シルク・ドゥ・ソレイユからの招待状4  ZED、姿をあらわす。 〜フランソワ・ジラール、  リン・トランブレーへの取材〜

ただ考える時間。
糸井 「ZED」の演出の際には、
何か核になるイメージのようなものが
先にあったのでしょうか。
ジラール 「ZED」をご覧になっていただくと
おわかりになると思いますが、
とてもドラマチックなショーに
仕上がっていると思います。
しかし、そこに物語性を持たせるというような、
そういうものではありません。
ストーリーがメインなのではなく、
キャラクターがメインのショーをしたい、
そんなアイデアが、まずは自分の中に
浮かんできたんです。
糸井 なるほど。
ジラール 頭にふわっと浮かんでくるような
いろいろなインスピレーションを
まずは大切にした上で、
シチュエーションを考えます。
具体的に言うと、
どういうキャラクターが
どういうタイミングで
どういうポーズで出てくるのか、です。
この「ZED」のステージでは、
そういうことがとても重要になってくると
私は思いました。
それを考え出す上で、イメージしたのは、
タロットカードです。
タロットカードは
人生のいろんな展開や場面を
実に見事に表現しているものです。
それは、人生というもののシンボルを表し、
登場するキャラクターを示し、
システムを表す、ということでも
あると思います。
糸井 では、「ZED」の
ショーの核になっているもののひとつは
タロットカードなんですね。
ジラール そうです。
核、種、そういうものを
タロットカードから得ましたが、
ただ、タロット自体を
そのまま出すということではなくて、
ショーをまとめる上で
タロットの要素を
ひとつのヴィジョンや方向性として
使おうと思った、ということです。
なにしろ、タロット=人生そのもの、ですから
いろんなところで
隠れたインスピレーションがあります。
ですから「ZED」にも、
タロットの要素がかなり隠れて登場してきます。
ショーを通して、そうですね‥‥
1000ぐらいの要素は、タロットから来ましたよ、
ということは言えると思います。
糸井 1000くらい!
ジラール 1000くらいです(笑)。
糸井 タロットのイメージをつかんでからは、
順調に進んだんですか?
ジラール いえいえ、演出の段階としては
まだまだです。
それからは、シアターの
建設のこともありますので、
舞台装置、大道具、小道具について考えることが
とても重要になってきました。
「ZED」の舞台をご覧いただくと、
たいへん重い材質をセットに使っていることが
おわかりになると思います。
重量が大きい、ということは、つまり
エンジニアの技術的な計算が
とても重要になってきます。
ですから、私が演出なり、
ショー自体を考える前から
セットはどうするかという話がありまして(笑)。
糸井 「そうするんだったら、こっちはどうする」
という問題が、必ずついてまわるんですね。
しかも、公演に合わせて
シアターを建設するわけですから、
先回りして考えなくてはいけない。
ジラール そうです。ですから、セットを考えて、
それからショーの細かい演出表現の部分を
固めていく、という順番を
取ることもありました。
はじめのうちの3年ほどは、
シアター全体のことについて考える段階に
費やした部分が大きいです。
頭の中にあるアイデアを
設計士やデザイナーなど、
いろんな方を交えた会議で発表し、
どうやって実現するかを話し合い、
設計図を引いていきました。
映画とちがったのは、
劇場内に収まるような
限られたプロポーションのセットを
組まなくてはいけませんからね。
それから、パフォーマーの方々に
ショーを理解してもらうことも大切です。
まぁ、これはシルク・ドゥ・ソレイユの、
いつものプロセスだと思うんですけれども、
映画と比較すると、
さまざまなことを「ただ考える段階」というのは
かなり長い時間がかかると思います。

(つづきます!)
シルク・ドゥ・ソレイユ取材メモ

どの席で、見ますか? つづき。

トライアウト公演で
「レギュラー」の席に座り、
「ZED」を味わったわたくしは、
シルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京の
座席のうち、どの席がおすすめなのかを、
オリエンタルランドの中村みふゆさんに
伺ってみました。

↑こちら、中村さんです。
「向こうから走ってくる中村さん」
しかも「眼帯をしている中村さん」
の写真しかなくてすみません。
その中村さんによると‥‥

「おすすめの座席、ですか?
 シアターはすり鉢状の円形になっているので、
 どこで観ていただいても
 ご満足いただけるとは思いますし、
 また、ごらんになりたいポイントによっても
 “よい席”という解釈は
 ちがってきますから‥‥」

やっぱり近くと遠くでは、
それぞれ味わい方がちがい、
どちらがお好みかは
その方、そのとき、それぞれなのだそうです。
やっぱり‥‥何度も見たくなっちゃいますね。

「でも、こういう場合はここがおすすめかも、
 と言うことは、できますよ」

では教えてください‥‥というようにして、
中村さんと「ほぼ日」とで話し合ううち、
シチュエーションに合わせたおすすめシートを
「ほぼ日」をお読みのみなさんに
ご用意していくことができればいいなぁ、
ということになりました。
「ほぼ日特別シート」のようなものを、
エリアを変えて何度か、です。

これから準備をしますので、
ちょっとだけお時間をいただきますが、
まず第1回めとしては、
「シルク・ドゥ・ソレイユを
 はじめて観るなら、
 ここがおすすめです!」
というお席を、ご用意したいと
思っております。つづく!
(スガノ)
シルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京の
トライアウト公演は
こちらのサイト
チケットが販売されています。

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2008-09-16-TUE


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