愛と涙の父親参観的座談会?!

座談会メンバーは、息子&娘の5人。
お父さんにはのちほど原稿を読んでいただき、
自由に「ちゃちゃ」を入れていただきました。

<息子&娘>
<お父さん>
谷川賢作(たにかわけんさく)
音楽家。43歳。11歳の娘さんと7歳の息子さんの父。
カラオケとお酒がとてもお好き。お父さんは、いつも元気ハツラツ詩人の谷川俊太郎さん。賢作さんの公式ホームページhttp://www.taniken.net/

俊太郎
横尾英(よこおえい)
アートプラネット・Y勤務。インターネットや展覧会での横尾さんのグッズなどの企画販売を担当。41歳、独身。画家の妹さんがひとり。お父さんは美術家の横尾忠則さん。TADANORI YOKOO OFFICIAL SITE http://www.tadanoriyokoo.com/

忠則
糸井あんだ(いといあんだ)
大学生。一人娘。学校に通いながら、アルバイトの日々。お父さんはコピーライターでdarlingの糸井重里。たまに聞こえる親子の友だちみたいな会話に、スタッフも和みます。

重里
西田るか(にしだるか)
ほぼ日ストア店長。東京育ちの29歳、独身。3人兄弟の長女で、アウトドア大好き。お父さんは山梨の八ケ岳にひとりでこもっている物作りの名人。

阿部聡美(あべさとみ)
西田るか店長のともだち。26歳、独身で一人っ子。岡山出身。今、興味があるものは「美肌」。もと建築屋のお父さんとは、長い間会っていない。

第1回 ほめる父、こわい父、そして、ガゼボを作る父たちの話。

ほぼ日 まず、ざっくりと、ご自分のお父さんが
どんなお父さんなのかを
それぞれ教えていただきましょう!
るかさん、どうですか?

るか
えっとね、家がもともと床屋さんなんです。
おじいちゃんおばあちゃんが経営してたので、
父が継ぐはずだったんだけど、
自由奔放に生きてしまったから、
そういうわけにいかず・・・。
今は「ガゼボ」を作っています。
みんな 「ガゼボ?」

るか
そう、6角形のあずま屋。


ガゼボ

さとみ
あの、高級リゾートとかによくある、あれ?

るか
そうそう(笑)。それを手作りで作ってて。
東京で買うと100万、200万とかするのが、
「パパが作っているのは9万円だから
 みんながどんどん買ってくんだよ」
って。

賢作
あ、売ってるんだ。


るか

そうなんです。
山梨のホームセンターで。
昔から父は変わっていて、
前は、東急ハンズに、いろんな手作りのものを
卸してたんですけど、その後、不意にそれをやめて、
軽井沢でホテルを5年間やってました。
その後は山梨県にある八ケ岳に引っ込んだまま、
ひとりで好きなように暮らしてるんです。
最初は農業がやりたくなってそこに行ったんだけど、
農業は夏しかできないから、
冬は、「ほぼ日」でも1回売ってたんですけど、
ビーフジャーキーを、作って暮らしてたんです。

ガゼボにホテルに農業にジャーキー・・・。


るか
でも、狂牛病でちょっと今年はヤバイぞ、
っていうときに、
遺跡発掘、井戸掘り、ペンキ塗りとか、
そういういろんなバイトを始めたみたいです。
「バイトを始めたんだよ」って、
なぜか得意そうでしたねー(笑)。

賢作
たくましいなあ!


谷川賢作さん

るか
今は、「ジェイマート」っていう、
山梨にあるホームセンターでバイトをしてて。
50過ぎなんですけど、時給700円で。
ユニックっていう、大っきなトラックに
クレーンが付いてる乗り物があるんですよ。
それを自分で持ってるんですけど、

あんだ
持ってる!?

るか
そう。ホームセンターでお客さんが買った、
別荘のお庭を作るためのいろんな砂利とか木とかを、
その別荘に運んであげては、
そこの家のご主人とかに話しかけて、
「どんなお庭作るんですか?」って
結局自分で作って
あげちゃってる
らしい。

さとみ
ボランティアで?

るか
うん。
みんな はあー!

るか
「給料、どんどん上がってくんだよな」って喜んで。
でも、時給は相変わらず740円ぐらいらしいです。
700円だったのが、ちょっと上がったの(笑)。

賢作
わあ!

るか
もう、「父のやってること」って
すっごい説明しにくいから
いつも聞かれて困るんだけど、
うちの父は、そんな感じなんです、今。
ほぼ日 のっけからすごいですねえ!

賢作
ぼくも父の話、始めちゃいますけど、
小学校の時に先生とか友だちの前で
父の職業を言うのがすっごく恥ずかしくて。
なんか、からかわれたんですよ、先生に。
「谷川の父親って、なんだ?なんか書いてる?
 詩書いてるのか!食ってけるのかよ」って(笑)。
「詩を書くって、それ、職業なの!?」って(笑)。

だから、「著述業」なんていう言葉を
どっかから仕入れて、
父のことを「文筆業」とか「著述業」とか
言ってましたけど、
なんじゃそれ?って思ってた(笑)。
「詩人」って、なんか恥ずかしくって
言えなかったなあ。


るか
「父は詩人です」
って言いたいですよー!

賢作
よーく考えるとね、僕にとっての父親は、
「僕の応援団長」なんですよ(笑)。
みんな あー!

賢作
そういうふうにしか言えないっていうか。
いま分析するとね、子どもの頃から、
彼は、すごく僕をのせてくれる人間でしたね。
「おまえは音楽の才能あるよ」って。
ピアノを弾いてるとね、
「こいつ、ピアノ上手いんだよ」
って周りの人たちに言ってくれてた。

でも未だにやっぱり、日本の父親っていうのは、
「こいつはまだまだで」っていう姿勢がありますよね。
「もっとちゃんとしろ、おまえは」っていうような。

るか
うんうん。


ぼくの場合は、話がまったく
谷川さんの反対で。

その典型的な日本の父親の
「おまえはまだまだだな!」っていう育て方でした。
子どものときはぜんぜん父と接する機会がなくて。
一言で言うと、「うちの父はいない」
っていうぐらい。

母親と妹と、あとは事務所にいる女の人たちが家族、
っていうぐらい、
父とは接することがなかったんです。
今の賢作さんの話の次に、これを読んだ父に、
また「おまえはまだまだだ」って
言われるかも知れないけど(笑)。


さとみ
そんなことないですよ!

いまだにそうなんですよ。
父は、そういう「おまえはまだまだだ」
っていう気持ちが、
今でもずっと続いているような気がする。
これ、愚痴になっちゃうんですけど・・・。
どうしよう? これ!
言いながらドキドキしちゃう!

ほぼ日 大丈夫ですよ!安心してお話しくださいー。

賢作
いやあ、そういうこわいお父さんが
一般的には主流じゃないですか?

るか
英さんのお父さんは、
お家にいらっしゃらないのに、こわかった?

いないけど接することがたまにあったときに、
どっちかっていうと、こわいというより
暗黙のうちに距離をおかれているような感じで。


あんだ
暗黙のうちに。

いても、あまり接してくれない。
たぶん父はどう接していいのか、
わからないっていうところがあったんでしょうね。
息子には。

妹とは、同じテーマで話をしたとしても、
僕とはまた違うことを言うでしょうね。
長男だということもあるだろうし。
そのへんの話は僕、ぜんぜんしたことがないから、
本当はどう思ってるかは、わからないけど。
やっぱり僕にとって父は、
なかなか近寄りがたかったし、
どう喋っていいのかわからなかった。

あんださんのお父さんは、
褒めるほうですか?

ほぼ日 まわりには褒めちぎってますけどね(笑)。

あんだ
どうでしょうね。
でも、褒めるときには褒めるし、
「それ、違う」とかも言われるし。
わたしの場合は、
小さいとき一緒に住んでなかったんですけど、
毎週末一緒に遊びに行ったりとかしてました。
なんか、友だち感覚みたいな感じで。
今日はパパが来るから、どっか行ける、
みたいな感じで。
だから、接し方が
ふつうの親子と違うんじゃないかなあ。

なんだか楽しそう。


横尾英さん

あんだ
で、たとえば友だちとかといるときに
父から電話がくると
「あ、どうも、どうも、糸井です」とか言って
私が出るんですよ。
そうすると、「今の、だれ?」って言われて
「いや、親」って。
友だちは
「え、おかしくない?」って言いますね(笑)。


るか
いや、あるある。すっごいあるよ、それ。
うちもね、父とは友だちみたいなんですけど、
彼氏が隣にいるときに
父から電話が掛かってきて、
すっごい長電話で話し込んじゃったりするんです。
男の人の声が漏れてくるから、
切った後にすっごい彼氏に怒られて。
「誰と話してたんだ!」って。
「お父さんだよ」って言うと、「うそ!?」って。
「他の男かと思った」って。

賢作
友だちみたいってことは、
怒られたこととか、ぜんぜんないの?

るか
ありますよ。怒るとこわいですよー!
いちばん最後に一緒に暮らしてたのは
中学生くらいだったんですけど、
夜帰ってこないってことで怒られた。
11時ぐらいまで友だちとボーリングやってたりして
帰ったときには、もう激怒。
みんな はいはい(笑)。

るか
あとは、よく、男の子から電話がかかってくると、
「いませんっ」って言って切ってました。
で、その後、すっごい機嫌が悪い。

賢作
あー、父親だね、ほんっとに(笑)。
女の子だからなあ。

賢作さんはわかりますよね、
いま女の子の父親だから。

賢作
これからじゃないっすかね。
でも、あんまり過剰なのはやめようと。
わかんないけど(笑)。

さとみ
わたしも中学3年生ぐらいのときに、
初めて彼氏みたいな人ができて、
その人が20歳だったんですね。
みんな へーっ!

さとみ
今聞いたら、その年齢差、変て思うじゃないですか。
それを当時はあんまり気にせずに、
電話とかしてたら、
親が、「どんな人?」って聞いてきて。
で、ふつうに正直に言ったら、
「なによ、それはーっ!」って
母にはすごく怒られたんですけど、
父は、「じゃあ、1回そいつに会わせなさい」って。
で、うちの近所の喫茶店で会ったらしく(笑)。

2人で会ったの?

さとみ
そう。わたしの知らないうちに
2人で会ってて。
で、「今あいつに会ってきたぞ」って帰ってきて。
「え?どうなった?」って聞いたら、
さとみが18になるまで待ってくれ
 って頼んできた」って(笑)。
「いい奴だったけどな。」って。
勝手に恋の行方を決められて。
そういう過剰さがありましたね。

賢作
いやあ、心配なんだよね〜。

 
<あさってに、つづきます!>   

2003-05-26-MON

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