怪・その29

「部屋の中の音」

今から6、7年前の事です。
私は仲介の不動産会社で営業をしていました。

社会人男性の希望条件の部屋に、
ご案内に行ったときの事です。

前にも数回、
別のお客様をご案内したことがある
3階建の1階にある
ごくごく普通の部屋です。

その日は、天気も良く爽やかな天候で、
部屋のご案内には最適な日でしたから、
ご希望は2階以上でしたが、
1階のあの部屋でも
気に入っていただけるかもと思いました、
部屋に入るまでは。

現地につき、カギをあけ、
お客様に見ていただきながら、
契約条件等ご説明差し上げている時に

突然

パシッ!!

と大きな音が聞こえました。

ん? なんの音?!
ベランダ側のサッシ左上で
鳴ったように感じたのですが、
私は何事もなかったように、話をつづけました。

その時は、
そうした方がいいような気がしたからです。

すると、

今度はベランダに向かって右側壁の中ほどから

パシッ!!

っと大きな音が鳴りました。

30㎝定規をしなわせながら
机に打ち付けた時のような音です。

それも、かなり大きな音です。

何の音だろうと思っていると、
お客様にも聞こえていたようで、
「今の音、なんの音でしょうね?」
と、聞かれてしまいました。

さすがにあの大きな音は聞こえないわけないと思い、

「そうですね。何の音でしょう。
 部屋の中の音でしょうか?
 外の音でしょうか?」

と話しながら、二人でベランダに出てみました。

すると、程なく

パシッ!!

また、鳴ります。

確実に部屋の中の音です。


最初はここ、次はあそこ、そしてそこ。

音の場所を指し示す事ができるほど
明確に聞こえました。

お客様と私は、目を見合わせ、
とにかく出ましょうかと
大急ぎで戸締まりをして逃げ出しました。

部屋を出てからは、音のことはおろか
部屋探しの会話もなくなり、
お客様は検討しますと帰られました。

その後、よくよく募集状況を確認しましたら、
人気のエリア、駅近、静か、日当良し、

なのに、長く空室であることがわかりました。

あのパシッ! と聞こえた音は、
ラップ音というものだったのでしょうか。
あの時のお客様に、
あなたの住む部屋じゃないよ、と、
知らせていたのかもしれませんね。

(あこぴ)

こわいね!
2015-08-26-WED