おさるアイコン ほぼ日の怪談2006

怪・その8
「通り過ぎる人魂」

もう10年以上前になりますが、
私はその夜、東京から四国に帰省するため
高速バスに乗っていました。
座席は最前列か2列目の右側・通路側でした。

夜中にふと目を覚ますと、
前方(運転席と客席を仕切っているカーテン)から
白っぽい丸いものが次々と入ってきました。

人魂! と瞬時に思いました。

というのも、それぞれが人間の顔をしていたからです。

真ん丸い玉に、リアルに目と鼻と口がある。
そのうちの「おじさん顔」の人魂が
私の顔の間近まで近づいてきて、
ニカッとモノ凄い笑いを浮かべました。

ひいい! と慄きましたが、おじさん?に
悪意はなかったようで、
すぐに他の人魂の群れと共に通り過ぎました。

はっと後ろを振り向くと、
人魂の数は10〜20ぐらいでしょうか、
ふわふわとバスの通路をただよいながら、
バスを通り抜けていきました。

バスの中は薄闇で乗客は寝静まりかえっています。
もう心臓はバクバク。
今のは何だったんだ、何だったんだ、と
しばらく興奮状態でした。

夢だったのでしょうか。
もし夢でなければ、今日もどこかで
人魂の群れが飛んでいるのかも知れません。

(バス好き)


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2006-08-09-WED