キャスティングの よろこびを。  映画と演劇、現場のお話。
第8回 キャスティングのよろこびを。

糸井 じゃあ最後に、
この先にわくわくするようなことって
なにかありますでしょうか?
杉野さんはいかがでしょう。
杉野 そうですね‥‥
わくわくとは違うかもしれませんが、
いわゆる映画監督のかた、
映画作家のかたが
ご自分のオリジナルをお書きになって、
それのキャスティングをなるべく多く
させていただきたいなと思います。
いまは原作物が多いじゃないですか。
マンガですとか、小説とか。
そうじゃないもので、
オリジナルの脚本が増えれば、
もっとたのしくなるかもしれないですね。
糸井 杉野さん自身が映画のプランを考える仕事が
この先に足される可能性は?
北村 ねえ、プロデューサーをされればいいのに。

杉野 そうですね‥‥
けっこう情報はいただけるんですよ。
主演級の役者さんが
突然2カ月あいちゃいました、
っていうような話を聞くと、
非常にもったいないと思うわけです。
北村 うん、それはもったいない。
杉野 その人が出てくれれば1本企画が通る、
それくらいの役者さんがお休みになっちゃう。
そんなとき、ぼくのところに
監督と企画と脚本のストックがあれば‥‥。
糸井 なるほど。
そうなれば、あり得ることなんですね。
杉野 ええ。
ぼくがプロデューサーになるかどうかは別にして、
もしそれが実現すれば、
かなりわくわくする
仕事ができるんじゃないかと思います。
糸井 それを1回やったら、
きっとたまんないでしょうね。
杉野 はい(笑)。
糸井 なるほど。
じゃあ北村さんはどうでしょう。
この先でおもしろそうなことは、なにか。
北村 おもしろそうなのは、
もう、ぜんぶおもしろいですよ。
なにもかもわくわくする。
糸井 すばらしい(笑)、
よろしゅうござんすなぁ。
じゃあ、質問を変えましょう。
「わたしに、あとこれがあれば」
と思うものはなにかありますか。

北村 それは足りないものってことですね‥‥。
うーん、やっぱり、
もうちょっと、力ですかね。
糸井 力。
力っていうのは?
北村 やりたい劇場で、やりたい役者で、
やりたい本で公演を打つ。
いや、それが今、
できてないわけじゃないんですよ。
もっと、何ていうんだろう、
「自分の範疇を超えたものをやりたい」
って思ったときに、
後ろ盾になる力みたいなものが、
さらについてきたらいいのに、とは思いますね。
糸井 それは宝くじで4億円くらい当たると
急に実現することですか。
北村 いや、人間関係ですから、この業界。
お金だけで、力は出せない。
やっぱり「人」ですよね。
積み上げたり広げたりしてきた人間関係が
ぜんぶ功を奏すときがきたら、
自分が思っている枠を超えた
すごい企画ができるんじゃないかっていう‥‥。
とてもアバウトな期待なんです。
今は想像もつかないことをやってみたいですよね。
糸井 「あ、わたし、飛べた」
みたいなことですね。
北村 ふふふふ。
そうですね、「わたし、飛べた」。
糸井 なるほどなぁ。
3年先まで決まっている仕事をしながら
そういうことを思ってるっていうのは、
リアルと妄想が入り混じってて、
おもしろいものですねえ。
北村 そうですよね。
現実と妄想のはざまで生きています(笑)。
糸井 ほかになにか、
「ほぼ日」の読者に伝えることがあれば。
どうでしょう、杉野さん。
杉野 そうですね‥‥やっぱり一本でも多く、
劇場に足を運んで
映画を観ていただけたらうれしいです。

糸井 それは支えるものですからね。
うん、観に行きましょう。
行きますよ。
北村さんのほうは、なにか。
北村 舞台の上に立つ役者さんは拍手もらって、
それはすごい満足感がありますが、
裏は裏でのよろこびっていうのが
たっぷりあることを知ってほしいですね。
だから、役者になろうとだけ思わないで、
裏方になろうっていう人も大勢入ってきてほしい。
糸井 なかなか入ってこないんですか。
北村 やっぱり少ないですよね。
役者志望は腐るほどいるのにねー。
糸井 裏方おもしろいぞ、と。
北村 おもしろいおもしろい。
ねえ、杉野さん。
杉野 そうですね(笑)。
糸井 そのよろこびを
知ってもらいたいですよね。
北村 そうそう、よろしくお願いします。
糸井 ぼくからも、よろしくお願いします(笑)。

いや、おもしろかったです。
ほんとはね、
「いろんな会社の中にも、
 キャスティングがいっぱいある」
っていう方向にもっとお話を
広げていくつもりだったんですけど、
それをやってもしょうがないと思ったんで、
映画と演劇の話で、ワンセットつくりました。
きょうのところは、
ここまでにいたしましょうか。
北村 こんな話でよろしゅうございました?
糸井 おもしろいですよ。
だって、この話を訊ける場所ってどこにありますか。
誰も訊いてないんですよ、
こんな話、たぶん。
北村 そうねぇ。
杉野 はじめて話したと思います。
糸井 舞台のキャスティングは3年前に決まる、
っていうだけで、もう知らないんですもん。
杉野 でしょうね、
知らないと思います。
糸井 出演を断られたときに、
このふたりはこんなに嫌がるんだとか、
そんなの誰も知らないんですよ。
一同 (笑)

糸井 いやあ、ありがとうございました。
杉野 ありがとうございました。
北村 ありがとうございました。
おつかれさまでした。
  (終わります。
 最後までお読みいただき、
 ありがとうございました!)
2010-03-19-FRI

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