怪・その7

「いつもの散歩の公園」

帰省したある夏の夜、
母と一緒に実家のわんこの散歩をしていました。

いつもの散歩コースだから、と
大きな桜のある公園の中に母が入ろうとしたのですが、

絶対入りたくない

と急に思ったのです。

何とも言えない恐怖で
ぞわっと鳥肌がたったのを覚えています。
小さい頃、しょっちゅう遊んでいた公園なのに、です。

あまりに私が嫌がるので、
公園には入らず、横の道路を通って家に帰りました。
ほんとうは横を通ることすら嫌でしたが‥‥。

その公園の横を通るときも、

絶対、公園の中は絶対に見たくない、見てはいけない

と思い、出来るだけ公園から一番遠い道の端っこを
顔をそむけながら歩いていました。

そんな私の様子を母は
「いい年して怖がりやねぇ、何にも無いのに」
と笑っていました。

それから一か月後、
いつも明るい母から
真面目な雰囲気で電話がかかってきました。

「あんた、あそこの公園の事、
新聞かなんかで知っとったん?」と。

私は何のことかわからず
「なんのこと? なんかあったん?」と聞いてみると、

例の公園の桜の木で半年ほど前、
立て続けにお二人の方が
首つり自殺をしていたそうです。

その電話の後にも
同じ公園内の藤棚で、お一方自死されたとか。

実家の近所には公園がいくつもありますが
そのようなことが起きているのはその公園だけです。

しかも一年以内に、三人も。

もし、あの時母が無理やり私を公園に連れて行っていたら、
私は何を見たのだろうとふと考えます。

同時に、お亡くなりになった方のご冥福を祈るばかりです。

(ビリケン)

こわいね!
2016-08-08-MON