おさるアイコン ほぼ日の怪談2010
怪・その36
「変な造りのビル」


当時、会社が入居していたビルは、
外観も内部も、変わった造りでした。

魔を呼ぶ建物の形があると
聞いたことがありますが、
そのビルもそうだったのかもしれません。
社内では、「見た」とか、
「聞いた」とかいう噂が
絶えませんでした。

私は、
当時係っていたプロジェクトのために、
仕事が深夜に及ぶことが
しばしばありました。

ある晩、私はチーム内の数名と一緒に
会社に泊まりこんで仕事をしました。

夜半にいったん休憩をとるべく、
私は一人で別室に行き
ソファーに座って
コーヒーを飲んでいました。

ところが、いつの間にか
横になって眠ってしまったようで、
額に何か軽いものが
断続的に触れるのを感じて
目が覚めました。

部屋の電気も知らない間に消えていて
よく見えません。
パラリパラリという音で、
紙が落ちてきているのだということが
わかりました。

何か、そばにいる
息遣いのような気配を感じ、
動こうとしたけれども動けず、
声も出ず、混乱しかけていたところで
同僚が部屋に入ってきて
電気をつけました。

すると、フッと動けるようになりました。

見るとなんと私のまわりに、
まっさらなコピー用紙が
何十枚も落ちていたのです。

しかし、
離れたところに置いてあるコピー用紙が、
なんで顔に落ちてくるのでしょう?


そしてその2日後、
今度は一人で徹夜です。

先日のことがあるし、正直嫌でした。
でも、仕事上責任もあり、
しばらくは集中して
パソコンに向かっていられました。


ふと我に返ると、気配がします。
パタパタ動く、複数の気配です。

私はパソコンの画面から
顔を上げることができませんでした。

しかし、モニターの向こう側にも
ちらちら見えます。

もしかして、子ども?
‥‥ありえない、ありえない、
深夜のオフィスなのに。

疑問が浮かんだ私は、
思わず顔を上げて、しまいました。


そして、
まるで蝋でできたような青い顔の子と
目が合ったのは
覚えています。

それ以外に記憶はありません。
気絶してしまったからです。


その後、会社は移転して、
今は別の場所にあります。

(T)

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2010-08-30-MON