リスクがないでしょうということが、コムデギャルソンにとってはリスクです。 川久保玲「アンリミテッド:コムデギャルソン」(平凡社)より引用
質問: コムデギャルソンの創作の現場を 取材してみると、どのようなものでしたか。
私たちは、川久保さんが パリコレ行きの飛行機に乗る日の早朝まで 手直しに手直しを重ねている姿を見ました。 「ファッションの華麗なる世界」というより 「戦場のような世界」を見た思いでした。 創作の現場は創造集団のおたがいの戦いです。 パタンナーどうしも隣で何を作られるかわからず、 模倣は絶対に許されないから 自分で考えなければならないわけです。 作り手への厳しさは感じます。 だからベテランの方も頭を抱えるでしょうし、 ついていけない人もいるでしょうし……
ほんとに自分との戦いで 生きなければいけない現場なんです。 それがなければ 絶対に新しいものは生まれないという 川久保さんの信念があるわけですよね。 そういう会社の経営も デザインのうちのひとつだと彼女は考えるから、 判断は大変早いそうです。 また「売れ筋商品の増産」という言葉には 耳を貸さないそうです。
コム デ ギャルソンは 春夏と秋冬の2回のコレクションで 半年ぶんづつの注文を取ることが 販売のすべてです。 売れる服を増やしますということは しないといいます。 コム デ ギャルソンは潤沢な資金で 運営するような会社ではないと思うのですが、 そういう潔癖さを自分の中で崩さないところも 川久保さんらしいと思います。 川久保さんは「ああいう人みたいな」と 他に例を挙げられる人がまるで見当たりません。
「この人は、何を考えているんだろうか」 「何がでてくるか、最後までわからない」 社内で彼女のそばにいる人さえ、 パリコレのリハーサルで 彼女があれこれ指示を出している時にようやく 「川久保玲は今回これをやりたかったんだ」 と感じるほどだそうです。 「毎回何が出てくるのだろうといところで、  ものを作る現場にいるよろこびを感じます」 と川久保さんは言うし、活字で言葉を読みなおすと 単にファッションの話だけでなくて、 もの作りに関わる大きな示唆が、 ほんとに沢山あるなぁと思います。
川久保さんはコム デ ギャルソンに関わる すべての要素を頭に入れているわけですけれど、 ひとことで言えば、 作ることが好きなのですよね。 何か作ることに 彼女の生きている実感があるんでしょう。 川久保さんは 高級ファッションブランドから ユニクロに至るまで、 表参道のお店を丹念に見て歩くそうですが、 理由をきくと「関心ありますから」と言います。
そして 「作った服が、何かを変えられる」 とわかってもらえるのが いちばん、うれしいようです。 「コム デ ギャルソンを買う時は  躊躇も勇気も要るだろうけど、  それを着て変わりたいと  思ってもらえるのがうれしい」と……。
NHK制作者 山本修平
明日に続きます。
『Unlimited : COMME des GARCONS』
(清水早苗+NHK取材班・平凡社刊)
感想をおくる 友達に知らせる もどる 2005-07-07 
Photo : " Unlimited : COMME des GARCONS " ( COMME des GARCONS + NHK )
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