ITOI

頭出し:電波少年的放送局の62時間。
いくつになっても、馬鹿は馬鹿。

臨時更新で、その時その時の会話をお届け!
木曜、しりあがり寿さんとのディープな会話!

第1回

第2回

[しりあがり寿さんと、足裏会話]
<第3回 (自分の死というもの)>


糸井 しりあがりさんの
『真夜中の弥次さん喜多さん』、
いまの『弥次喜多 IN DEEP』って、
すごいマンガですよねぇ・・・。
しり イトイさんが最初の頃に
電話をくれたの、ほんと嬉しかったなぁ。
人気なかったし。
糸井 謙遜で言ってるのかと思ったけど、
あれ、ほんとに人気がなかったんですか?
しり ほんとに人気なかったんです。
好きな人はいてくれたんですけど、
あのイトイさんから電話があったとなれば、
みんなに吹聴しましたし、
編集者もそうかと言ってくれて。
糸井 ぼくは、一も二もなく、
「この馬券は、オトーサン、
 お守りにするから、買っといてくれ」
みたいな気持ちでしたねぇ。
そんな気分で。
ぼく、素敵だなぁと思って
電話をかけることって、
一生のうちに何度かあるんですけれども、
そんなにたくさんは、ないんですよ。

弥次さん喜多さんを見た時に電話をしたのは、
「誰もほめないとは思わないけど、
 本人は、どこまでやっていいんだろう、って
 悩んでいる可能性もなくはない」
って感じたんです。
勢いがつけば、どこまでも遠くにいけそうだし、
どうなるか楽しみだなぁ、という気持ちで
電話したんですよ。
しり いや、ほんとにまさに迷ってました。
「こんなこと、してていいのかなぁ・・・」
って。
でも、イトイさんが電話くれたなら
してていいに決まってる、って思いました。
はじめの本が出た時で。うれしかったぁ・・・。
糸井 しりあがりさんって、
そういう名前じゃなかったら、
まったく違う運命を辿ったでしょうねぇ。
しり そうですね。
糸井 名前って、おおきいですよ。
しり いま、しりあがり寿がなじんじゃって。
昔は笑ってもらえたら嬉しかったんです。
「あ、受けた!」って。
でも、今は「変な名前」って言われると、
ちょっとムッとしちゃいますもん、
なじみすぎて。
糸井 (笑)ハハハ。
すごい進歩ですよ。

知りあいの女の人で
ホームページをやってる人が
「自分の名前を刻んだネームプレートが
 宇宙に打ち上げられてまわっていたら、
 自分がまわっているみたいな気持ちになるだろう」
って書いていたんですよ・・・。
しり なるほどねー。
糸井 「しりあがり寿」って、
ものすごくクッキリと
銅板か何かに刻んであって、
月ロケットかなんかで飛んでいったらどう?
しり それ、イイ。
糸井 名前って、
ものすごいことですよねぇ・・・。
しり まず、自分の名前で
墓をたてられたらいやですもん。
糸井 墓に自分の名前があった時の恐怖って、
すごいだろうねぇ・・・。
だからそこから一皮むけるために
生前にお墓をたてるんだね。
そのストレスを、
「どんと来い」って言って、待つんだね。
しり 待つんだー・・・。そうかも。
糸井 それで、自分の名前をくっきり刻んだあとに
「俺は、死ぬんだ・・・」って思うんだ。
・・・死ぬの、まだ意識しないでしょ?
しり いやぁ、でも怖いですよ死ぬの。
糸井 思うことあります?
しり ありますよ。
糸井 へぇー。
しり 飲みすぎて、どこか痛くなった時に
「あ・・・ガンかも?」と思うし、
やせたね、って言われると「ガンかも?」って。
糸井 死ぬリアリティって、
このあいだはじめて持ったような気がする。
しり なんか、あったんですか?
糸井 何にもない。
寝る時、いつものように
パジャマに着替えて歯を磨いて、
落語を聞こうと思ったその前に、
「あぁー・・・そうかぁ」って。
しり 内容とも関係なく?
糸井 うん。
ちょっと、しりあがりマンガみたいなんですよ。
何の理由づけも連鎖もなくて。
「俺がいなくなる、ということが、
 死ぬ、っていうことなんだなぁ・・・」と。
「無だ」と思ったんですよね。
となりにツマが寝てるじゃないですか。
こいつがいて、俺がいないんだ・・・。
しり 自分だけスポッといなくなる世界。
糸井 その世界が、いつ来るのかという
無な感じが・・・。
他人の死として最初に思ったのは、
オヤジなんですよ。
オヤジが死んだのが12月で、
そのあと正月に帰った時に、
「あ、もう来ないんだ」って思ったの。

酒を飲んでてぶつぶつ言ってるのが
オヤジの姿のはずなのに、
永遠に、それがない。
死って、死の瞬間じゃなくって、
「あと」なんだなぁと思った。

そして、その役割が
自分にもまわってくるんだと思って、
「あ・・・いない・・・んだ」と。
しり こわいですか?
糸井 いや・・・ちょうどいい(笑)。
こわい、って言いたいんだけど、
正直に言うと「そういうことか」って。
残念という気持ちはちょっとあります。
でも、それよりも何よりも、
「何にもないって、すごいなぁ・・・」
と思います。ここでつりあいがとれるんだ、と。

あればあっただけ、ないが強烈になる。
これはもう、しりあがりさんの
『弥次喜多』の世界ですよ。

その1日だけはそういうことを思ったんです。
しり ぼくはいまだにこわいですね。
ケチで欲があるんでしょうね。
あれもやりたい、これもやりたいと思うと・・・。
糸井 そりゃ、ぼくもケチで欲がありますよ。
しり でも、びっくりするほど
確かに何にもない、というか。
今まで40年とか50年生きてきて、
いろんなことを考えてきて、
いろんなことを残したり残さなかったり、
それがスパッとなくなる。
そうなると、何を外に置いたか、といっても、
それも関係ないですよね。
糸井 ない。
誰も自分を待ってない、というのが
すごいですよねぇ。
しり お年寄りの人たちを見ていると、
天国とかあの世を信じられたら
幸せなんだろうなあとは思います。
糸井 そうねー。
「ない」に耐えられないんだろうねぇ。
しり そうそう。
すごいよねぇ、人間の想像力って。
糸井 戦国の世の中で、
みんながひどいめに遭っている時に、
「人間は、生まれ変わらないんだよ」
って言った宗教が、人気出たんですよね。
しり へぇー。
「こんな世の中に生まれ変わりたくない」んだ?
糸井 うん。
「君はもう、二度とこんなところに
 生まれてこなくても、いいんですよ」
と言っただけで宗教がアピールしたっていうことは、
今の人が死にたくないとか
生まれ変わってハッピーに、って言ってるのは、
幸せだからなんでしょうね。

「時代はどんどん悪くなってきている」とか
「混乱の世の中だ」とか言うけど、
生まれかわらなくていいんだ、って言われて
よろこんでいた世の中と比べてみろよ、っていう。
しり (笑)なるほどねー。
そっかぁ。
糸井 悪くなるだのいいだのって、きっと、
贅沢病みたいなところがありますよね。

さっき、トマトがうまいって話を
していたんですけど、
それがなんでうまいかというと、
ギリギリまで水をやらないからなんですよ。
持っているチカラ、取り入れるチカラを
出させるために、水も肥料もあげない。
カラカラの土地に、ものすごい根が張って
吸い上げて、でも水分のほとんどない
水に沈むようなかたいトマトができる。
そこにすごい甘味がのっかるというか。

それとなんか近くって、
取り入れようとするチカラみたいなものを、
俺たちも、取りかえしたいんだろうね。
ほうれんそうなんかも、過栄養で
毒素ができてしまう、というか・・・。

生きていくためのチカラは
自分で持たないと、過栄養で死ぬぞというか。
しり あぁー。
教育みたいなのにおきかえると、
水をやりすぎてもよくないし、
やらなさすぎてもだめだし、その加減ですよね。
糸井 おおむね「やりすぎ」なんですよね(笑)


(※つづきます。数日以内には、残りをお届けだ!)

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2002-05-29-WED

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