HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN

カッパとウサギの コーヒーさがし
「カッパ」の愛称で親しまれている、 イラストレーターの福田利之さん。 「ウサギ」飼育歴8年の「ほぼ日」乗組員、山下。 このふたりには、おんなじ趣味がありました。 それは、コーヒー。 素人男ふたりがコーヒーにまつわるあれこれを 語り合ったり、さがしてみたり、いたします。 のんびりとした不定期更新。 どうぞゆったり、お読みください。
福田利之さんプロフィール
山下プロフィール

第33回
「1年前の気仙沼」編
大島ビーチ・サンドギャラリー。
「アンカーコーヒー内湾店」をあとにした
カッパとウサギはサユミちゃんの運転で、
「大島」を目指しています。
気仙沼湾内に位置する「大島」は、
東北最大級の有人離島。
うつくしい自然に囲まれたこの島には、
3000人ほどの人々が暮らしています。

快晴。
海からの風も心地よく。
しばらくドライブをたのしんだところで、
大きな橋が見えてきました。
山下 あれだ!
福田さん、あれですよ!
福田 白い!
山下 あれが「気仙沼大島大橋」です!
福田 あたらしい!
山下 先月できたばかりですからね。
さあ、渡りますよーー。
福田 ひゃっほーーーい!


(橋を渡ったところの駐車場に車を停め、
このすばらしい橋をすこし歩いてみることに。
車道の横に歩道もついているので、
徒歩でも渡れる橋なのです)
山下 福田さん、強風注意だそうですよ。
似顔絵が飛ばされないように気をつけます。
福田 なんで持ってきたんですか。
山下 なんとなく、今回のシンボルのような気がして。
身につけておきたい気持ちがあります。
福田 そうですか‥‥。
山下 渡りましょう!
山下 気持ちいいですねぇ(歩きながら)。
福田 眺めが豊かです(歩きながら)。
山下 この橋ができたおかげで、
船に乗らなくても
車で大島へいけるようになったそうです。
福田 島へ渡る方法が船だけだったんですね。
山下 ええ(歩きながら)。
福田 風光明媚だなぁ(歩きながら)。
山下 ほんとうに(歩きながら)。
福田 (歩く)
山下 (歩く)
福田 あの、山下さん(歩きながら)。
山下 なんですか?(歩きながら)
福田 このまま歩いて渡るんですか?(歩きながら)
山下 そうですね、せっかくですから(歩きながら)。
福田 向こうまで歩いて、戻ってくる(歩きながら)。
山下 そういうことになりますね(歩きながら)。
福田 この橋は
どのくらいの長さなんだろう(歩きながら)。
山下 297メートルだそうです(歩きながら)。
福田 (立ち止まる)
山下 (立ち止まる)
アーチ橋としては東日本最大だとか。
福田 ‥‥引き返しましょうか。
山下 そうしましょう。

(半分も渡らずに引き返しました。
スタート地点で記念写真をいちまい)


(車に戻り、大島のビーチを目指します。
そう、目的地はビーチ。
砂浜でコーヒーを淹れて飲むのが、このときの計画です。
橋を歩いて渡っていたら時間がなくなるところでした。
ビーチへ、ゴー。
サユミちゃんのなめらかな安全運転で、
ぼくらはほどなく目的地に到着!)
山下 砂浜は、もう目の前です。
福田 潮の香りがー。
山下 きましたきました、ビーチです!
福田 いいですねー、5月の海。
山下 はあ〜〜〜〜(深呼吸)。
福田 ふわあ〜〜〜(深呼吸)。
山下 夏になったら、
海水浴の人々でにぎわうんでしょうねぇ。
福田 いまは誰もいません。
山下 ねえ、貸し切りですよ(笑)。
福田 きもちいいなぁ‥‥。
‥‥ん? なにやってるんですか?
山下 ビーチについたら、
やってみようと考えてたんです。
福田 似顔絵を‥‥?
山下 福田さんに描いてもらった似顔絵作品を、
こうやってですね、
砂でつくった額縁に‥‥。
福田 砂の額縁‥‥。
山下 よし、と。
できました。
福田 これは‥‥。
山下 「展示」ですね。
福田 展示。
山下 サユミちゃんの似顔絵作品も展示しましょう。
山下 よし、と(ぱんぱんと手の砂を払う)。
できた。
福田 くだらないですねぇ(笑)。
山下 「大島ビーチ・サンドギャラリー」(笑)。
山下 さて、ギャラリーもできたことだし、
コーヒーを飲みますか。
福田 飲みましょう。
どこで淹れます?
山下 うーーんとねぇ(見渡して)、
あ、そこ、そこにしましょう。
福田 発泡スチロールのゴミがあるところ?
山下 そうです。
ぼくにいい考えがあります。
山下 この発泡スチロールを使って、砂を掘る。
ふんっ、ふんっ、ふんっ!
福田 おお〜、山下さん、アクティブ〜。
山下 ふんっ、ふんっ、ふんっ!
‥‥このくらいでいいでしょう。
ここの砂地が斜めになっているので、
そのままこの発泡スチロールを置けば‥‥
じゃ〜ん。
福田 テーブルだ!
山下 このテーブルで、コーヒーを淹れましょう。
福田 淹れましょう。


(外でコーヒーを淹れる作業についてはこのふたり、
なかなか手慣れたものがあります。
福田さんがゴリゴリと豆を挽き、
アンカーコーヒーでポットに入れてもらったお湯を
山下がぽたぽたと注いでいきました)
山下 いただきます。
福田 いただきます。
山下 ‥‥おいしい。
福田 おいしいです。
山下 その場の空気みたいなものをトッピングにして
いろんな場所でコーヒーをいただくという
ぼくらのこの遊びも久々です。
福田 やっぱり、いいものですね。
山下 いい歳をした男たちが
なにをやっているのだろうという気が
じゃっかんしますけれど。
福田 そうですね。
このくらいの年齢の男は
こういうことはしないんだと、
若いころには思ってました。
山下 やってますねぇ。
福田 ぜんぜんやってます。
山下 ずっとこんな感じなんでしょうね‥‥。
山下 さて(立ち上がる)、
ぼちぼち行きましょうか。
福田 ほい(立ち上がる)、行きましょう。
山下 でも、あとちょっとだけビーチを歩きますか。
福田 いいですね。
山下 (波打ち際を歩く)
福田 (波打ち際を歩く)‥‥あれ?
山下 なにか見つけました?
福田 これはもしかして‥‥。
山下 ああ、これはあれですよ‥‥。
福田 ホヤ。
山下 ホヤだ。
福田 どうやら、子どものホヤです。
山下 子どものホヤ‥‥。
‥‥あ。
つまりこれは?
ふたり ホヤぼーやだ!(笑)


(西に傾きはじめた5月の太陽が、
男ふたりを生ぬるく照らしています。
ふたりの男はホヤぼーやを海に返し、
コーヒーの道具を片付け、
「大島ビーチ・サンドギャラリー」の作品を撤収しました)


(この日はここまで。
一泊したら、朝からまた別な場所でコーヒーを飲みます。
つづきまーす)

2020-07-04-SAT
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