第3回 あなたのことは、あなたより周りの人がわかってる。

ほぼ日 本の構想は約15年前からあったとのことですが、
まとめたのは最近なんですね。
どんべい そうですね。
まずは、企画書だけ持って出版社に行きました。
その段階では、この本の29ページや、
表紙の裏側にある表だけができていたんです。
ほぼ日 この表が、
ほんとうによくできていますよね。
どんべい ありがとうございます。
ほぼ日 カテゴリーCに書いてあることこそ
ミュージシャンに関わることですが、
カテゴリーAやカテゴリーBは、
ミュージシャン以外の
「なにかはじめようと考えている人」にも
共通している項目で。
どんべい そうなんです。
本の中でにも書いているんですが、
この表は、左から右に見てください。
カテゴリーCは具体的な事象で、
カテゴリーAやカテゴリーBは
これらの分析の結果から導いたともいえますが、
実は、カテゴリーAやカテゴリーBそのものが
発想のスタートとなんです。
ですので、これから近い将来、
新しい技術やサービス、法律などができて
ミュージシャンをとりまく環境が変わっても
根底にあるカテゴリーA、カテゴリーBが
きちんと身に付いていれば、
いくらでも対応が可能なんです。
ほぼ日 もともとその柔軟さがあるからこそ、
ミュージシャン以外にも
応用できるものになっているんですね。
どんべい 今、この表にあることは、
ぼくの手が届く範囲では
ミュージシャンのことでしかないんですけど、
「クリエイティブに身を置く人が、
 この世の中で、
 ちゃんと一人で立って進んでいくには、
 何が必要か」
という視点で書きました。
なので、ミュージシャン以外の人に
響くとしたら、その部分なのかな、と。
ほぼ日 まさに、その部分だと思います。
その視点は表だけでなく、
本全体にも通じていますよね。
たとえば、何度も出てくるテーマとして、
「あなたのことは、
 あなたより周りの人がわかっている」。
単純に自分に置き換えても、
ちょっと耳が痛かったりします(笑)
どんべい ああ(笑)。
ほぼ日 「全部一人でするのは厳しいから
 アウトソーシングを利用しよう」
ということも。
その、この本って
「それで食っていける可能性があるんだよ!」と
希望を感じさせるだけでなく、
大人の部分というか、
ちゃんとそれでご飯を食べるためには
どうするのがよいのかということが、
非常に冷静に書かれてますよね。
どんべい やっぱり、自立するっていうことは
「全部一人でやっていく」ことと同義ではなくて、
人の意見をちゃんと聞いたり、
時には人の手を借りたりすることも
大切になってきますからね。
ほぼ日 「肩書き(のれん)に仕事がくる」
っていう言葉も、なるほどなと思いました。
ちゃんと自分でのれんをつくって、それを伝える。
自分は作曲家なのか、プロデューサーなのか、
プレイヤーでも、
セッションミュージシャンなのか、
ソロプレイヤーなのか。
どんべい 結局、自分がどういうミュージシャンであるのか、
そして、どんなふうに音楽を続けていきたいのかを、
きちんと自分で考えて決め、
それを外に示していくことで、
それが仕事で返ってくるんですよね。
なので、この部分は、
これからミュージシャンになろうと
思っている若い人も、
今まである程度
ミュージシャンとしてやってきた人も、
自分が納得するまで、
考え抜いてほしいところです。
ほぼ日 ぼくらは、
「編集者」と名のっているんですけど
すごくいい加減な肩書きだなぁと(笑)。
編集者って、イメージとしては
坂本龍一さんのお父さんの、
坂本一亀さんのような有名な文芸編集者。
どんべい 三島由紀夫さんとのお仕事は有名ですよね。
ほぼ日 そうです、そうです。
で、ぼくらの場合は
そういう文芸編集者とは違って、
どんべいさんのように
こういうおもしろい本を書いたよ、とか
いいものをつくったよ、という人たちが、
「ほぼ日」で
ほかの媒体とは違う形で伝えられたら
うれしいんだけどっていう相談が一番多いんです。
はたして、それは何という肩書きなのか(笑)。
どんべい ははははは。たしかに、たしかに。
(つづきます)
2012-11-13-TUE