要するに、形になっていないことにも、デザイン性がある。川久保玲「アンリミテッド:コムデギャルソン」(平凡社)より引用
06 質問: コムデギャルソンの 仕事の方法についてどう考えましたか?
川久保さんは 新しいもの、強いものを作りたい、 と言っていますが、それは 前と同じものを作った途端に 失われてしまう種類の強さですし、 苦労して習得した考えが 次に何かを作る時には 邪魔になることもあるという 厳しいものですよね。
コムデギャルソンは そういう大変な宿命を背負った集団ですが、 川久保さんが組織としての発想方法を いろいろ考えているのが興味深いと思いました。
例えば、 洋服のフォルムを作っていくチームと、 洋服に使う生地を開発するチームとで、 おたがいに今、どんなことをしているか 知らせずに進めさせる、 最後の段階になって フォルムと生地をぶつけ合わせる、 というやり方には、驚きました。
常識的に考えれば、 素材を生かすためのかたちを考える、 かたちを生かすための素材を考える、 というのがふつうだと思いますが、 コムデギャルソンはそれをせず、 おたがい全然ちがうところから 発想を持ってこようとしているわけで、 これもルーティンに陥らないための ひとつの工夫ですよね。
新しいものを作りはじめる時、 川久保さんはスタッフに対して はっきりしたかたちを示すのではなく、 もっと漠然とした言葉だけを 伝えて、スタッフに いろいろ考えさせるらしいのですが、 「当初は私自身も何を考えているのか  明確ではないのでスタッフは大変です」 と言えるところがすばらしいですよね。
一般的には、先が見通せていて、 明確にスタッフに指示を出せるのが 仕事のできる人と思ってしまいますが、 川久保さんは明確には伝えない…… 信念を持ってあえてそうしているのが すごいと思いました。 川久保さんのこういうやりかたは、 ある意味でとてもよくわかります。 ぼくの経験で言っても、 確固たるコンセプトがまずできて、 そこからデザインができて、 なんていうように 順序よくことが運ぶことはあまりなくて、 毎回手探りで進めているんです。
『Unlimited : COMME des GARCONS』
(清水早苗+NHK取材班・平凡社刊)
感想をおくる 友達に知らせる もどる 2005-07-13 
Photo : " Unlimited : COMME des GARCONS " ( COMME des GARCONS + NHK )
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