糸井さんみたいに
共同作業でカレー作る人って、
ぼく、ほとんど聞いたことないです。
小学校時代の調理実習やキャンプで、
みんなでつくったことはあるけれど、
それを終えると、
もうその後の人生において、
カレーを共同作業で作る人は
ほとんどいないと思いますよ。
そうですね、いないですね。
なんだか、自分が
不思議なことしてるみたい(笑)。
すごいなと思ってるんですよ。
── 糸井さんは、そこに至るまで、
インスタントカレールーを
使っていいんだっていうまでの、
「糸井カレー前史」がありましたよね。
あった!
── 水野さんたちが
糸井さんの誕生日のとき来てくださって
インスタントカレールーを使って
箱のレシピどおりにつくって
食べ比べをしようという
社内イベントをしたんですよね。
そのときに「インスタントカレールーって
すばらしい出来なんだ」ということを
再発見した、というようなことじゃ
なかったでしたっけ。
そうでしたね。糸井さんはそれまで長らく、
何かひとりで研究めいたことをされてた。
そうだ、それまではひとりカレーだった。
結構長かったです。
ただ、インスタントカレールーを使うようになり、
加えるスパイスを調合するようになって、
レシピが安定してくると、
ぼくがつくっているのを見て、
「ここは私ができるんじゃない?」って、
かみさんが発見したんでしょうね。
ああ、なるほど、なるほど。
そしてかみさんはいつも
最後の味付けをぼくに任せるんです。
「だいたいいいと思うんだけど、
 味をみてね」って。
で、テレビ見てるぼくが呼ばれて、
「いいんじゃない?」とか言うみたいな。
へぇー!
それ、お互いにいいですね!

いいです、いいです。
お互い、味付けがもうちょっとこうだといいな、
なんて思いながらいるよりもいいですよ。
納得できて。
ぼくらもカリ~番長のときは、
そこだけ、糸井さんと同じ作業をします。
ぼくらはメンバー全員がそれぞれ自分で、
他の人に触らせないでカレーを作るんだけれども、
最後の味見だけ、
リーダーにお願いするんですよ。
へぇー。
「リーダー、ちょっと来て!」って。
カリ~番長の塩味は
リーダーをスタンダードにすると決めてる。
面白いねー。
でもそれ以外は共同作業はしないです。
糸井さん、共同作業ができるってことは、
カレーを作る上で、
「ここだけは譲れない」っていう部分がない、
っていうことですか?

譲れない部分は、
自分でやってるとこだけです。
ぼくは、料理をそんなにしないんですけど、
そんなぼくが、自分でやると決めてるものが
幾つかあって。
それはどうしても違うやり方なんですよ。
奥さんと。
なるほど、なるほど。
「そうじゃないんだけどなぁ」
っていうことがある。
それは、自分のやり方じゃないと
気持ち悪いっていうぐらいのレベルですか、
それとも、ぼくのこのやり方の方が
絶対においしくなるはずなのに、
違うことやってるんだよね、
っていう感じなんですか。
そこはもうどっちでもいいですね。
ちがうやり方でも、
「あ、そっちなんだ」って思う。
そうじゃないと、人のカレーを
おいしいって言えなくなるもの。
ああ、そうですね!
そうですよね。
「それもいいんだよね」っていう部分。
ただ、スパイスはやっぱり、
おおもとは水野さんに教わったことでね。
スパイスからカレーパウダーを
つくっておくんですよ。
ぼく、スパイスを、業者が使うような
専門店で買ってあるんだけど、
それを調合してグラインダーにかけて、
すり鉢でコリコリやって、瓶に詰めるんです。
京都に行くときは、東京で作って持ってく。
インスタントカレールーに加えて、
それをたっぷり入れる。
水野さんから教わったことはいろいろあって、
インスタントカレールーを入れるときは、
鍋をいったん火からおろして、
ちょっと冷めたところで入れるとか、
もう1回煮込むときに、
作ってあるスパイスを
ギィ(ghee:すましバター)で
炒めて入れるとか。
いいですねー。
スパイスを炒めるのは、1分以内ですよね。
はい。
長く加熱すると焦げるから。
スパイスって、炒めてるときには
匂わないんですよ、あんまり。
じゃーってやってるときに
さぞかしと思うんだけど、
自分には匂わないんだ。
で、遠くにいる人は匂ってるんだよ。
へぇーっ!
「いい匂いがするね」
って言われたときには、ぼくは
「えっ、ほんと?」って。
で、その、炒めたスパイスを、
油ごと鍋に入れて、
その上にカレーの汁を入れて、
こうして‥‥。

はい、はい。
で、ちょっと煮込んで。
楽しいですよね。
今、しゃべってても、うーん、
‥‥楽しいっ!
── その実演のようすは、
あらためて見せてもらう予定です。
いいですね。
1回、持ってきたよね、震災の後に。
── あっ、みんなで食べたましたね。
すっごくおいしかったと評判でした。
へぇ。
でもそのレシピって、
水野さんの言う通りにしようと思いつつ、
自分流に間違って覚えたものなんですよ。
そうでしたか。
一時期、はまぐりの出汁を入れるとかって
おっしゃってたのは、
もう通り越したんですか?
そういうこと、さんざん、したねぇ。
でも「隠し味にしたものは隠れっぱなし」
っていうのがカレーなんですよ。
あははは、そうですよね(笑)。
そう。でもね、
「隠し味は隠す」っていうのって、
いい作り方なんですよ。
そう(笑)?
いい作り方です。
ぼく、いっつも言うんです。
「隠し味は、隠してください」って。
ああー(笑)!
「これ、醤油入れたね?」
って言われたら失敗したと思わないといけない。
確かにそうですよね。
入れたのと入れてないのを食べ比べたら、
絶対、分かるはずですけれどね。
そうそう、比べてみればうまいんだけど、
何入れたか分かんないっていうのが、
隠し味たるゆえんです。
奥ゆきが出ますよね。
楽しいなあ。ああ、ぼく、今日の
このくらいのリズム、楽しい(笑)!

なんだかスパイスを炒めるにおいが
してきそうではありませんか。幻匂?
(そんなことばないのかもしれない。)
もうカレー作った人もいそうですね。
次回更新は、明日です!(武井)
2012-01-02-MON
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