東京カリ〜番長・水野仁輔さんが選ぶ カレーの思い出。
#その13

こんにちは。
先日、カレーの夢を見ました。
僕はロンドンのあるインド料理店にいます。
そこは実際に存在する僕の大好きな店。
しかもその店の総料理長の
アトゥールさんは僕が現在、最も尊敬するシェフです。
僕は当然、どきどきしています。
なぜなら夢の中で僕は
彼の料理教室に出席しているからです。
アトゥールさんが出てきて、
何も言わず、料理を始めました。
僕を含めて10人ほどの参加者はメモを片手に
彼の手の動きを見つめ、鍋中を覗き込み、真剣そのもの。
鍋に新しいスパイスやアイテムが加えられるたびに
それがなんなのかを確認してメモを取り、
瓶詰めの中身を加えれば、
その瓶のラベルをなんとか盗み見しようと目を凝らす。
鍋の中はみるみるうちにおいしそうなカレーが
出来上がっていきます。
僕はたまらなくなって、声をかけました。
「あの、写真を撮ってもいいですか?」
「いや、だめだ」
僕はシュンとします。
気を取り直して彼の一挙手一投足をまた追いかけます。
すると、調理場の奥から、
コックコートを来た一人の日本人がふらっと現れて、
アトゥールさんの傍らでサポートを始めました。
よく見ると、それは、剣道部で一緒に汗を流した
中学時代の同級生。
今は地元の大型書店の店長をしている男です。
「おい! なんでお前がそこにいるんだよ!?」
「アトゥールさんが
 『ちょっと手伝ってくれ』って言うからさ」
ま、マジか‥‥。ここで、夢から覚めました。
夢って不思議ですね。


061
のぼ/男性/35歳

今から10数年前。社会人になって間もない頃の話です。
一人暮らししていたアパートの傍に
小さなバーがありました。
そのバーの名物メニューになっている
チキンカレーを初めて食べた時は衝撃的でした。
ルーはサラサラだけど味はしっかり付いていて、
口中に刺激的な香りが広がりました。
今まで食べたことのあるカレーとは
全く違うおいしさでした。
マスターに聞くと、
市販のルーを使わずにスパイスから作っているとのこと。
当時の自分にはスパイスから
カレーを作るという発想が無かったので
どうやったらそんな魔法のようなことができるのか
気になって仕方ありませんでした。
やがてバーの常連になり、マスターとも仲良くなったので
思い切ってカレーの作り方を聞いてみたら、
「やだ」のひと言(笑)。
それでも僕はどうしてもカレーを作ってみたくて、
バーの棚に並ぶスパイスを覚えたり、
図書館でレシピを借りたりして必要なスパイスを購入し、
スパイスカレーにチャレンジしてみました。
初めて作ったスパイスカレーの味は
バーのカレーには遠く及びませんでしたが
はっきりとカレーと呼べる味と香りがして感動的でした。
それからカレー作りがすっかり趣味になり、
10年以上経った今でも毎週のようにカレーを作っています。
残念ながらそのバーは閉店してしまいましたが、
もう一度あのカレーを食べてみたい、
できればレシピを教えて欲しいなぁ、
と時々思ったりします。

BARのスパイスカレー、いいですね。
「魔法のようなこと」という感想にそそられます。
確かにスパイスを使って
カレーを作ったことのない人にとっては、
何をどうしたらカレーになるのか、
不思議で仕方がないと思います。
僕も昔はそうでした。
魔法の謎が解けたときの快感と言ったら‥‥。
マジシャンから種明かしをしてもらったときの
思わずうなってしまうような感じに近いのかもしれません。
レシピを教えてほしいと頼んだ時の
マスターの反応も好きです。
「やだ」って(笑)。
BAR閉店後もどこかで
カレーを作ってるのかもしれませんね。

062
いさな/女性/37歳

小学生の頃、父が亡くなってから
学童保育に入っていました。
毎週土曜日は給食の代わりに学童で先生が作った昼食。
あるとき出たのがバナナ入りカレーで
カレーに溶け出したバナナの匂いが
学童のドアのあたりでプ~~~~ンと匂うほどでした。
さて、いざ「いただきま~す」と食べたものの
このカレーが私の人生で1番マズかったカレーとして
衝撃的に残っています。
バナナの匂いが強烈だったのもあるのですが
カレーなのに(恐らく自分の中の理想の)
カレーだ! というのには
かなりかけ離れていた衝撃。
実は衝撃が強すぎて
どうマズかったのかは覚えていないのです‥‥。
以降バナナ入りカレーのせいなのか
かなりのバナナ嫌いに。
しかし数年前にインドネシアに住んでいる友人と
SNSで話していたら
フルーツ入りカレー食べたことあるよ。
バナナものってたよ。
普通に美味しかったよと。
ずっとカレーとバナナは合わない!
バナナの入っているカレーなぞ一生食べないぞ!
と思っていた私にはこれまた新しい衝撃が‥‥。
じゃあ、あのカレーのマズさはなんだったのだろう。
やっぱりバナナの煮込み過ぎ?! と思いつつ
あの日のおぞましい記憶が蘇り
実験的に作ってみようかとよぎっても、
やっぱりできな~~~い!!!
しかも3年位通っていた学童なのに
出された食事で覚えているのが
あの強烈バナナカレーだけなんですよね。
とほほ。

カレーにバナナを入れたこと、ありますよ。
確かにあまり感心できない味わいになりました。
煮込みすぎかも、というのは、鋭い指摘だと思います。
フルーツはカレーに甘味や酸味を適度に加えるのに
有効なアイテムですが、なぜかバナナの風味って
あまりカレーには合わないんですよね。
煮込みすぎるとその合わない風味が
じゃんじゃんカレーソースに出てしまう。
だからうまくいかないんだと思います。
それで思い出したんですが、スイスを旅したときに
何軒かのレストランでカレーのメニューを発見し、
すべて食べてみました。
驚いたことにどの店のカレーもライスの周囲に
フルーツがどっさりと盛られた上に
クリーミーなカレーソースがかかっている。
ある店では、縦半分に切ったバナナが
ライスを挟むように手前と奥に配置されてました。
ありえない‥‥、と思ったものの、
バナナを煮込んだカレーよりは
違和感なく食べられた記憶があります。
それにしてもカレーにフルーツを使うときは
気を付けたほうがいいですね。


063
とほほのママ/女性/38歳

「こんなマズイ物、食べたことがない!」
今は夫となった当時の彼が驚愕したカレー。
母仕込みのカレーはシチュールーとカレーの中辛を
半分ずつ入れたものでした。
当時は大好きだったはずだけど、その時以来
「シチュールー入りカレー」は作らなくなって、
味もさっぱり忘れてしまいました。
「ママのカレー、美味しくないんだもん‥‥」
数年前にはまだ3歳だった娘に言われた言葉。
プーさんのカレー、星の王子様のカレー、
子供向けのカレールーで作った甘口カレー‥‥
どれも娘の口には合わず、
小鍋いっぱいのカレーは減らないまま。
夫の作るカレーは残さず食べるのに‥‥
よくよく聞いたら「あの甘いのが嫌」。
小学校に上がる前から、我が家のカレーは中辛か、
玉ねぎいっぱいの辛口(かなり甘くなるから)
カレー、苦いかしょっぱいか‥‥です。

なかなか頼もしい娘さんですね!
将来、東京カリ~番長に入ってもらおうかな(笑)。
期待ができます。
僕の父親は、「料理に子供用なんてものは必要ない!」
という考え方の持ち主で、僕は小さいころから
フキノトウ、焼きサンマの内臓や
ブルーチーズなどを食べさせられてました。
まずくて吐いたこともあります。
それが父親なりの食育だったんだと今は思ってます。
もちろん、カレーも例外ではありませんでした。
子供用に甘いカレーを作ることは我が家では許されず、
「甘ったるいカレーなんて食えるか!」ということで、
僕は小学校低学年のころからジャワカレーの中辛でした。
お子さんのいらっしゃる方は想像できるかもしれませんが、
ジャワカレーの中辛は、小学生には「無理!」です‥‥。
おかげ(?)で僕は、東京カリ~番長になりました‥‥。


064
kae

私が小学生だった頃の話です。両親共働きのため、
一つ上の兄と早めの夕食を週に何回かとっていました。
母親がカレーを作っておいてくれたので、
火にかけてかきまぜながら温めていたところ、
カレーの中から葉っぱを1枚発見。
窓が少し開いていたので、
「多分、風が吹いてここから入ってきたんだよ!」
と二人で仮説をたて‥‥。
葉っぱを取り出して洗剤で洗い、仕事から帰ってきた母に
「カレーの中に葉っぱが入ってたよ!」と見せたところ、
母は笑いながら「それはローリエっていうのよ‥‥」。
その時初めてローリエというものを知りました。
美味しくなるようにと、せっかく母が入れてくれたのに、
と申し訳なく思います。
今は母の作ってくれるカレーに
ローリエは入っていませんが、
辛口で、愛情たっぷりのカレーの味は格別です。

カレーの鍋の中にローリエを見つけて、
「キッチンの窓から風に乗って入ったんじゃないか」
と仮説を立てるなんて、なんて素敵な感性なんでしょう!
うらやましいです!
僕もそんな幼少期を過ごしたかった。
「じゃあ、庭にローリエの木でも植えましょうか」
なんてなったら、もう、憧れてしまいます。
老舗のカレー店の取材をしていると本当によく聞くのが、
カレーに入っているローリエを発見したお客さんに、
「なんでゴミが入ってるんだ!」と怒られたという話。
本当によく聞くんです。
そのくらいスパイスに対する知識がなかった時代だった
ということですが、
「ゴミだ!」なんて、頭ごなしに苦情を言っていた
当時のお客さんたちに聞かせてあげたいエピソードです。

065
くみこ/女性/29歳

東京カリ~番長・水野仁輔さん
カレーの思い出、楽しく読んでいます。
今住んでいるスイスにも
インドカレー屋はあるらしいけれど、
行った事はありません。
スイス人はカレー食べるのかなあ。
みなさんの投稿を読んでいて思い出した
私のカレーの思い出。
小学校4年頃に、学校行事で「林間学校」がありました。
多分ハイキングやキャンプファイヤー等をした筈ですが、
そこらへん覚えていません。
夕食に生徒全員で屋外でカレーを作ったんですけれど
(きっとご飯は飯ごう炊飯だった筈)
私の班のカレー、みんなでがんばったのに
「ばしゃばしゃ」な
みずみずしいカレーになってしまったんです。
しかも誰かが水カレーを手にしたまま私とぶつかり、
新品だったTシャツが一面カレー色に。
泣かなかったと思いますが、相当ショックでした。
いや泣いたかもしれません。
あそこまで薄い水っぽいカレーだと、
もうシミになるというより
Tシャツが染まるんですね。
同じ班だった私にあのカレーを掛けた誰かは、
覚えてないんだろうなあ。

なんと! スイスで食べたカレーの話を書いていたら、
スイス在住の方からのカレーの思い出が来てました。
ぜひ、あのフルーツカレーの正体について
調査してください!
それはそうと、Tシャツのカレー染め。
いいじゃないですか~。
ターメリックの黄色は洗濯しても簡単には消えませんから、
キレイな薄黄色になったことでしょうね。
あ、でもカレールウで作るカレーだったら、
黄色というより茶色に染まるのかな。
だとしたら、ちょっといやかも‥‥。
ぶつかってカレーがTシャツにかかってしまうのは、
百歩譲ってわざとじゃないから諦めがつくとして、
やっぱりそのカレーがおいしくなかったってことが
ショックの原因なんでしょうね。
せめておいしくできてれば
泣かずにすんだのかもしれません。
カレーをおいしく作るって、
予想以上に大事なことなのかも。

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いろんな思い出をありがとうございました。
では、また次回。
みなさんの“カレーの思い出”をお待ちしています!

2013-10-04-FRI
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