緑のなかに出かけようよ。
先輩、後輩、そしてなかよし。

たのしい仲間といっしょに一泊だけ、
緑あるところに出かけてみましょう。
おなじものを食べ、火をたいて、
終わりのない夜をむかえます。

ふだんとちがうおしゃべりが花開き、
いつの日か、
「そういや、あんなこともしたよね」と思い出す
時間になるにちがいありません。
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第11回 ほかにないんだよ。
写真
赤瀬川(原平)さんの、
あの1,000円札を作品にしたやつ、
あれだって、ふつうは思いついてもやらないよね。
みうら
千円札裁判にもなっちゃったけど、
誰もがそんなに叱られるとは
思ってないじゃないですか。
それでも「おもしろい」のギリギリでやる発想、
それはもう、すごいと思います。
糸井
赤瀬川さんの存在は、こういうくだらないこと──
まぁ本当はくだらなくはないんだけど──の、
おおもとになっているんだよな。
赤瀬川さんの本で、
『千利休 無言の前衛』っていうの、あったよね。
糸井
あれはおもしろかった。
あれは『利休』の映画の脚本を担当したあとに
書いたんだけど、
あのなかで赤瀬川さんは、
自分が歴史を知らないって書いてた。
「歴史を知らないんですよ」と言うと、
みんなから「いえいえ」と言われちゃうんだ。
それは「自分は泳げないんで」と言ってるのに
「いえいえ」と言われるみたいだ、と。
赤瀬川さんは当時、泳げなかったの。
糸井
あれはショック強かったなぁ、
「何、その視点!」と思ったね。
おとといくらいにたまたま本棚で
あの本の背中が見えて、
「また読もうかなぁ」なんて思ったけど、
寄り道してる場合じゃないかと思い直して
やめときました(笑)。
写真
赤瀬川さんの本は、取っといて、
あとでまた読むとおもしろいね。
糸井
そうだろうね。
やっぱり芸術家は、根性座ってるんだ。
あるとき「立体櫻画報」という展覧会を
京都でやったの。
赤瀬川さんとぼくらは、
京都大学の学生寮かなんかに泊めてもらった。
風呂は銭湯に行ったのね。
風呂から戻ってきて、池のある中庭あたりを
ぶらぶら歩いてるとき、構内放送で
「本日は赤瀬川原平先生ご一行がいらしてます。
これから赤瀬川先生の歓迎会をはじめますので、
みなさん、中庭に集まってください」
なんて言う。
するとガーッと学生が集まったわけよ。
それで「なんだなんだ」というまに、
赤瀬川さんは抱えあげられて、
池にザボーンって入れられたんだ。
糸井
えぇ、そうなの? 
そんなことがあったらふつうはさ、
「なんだよ!」となるでしょう。
だけど、赤瀬川さんは泳いで、
泳げないのに、泳いで(笑)。
写真
みうら
泳げないのに(笑)。
やっとこさ水からあがってきたんだ。
あとで俺は赤瀬川さんに
「あの、泳いだのはよかったね」と言った。
すると赤瀬川さんは
「それはしょうがないじゃない、あんなになったら」
って(笑)。
みうら
わははは、なるほど。
赤瀬川さんは「しょうがない」と思ってるんだな、と
俺は妙に納得したんだよ。
本当は「なんでこんなことされるんだ!」と、
びっくりしたはずなんだ。
でもおもしろく、泳ぎまでして。
みうら
怒るわけにもいかずね(笑)。
糸井
それは肝が座っているとも言えるけど、
ほかにやりようがないときに出る
「ほかにないじゃん」だね。
「ほかにないじゃん」は、
自分をずいぶん助ける言葉です。
写真
みうら
糸井さんにもそういうことありましたか。
糸井
大勢の集まりで、黒田節みたいな
大盃を渡されたことがあったんだよ。
ほら、俺は酒を飲めないでしょう、
そこに一升瓶でドドドッとつがれてね。
心の中で「さぁどうするか!」という
言葉がこだました。
さっきの赤瀬川さんと同じで、
これはどうにもならないと判断し、
でもやっぱり、お酒は飲めないから、
ちょっとだけ飲んで。
みうら
で、どうしたんですか。
糸井
盃をそのままワーッと持ち上げて、
頭からバーッとかぶりました。
みうら
頭からですか。
糸井
ほかにないんだよ。
みうら
ないですよね(笑)。
そうですね。
写真
糸井
それで「ごちそうさまでしたぁ!」と叫んで、
みなさんも「ワー!」なんて盛りあがってくれて、
その直後に上司の人が、
「糸井さんは飲めないんだよ!」と
注意してました(笑)。
そういう「ほかにないんだよ」の局面は、
けっこうみんなにあるような気がするよ。
でもやっぱりそれは
ある種の決断力がなきゃできないよ。
みうら
そうですね、アイデアがなけりゃ。
その場で謝って
「できない」とだけ言うのがふつうだよ。
赤瀬川さんにしても、
期待されてることに対する気持ちがあると思うんだ。
やっぱり肝が座ってるんだよ。
みうら
まぁ、どっちもザブンと被るってところが
一緒ですね。
糸井
偶然にもね(笑)。
ザブンがよかったね。
つまり「つまんない」のが嫌なんだ。
いちばん嫌なんだよ。
みうら
おもしろいほうがいいから。
糸井
それはね、俺も賛成よ。
おもしろいほうがいい。
写真
(おもしろくその場を解決、
心に刻んでおこう。
明日につづきます。)
2019-12-19-THU