怪・その20

「毎日聞いた」

数年前に亡くなった、
一緒に住んでいたおじいちゃんの
お葬式の日のお話です。

お葬式が全て終わり、
私の家の居間に近い親戚が集まって
お酒を飲んでいました。

お酒も食事も進み、少し酔いが回ってきた頃。

部屋の隅でぼーっと座っていると、
私の背後で足音が聞こえ、
私は誰かがトイレに立ったのだと思いました。

その音自体は自然で
特に気になりませんでしたが、

なぜか

「誰がトイレに行ったんだろう」

と気になってしまい、

その人が帰って来るのを待っていました。

しかしその誰かが、
なぜか一向に帰ってきません。

だんだん不安になりさらに待ってみましたが、
ついに誰も部屋に戻ることはありませんでした。

その足音を
もう一度頭の中で再現してみて気づきました。

おじいちゃんが生きていた時に
私が毎日聞いていた、
おじいちゃんが自分の部屋からダイニングに歩き、
そこで止まって
テーブルの上の新聞の束からその日の朝刊を探し、
また部屋に戻って行く足音と同じでした。

足音の大きさも響き方も、テンポも、
新聞を探すために
途中で足音が一度止まる長さも同じでした。

ハッとしましたが、
不思議と怖くはありませんでした。


そのことを後日母に話したら、

「みんなが飲んでたから、
様子見に来たのかもね」

と言っていました。

この時から、きっと近しい人は、
亡くなってもどこかで見ていてくれるんだろうなと
思うようになりました。

(a)

こわいね!
2017-08-31-THU