
こんにちは。
糸井重里の1年分のことばからつくる本、
小さいことばシリーズの編集を担当している
ほぼ日の永田泰大です。
9月1日、シリーズ最新作となる
『かならず先に好きになるどうぶつ。』が出ます。
その原稿を10人に読んでもらい、
こんなお願いをしました。
「好きなことばをひとつ選んで、
自由になにか書いてください。」
さて、誰がどんなことばを選ぶのだろう。
病理医ヤンデル/市原真が選んだイトイのことば。
ことばにする前の、ことばになってないなにかを、
どれくらい受け止めているかのほうが、
ほんとうは、ことばにする以上に大事なことなのである。
そういう意味では、ぼくが実際に、
なにかをことばにする仕事をしているとしても、
「さぁ、できた」とことばで表現するその前のところで、
いちばん仕事をしているというわけだ。
(糸井重里 『かならず先に好きになるどうぶつ。』より)
静かに見る。
病理医ヤンデル/市原真
2020年7月下旬ころのぼくは、
生の方角から病の方角へと吹く風の中にいる。
この風はある種の季節風だ。
ああ、またこんな風が吹く時期か、
くらいのことを思う。
風に吹かれていると、いくつか、何かを感じる。
でもそれはことばのカタチをしていないことが多い。
なぜことばになってから
心の表面に出てきてくれないのだろうと悩む。
思考を早くことばに練り込みたいと考えていたとき、
このくだりを読んで、ぎょっとした。
そうかあ、と思って、少し静かにした。
この本の作り手たちは、
語り手も、まとめ手も、生老病死の交差点にいる。
さまざまに風が吹く。
そこにいるみんなが、ことばになる前のものと、
ことばになった後のものを、丁寧になんとかしている。
そういうのを静かに見る。
病理医ヤンデル/
市原真(いちはら・しん)
1978年生まれ。2003年北海道大学医学部卒。
国立がんセンター中央病院
(現国立がん研究センター中央病院)研修後、
札幌厚生病院病理診断科へ(現、同科主任部長)。
医学博士。病理専門医・研修指導医、
臨床検査管理医、細胞診専門医。
日本病理学会学術評議員。
著書に『どこからが病気なの?』(筑摩書房)
『病理医ヤンデルのおおまじめなひとりごと
~常識をくつがえす“病院・医者・医療”のリアルな話』
(大和書房)など。
・Twitter (@Dr_yandel)。
・ブログ「脳だけが旅をする」
( http://dryandel.blogspot.jp/ )。
