おさるアイコン ほぼ日の怪談2010
怪・その7
「上半身だけの」


今から約4年ほど前の話です。

なぜか体がだるく、何もする気になれず、
家にいると、誘われるような睡魔におそわれ、
週末は一日中寝て過ごす日々が
続いていた時期がありました。
そして眠っている時は、必ず金縛りにあうのです。

そのような状態が3ヶ月ほど続いた頃でしょうか。
いつもの睡魔におそわれ、眠ってしまっていた週末、
金縛りにあい、嫌だなあと思っていたところ。

後ろから、何かブツブツいう声が聞こえてきたのです。
その日は旦那も仕事で、家には私ひとりのはずでした。

その声は、
何かお経のようなものを唱えているようです。
怖かったのですが、
金縛りで動かない体をようやく動かし、
声が聞こえたリビングの方を向いて、目を開けました。

そこには、上半身だけの、知らない男の人が、
こちらに背を向けて、立っていました。

そして、ゆっくり、ゆっくり、

こちらを振り返ったのです。

その時の形相を、私は今でも鮮明に覚えています。
どのような恐ろしい感情が、あのような形相を
人の顔に作り出すのでしょう。
2秒ほど目があったのち、その男の人は、
かき消すように、消えました。

一瞬の後、私は家を飛び出していました。
怖くて怖くて、とにかく家から離れたい一心で、
その日は友人の家へ逃げ込みました。

その後も、家にいるのが怖くてたまらず、
週末はできる限り出かける日々がしばらく続きました。

ある日、仲の良い年上の友人に、この話をしたところ、
彼女の友人に霊能者がいるということで、紹介を受け、
すぐにお祓いをしてもらうことになりました。

お祓い当日。言われた通りの準備を済ませ、
リビングでじっとしていました。

そして、お祓いの時刻になった瞬間。

隣の台所で、バチバチバチッと、
ものすごい音が響いたのです。
その音はしばらく続き、やがて消えました。
とても怖かったのですが、私はその台所を突っ切って、
玄関へ行き、もらったお札をドアの内側に貼りました。

それ以降、あのどうしようもなかった、だるさも、
眠気も、金縛りも、まったくなくなりました。

今でもあの形相を思い出すと、
瞬時にあの時の恐怖がよみがえってきます。

(まりん)


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2010-08-09-MON