おさるアイコン ほぼ日の怪談2008
怪・その5
引き寄せられる人


私の母の体験談です。

私の母は霊感の強い人で、
よく死体に引き寄せられる、と言っていました。

首吊り、轢死、事故などで亡くなった方の死体に、
何故か遭遇するのだそうです。

予知夢もよく見ていて、
そういう夢は目が覚めてからすごく気になるので、
気をつけるよう、その人に警告するのですが、
必ず起こってしまうんです。

「カラスが鳴いている」「黒猫が横切った」
そんなことを母が言うと必ず訃報が入ります。

カラスなんていつだって鳴いてるし、
黒猫だってどこにでもいる、
わたしはそんなことに
何かを感じることは全然ありません。

そんな母が若い頃、
馴染みの喫茶店のカウンターに
座っていたときのこと。

そばには大きな百合が活けられており、
店内はむせるような百合の匂いに
満ちていたそうです。

ふと百合のおしべがあまりにも赤いのに気付き、
つい指で触ったところ、
普通なら花粉がつくはずが、
べったりと真っ赤な液状のものが指につき、
驚く母の目の前に、
ぽたっと上から何かが落ちてきて、
めしべに吸い込まれるように消えた‥‥

そしてめしべはさらにぬらぬらと赤く染まる。

思わず見上げると、
百合の真上の天井には
真っ赤な大きな染みが‥‥!!

そこからぽたぽたと赤い血のような滴りが
めしべに向かって落ちている。

不思議なことに、
血は全くまわりに飛び散ったりせずに
めしべだけに‥‥

実はその喫茶店のマスターが同居の女性を殺し、
天井裏に死体を隠していたという
大変な事件だったのですが、
その女性は絞殺で、
遺体からは血は流れていなかったそうです。

こんなふうに母は、何故か、
死体に引き寄せられてしまうのでした。

(H)
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2008-08-04-MON