おさるアイコン ほぼ日の怪談2005

怪・その16
「制服の男の子」

それは20歳の夏、
お盆の夜中に友人4、5人と連れ立って
湖に花火をしに行った時のことでした。

車を降りて湖へ続く暗い道を歩いていくと、
小さな広場に差し掛かりました。
その広場を通り抜けるときに、
夏の制服を着た
16、17歳の男の子が立っているのが見えました。
ボーっとこちらを見ているのです。
少しにやけて、
白いシャツにグレーのズボン、紺のバッグ。
髪の毛はサラサラな感じで
特に嫌な感じはしませんでした。

1時間ほど花火で楽しく遊んで、帰り道、
またその公園を通りました。
さっきの子、いないなぁ‥‥、と思った瞬間、
右肩に接近する人の気配を感じて振り返ると
その子がどんどん近づいてくるのです。

驚いて私は「キャー」といいながら
走り出してしまいました。
すると一緒に歩いていた
友人達も、一緒にキャーと走り出したのです。

車のところまできて、
てっきりその子に驚いて走り出したと思った私は、
「変な子だったね、
 夏休みなのに夜中に制服なんて‥‥」
というと友人達は、血の気が引いた様に、
「そんな子はいない」
というのです。
いるのは、
黄色いド派手なTシャツをきたオヤジだと。

急いで車に乗り込んだ私たちの左前方に、
その子はまだ立ってこちらをみているのです。

わたしは何も言いませんでしたが、
みんなにはそれが黄色いTシャツのオヤジに
見えているようでした‥‥。

なにかが乗り移っていたということなんでしょうか?
いづれにしろ、男の子を見たのは
私一人だったのです。

(hiro)


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2006-08-16-WED