怪・その24

「お墓参りのあとに」

お墓参りに行った時の話です。

私の仕事は不定休で
家族と予定を合わせるのが難しく、
お盆の迫ったその日も
一人でお墓に行きました。

山の中腹の斜面にある小さな町営墓地です。
その日はとても天気が良く、
お参りしたら、峠を越えて
海沿いをドライブしようと思っていました。

動物が荒らすので
お供え物は持って帰る決まりになっています。
山の登り口のコンビニで、
仏花やお菓子ではなく、
後で自分で飲む気満々でノンアルコールビールと
おつまみになりそうなものを買って、
お墓の真ん中を蛇行する道を車のまま登りました。

一番てっぺんの空いたスペースに車を止めて
少し下ると、母方のお墓があります。
ビールとおつまみをお供えして
お墓に眠る人たちに手を合わせ、車に戻りました。

山の緑と青い空が気持ちよくて、
車の中でビールの缶を開けて
一服していた時でした。


何かが

車に入ってきたのを感じました。

周りには誰もおらず、
もちろん車のドアも閉まったままなのですが、

気配だけが突然車の中に現れたのです。

私はお化けや幽霊を見たことはないのですが、
一人でいると
自分以外の気配を感じたりすることがありました。

そんな時は決まって、
静電気の溜まったプラスチックの下敷きに
手を近づけた時のような、
じわりとした圧力を感じるのです。

車の中に入って来た気配はその圧力の塊でした。

絶対に何かいる。

全身が総毛立ち、恐怖で体がこわばりました。

怖さに負けてチラ見してしまったのですが、
バックミラーには何も映っていませんでした。
映らないのに、間違いなく
何かの気配がそこにあるのです。

気づいていないふりをして
なんとかやり過ごすしかないと思い、
エンジンをかけて慎重に車を発進させました。

気配はまだ車の中にあったのですが、
道を下って、うちのお墓の横を通る時、

何も気づいてないふりであえて明るく、
「また来るね」
と声に出して言ったところで、

今までの圧力が嘘のように、
すうっと車の中から消えたのです。

そのままゆっくりと道を下って、
出口のコンビニに入って
ようやく落ち着くことができました。

その気配が何だったのか、今でもわかりません。

ただ何となく、
お墓で飲み食いしていたのを怒っていたのかな、
と思い、それ以来
お参りが終わったら長居しないことにしています。

もちろんお菓子や飲み物を口にすることもなくなりました。

(ミクロねこ)

こわいね!
2017-09-01-FRI