怪・その22

「猫が気にする」

これは最近の話です。

うちの猫はもう年寄りで、
いつも弟の部屋のベッドの上でじっと寝ています。

弟の部屋のドアは常に開けっぱなしで、
私は自由に出入りして
猫をかまってやっていました。

ある日の夜、
ベッドの横の床に座って猫を撫でていると、
つい、うとうとしてしまいました。

ベッドに突っ伏して目を閉じていると、
今いる弟の部屋の中から、ドアが見えました。

夢の中であるはずなのですが、

頭の中にはっきりと開いているドアと、

電気のついた明るい廊下が見えているのです。

すると、

透明人間のような人影のようなものが、

ゆっくりと廊下から現れました。

その人は廊下に立ったまま、
開いたドアの入り口から


こちらを見ているのです。


その瞬間ふと目が覚め、

今のは‥‥と
少し固まってしまいましたが、
夢かもしれないし、
怖い雰囲気はなかったので
気にしないようにしました。

それから何事もなく、
毎日弟の部屋に出入りします。

ですが

うちの猫は

ドアの入り口が
しばしば気になるような素振りをするようになりました。

撫でていると
急にドアの方へ顔を向けじっと見るので、

少し怖いです。

（ｃ）