その4 それぞれの色に 込めた思い。

── 今回、BEGINNINGのタオルを
染めてくださったんですが、
それぞれの色のこと、
詳しくお聞きしてもいいですか。
小川 もちろんです。
まずログウッドですね。
ログウッドじゃないと、
こういう深いネイビーや、
濃いブラックは出ないんです。
菱川 ピアノの鍵盤の黒の色を染めるのもログウッドです。
ナポレオンのフロックコートも、
ネルソン提督のネルソンコートも、
ログウッドで染めていた。
それだけじゃないんですよ、
ギターのギブソンの赤い色もログウッド。
昔、養老孟司さんが、脳の中の細胞を
顕微鏡で識別判断するのに、
ログウッドを使っていたんです。
── へぇー!
そんなふうにいろんな色が
出せるんですね。
小川 はい。ログウッドは、ある金属と反応させると
かわいいピンクが出たり、黒も出せるし、
いろんな色を持ってるんです。
全ての光を持ってるから、
光を集めてくれるものっていうことで、
古来、お守りとされていたと言われています。
小川 椿も面白いんですよ。
常緑樹で、冬にも緑を失わず葉を落とさない。
強い力を持つ神聖な木と言われます。
菱川 茶会で初釜にも使われますよね。
江戸時代の文献にあるんですが
椿の花は身代わり不動。
主人の身代わりになって悪運を取るんです。
文献によれば、
何か大事な局面にぶつかったとき、
会いたくない人と会わなければいけないときは、
椿の花や葉っぱをしのばせておく。
すると、いやなことの身代わりになってくれる。
そんなふうに書かれているんですよ。
昔の武家屋敷の中ですと、
いわゆる鬼門の方角に植えていた。
その家の人たちに変なことがあると、
身代わりになって、花がポロリと落ちる。
そんなふうに考えられていました。
椿の花をお正月に植えるっていうのは、
先祖をきちんと敬い、
そのすべての煩悩を椿の花が吸い取ってくれるという
言い伝えによるものなんだそうです。
そういういわれから考えれば、
この、椿で染めたハンドタオルをバッグに入れておくと、
やくよけになる、とも言えますよね。
── へえ! 植物のものがたり、
おもしろいです。
小川 そして、カモミール。
香りが不安を取り除き、勇気づける花ですよね。
薬草としても使われてきました。
菱川 「森のお医者さん」とも言われるんですよ。
というのは、ほかの植物に
虫がつくのを防いでくれるんです。
── へえ!
菱川 逆に言うとね、カモミールは虫を惹きつける。
「虫がつく」って意味はわかりますよね?
── おとうさんが娘を心配して
「へんな虫がつくんじゃないか」って、
その、虫ですか?
菱川 そう!(笑)
だから、逆説的に、
カモミールは、モテるおまじない。
モテたい人は、カモミールがいいですね。
これ「ローマンカモマイル」なんですが、
花がリンゴの匂いなんですよ。
リンゴは、アダムとイヴじゃないけど、
恋を取り持ってくれる果実ですよね。
── ステキですね。
なんだか嬉しくなってきました(笑)。
小川 そして、クローブです。
クローブの花蕾は、
悪魔も嫌がるって言われてるくらい
香りが強いんですよね。
ですから「お守り」の意味がある。
消毒殺菌作用が強いから
虫歯にも口臭にも効くスパイスですよ。
菱川 もちろんタオルに科学的に証明できる
薬効はありませんが、
免疫を高くするおまじない、
というふうにとらえたら、いいでしょうね。
今回は、そんなふうなことを考えに入れて、
「この植物で染めよう」と決めたんですよ。
── 「BEGINNING」のテーマにあわせて、
お守りだとか、HAPPYになるようにと
選んでくださったんですものね。
とてもおもしろいお話でした。
どうもありがとうございました!

 

2012-08-29-WED


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