YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson897
 読者の声 ― 4チューナーの女


同時に2つのことを頼むとフリーズしてしまう
1チューナーのテレビ付きパソコンを使ってた私は、

2つも、いや3つ、4つも同時並行できる
4チューナの新PCに圧倒され、思った。

人間にも、4チューナーの人がいる。

おりしも、不倫で叩かれていた女性は、
要職についてバリバリに仕事ができ、
結婚もして妻としての役割をこなし、
子どもを産んで母の役割もし、
さらに恋、4つ同時並行、

まるで4チューナーの女。

そんな先週のコラム「4チューナーの女」
読者は何を感じたのか?

今週は、「読者のおたより」を紹介する回です。


<自分ではわからないチューナーの数>

私も、20代の頃は
一つの仕事中に別の仕事を差し込まれると、
両方フリーズしてしまう、不器用な新人OLでした。

恋愛をすると、仕事も食事も忘れ、
彼のことで頭がいっぱい。

30代は、
要領はそこそこ良くなってきて、
社内外で勉強会の役員などもやるようになりました。

しかし、今度は仕事にのめり込み過ぎ、
気付けば見事に

婚期を逃しておりました。

その内、大工仕事からPCの接続まで、全部一人でこなし、
遂にはマンションまで買ってしまい、

向かう方向がわからないまま、40歳を迎えました。

でも何とか、縁あって出会った自営業の人と
40代半ばに結婚し、

現在に至るのですが‥‥。

今では、
自分の仕事と夫の仕事を掛け持ちし、
家事も全部一人でやり、夫に毎日お弁当を持たせ、
従業員の相談にも乗り、
会社では新しいプロジェクトに入るという、

OL、経営者、主婦の3足のわらじを履くようになりました。

それでも、たまの休みには夫と出かけたり、
家で手の込んだ料理を作ることもありますし、
定期的に友人たちにも会い、
会社の飲み会も全部参加しています。
双方の実家にも連絡は欠かさないようにしています。

正直、無理はしていますが、夫に頼まれてはおらず、
自然とやるようになったことです。

友人にも、OL時代は
重たい書類を男性社員に上目遣いでお願いして
運ばせていたのに、
今では自転車の前後に子供を乗せて、
遠くのスーパーまで疾走する、
強い母になった人がいます。

反対に、
キャリアウーマンを目指して努力していたのに、
体を壊して働けなくなってしまった友人もいます。

その人のチューナーの数は、
自分では分からないものなんですね。

(もつ)



ズーニーです。

「チューナーの数は、自分ではわからないものなんですね」

ほんとにそう。
もっというと、どこかで自分を決めつけてる人
多いように思う。

「むかし上司から不器用と言われた」とか、

「デキル姉のそばで、
自分は1つのことでも精一杯と思い込んできた」とか。

でも、読者のもつさんはじめ、
身のまわりの友人・知人を見ていても、
1つのことしかできないと思い込んできたけれど、

「やってみたら、できた」

という人いっぱいいる。

チューナーの数、
決めつけられてたまるか、決めつけてたまるか!


<チューナーの数ではなく>

4チューナーの女
たしかに、こういう人もいる。

でも、うらやましいな、と思わないのは
どうしてだろう?

わたしもそうなりたい、と惹かれないのは
どうしてだろう?

わたしに必要なのは、
自分を大切にできるチューナーの存在。

4チューナーになっても
10チューナーになっても
自分を大切にできるチューナーが1つ
そこについていなければ

ある日突然プッツリ壊れるか
チューナーを増やし続けて彷徨うか

そのどちらかが待っているような
そんな気がしています

自分の状況を感知しながら、
オーバーフローしそうなときに
限定したり、オフしたりできる

使い勝手は悪いし、
面倒くさい感じもするけれど

そんなチューナーの女を
わたしは目指そう!
そう思いました

(broach days)



ズーニーです。

先日、夜中にふと目が覚めて
こんな言葉が浮かんだ。

「ひとりは、1人の時間でなく、
自分となかよくする時間である。」

4チューナーの女は、
たしかに有能で職場で求められ、
妻として必要とされ、
お子さんからも必要とされ、
恋人からも必要とされ、
多方面と活発にやり取りして通じていた。

でも、自分自身と通じる時間はあったのだろうか?

じっくり自分の心の声を聴き、
そこに立ち戻る、そこから言動を繰り出す。

読者のbroach daysさんの言う
1つのチューナーとは、そんな機能なのかもしれないと
私は思った。

どんなに多方面から求められても、
どんな素敵な人々と、数多く、通じていても、
それらを同時並行でこなせても、

自己が表現できない人生は虚しい。

虚しさを埋めるために、もっともっと、と
同時並行のタスクを増やしていくことにもなりかねない。

立ち止まって考えさえてくれ、
自分をとりもどさせてくれ、

「自己を表現してくれるチューナー」

そこだけは私も大切にしないと。

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2018-10-31-WED

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