころ受けています。
いくつかいろんなことを体験していますが、
ひとつ、お伝えします。

母が亡くなってから
私が新しく勤め始めた職場の近くに
カルチャーセンターがあり、
その中に華道クラスがあったので、
なんとなく行くことにしました。

第一回目の教室で先生とお会いした時、
先生が、亡くなった母に瓜二つでしたので、
とても驚きました。

ある時、私が活けた枝ものを
先生が手直しのときに、
私の手の上から手を重ねて
「鋏はこう持つと良いのよ」と教えてくださったとき、

先生が

「あら、○○さん、見える人なのね」

とおっしゃったのです。
そして続けて

「大変だったでしょう。
楽しいことばかりじゃないものね」

とおっしゃいました。

きけば先生は幼いころから
なんとなく感じていたものの、
それが何なのかわからず、
人に言っても信じてもらえなかったので
「あまり言わない方が良いんだ」と思い、
だんだん見えても感じても
口をつぐむようになったそうです。

その先生の一番怖かった体験は、
お嫁入りの前日の出来事だそうです。

先生のお嫁入りの時は、
近所に住んでいた親戚のおばさんに髪を結ってもらい、
そこから実家に戻って
翌朝花嫁衣裳を着ることにしていたそうです。

親戚のおばさんの家の二階で髪を結ってもらい、
あまりにも上手に結いあがったので、
おばさんが
「そうだ、ちょっと打掛持ってきて羽織ってみようよ」
と言い、先生の実家に花嫁衣裳を取りに行ったそうです。

それまでにぎやかにいた
他のおばさんたちも一緒に降りて行ったので、
先生は不意にひとりぼっちになったそうです。

そこで鏡をみながら髪をさわっていたところ、
一階に何かがいる気配がしたそうです。

目に見えるものではないけど確かに何かがいて、

しかも「悪い」何かで、

ごそごそと床を這っている感じがしたそうです。

先生はとっさに「上がってこないで」と声を出さず
心の底から何回も念じ、
なんとかその場から逃げようとしたそうですが、
階段を降りたら絶対に悪いことが起きる、と直感し、
どうしようどうしようと思っていたそうです。

部屋の中をうろうろしていたとき、
とうとうその何かが、
階段を一段づつ這いあがり始めた音がして、
先生はとても怖かったのに

「明日嫁入りだというのに
こんなところでこんな目に遭うなんて割があわない」

と俄然腹が立ち、二階の部屋の窓を開けたそうです。

先生は、花嫁の髪のままその窓から屋根に降り、
隣のお宅の屋根に移り、
そこでおばさんたちが帰って来るのを
しばらく待っていたそうです。

おばさんたちが戻ってきたときに屋根から声をかけ、
家の中をみてもらったそうです。
何か悪いものはいなかったそうですが、
先生はそれからおばさんの家には戻らず、
それ以降も家の中には入らなかったそうです。

それから何十年か経ち、私の手をさわったときに、
私が感じる人だ、ということを急に感じて、
ついつい口に出した、ということでした。

(ふなちゃん)

こわいね!
2017-09-05-TUE