おさるアイコン ほぼ日の怪談2008
怪・その6
ナースステーション


7〜8年くらい前、
私が看護師をしていた頃の出来事です。

ある高齢の男性患者Aさんは、
夜になるとふらふらとベッドから起き、
ひとりで出歩いてしまうことがありました。

ひとりで歩いて、転んで怪我をしたり、
他の患者さんの迷惑になっては
いけないとのことで、毎晩消灯時間になると
ナースステーションの一角をカーテンで区切り
Aさんのベッドを運んで、
そこで休んでいただいていました。

ある晩私は夜勤だったので、
いつものようにAさんのベッドを
ナースステーションに運ぼうとすると、
Aさんは嫌がります。

でも安全面から、
ナースステーションで休んでいただく必要があり、
そう説明すると、しぶしぶ納得してくれました。

そしてその日の夜中。
Aさんは眠れない様子で起きていたので、
話をしていると
「ここで寝るのは嫌なんだよなぁ」
と再びおっしゃいました。

「どうしてですか?」
と理由を尋ねると、

身を乗り出して
自分が寝ているベッドの下を覗き込み、

「ふたりいる‥‥、あ、ひとりになった」

と‥‥。

そこにいた看護師全員の顔が青ざめたのは、
言うまでもありません。

(kana)
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2008-08-04-MON