「木々」が「森」になりように。


── 今回、はじめてお洋服をつくってみて
「発見」って、なにかありましたか。
渡邉 そうですね‥‥ひとつはやっぱり「色」です。
── 色。
渡邉 そう、「色って綺麗だなあ」と、あらためて。
── そんなにシンプルなことが「発見」でしたか。
渡邉 はい、発見でした。

たとえば、ブルーのワンピースを着て
街を歩いているとき、
なんとなくまわりをみわたすと、
自分の着ている洋服の「ブルー」が
そのなかで、いちばん綺麗な色だったんです。

それが‥‥すごく、うれしくて。
── たしかにあのブルーは、目を引きます。
渡邉 これまで、自分が洋服を選ぶときにも
だいたい白か紺、黒ばかりを選びがちでした。

それ以外の綺麗な色が、
意外と、うまく見つけられなかったんですね。
── ハッとするほどあざやかなブルー以外にも
ブラウスの淡いピンクだったり、
スカートのプリントの発色だったり、
たしかに、前に出てくるのは「色」ですね。
渡邉 うん。「色」は、すごい「発見」でした。
皆川 一方で、良重さんのグラフィックって
すごく特徴があるから
そこに「共感」して、着たくなるような人も
やっぱり、多いと思います。
── グラフィックに、共感。
皆川 ぼくもそうなんですけど、
良重さんも「外の情報」でものをつくらない。

つまり、グラフィックって
「今年のトレンドは、こんな感じ」
というわけじゃないから、
「描いた人」と「見てる人」の「内面」と言うか
空気感が、共感しやすいと思うんです。

▲渡邉さんのグラフィックがのった「CACMUA」のプリントスカート
── なるほど‥‥。
皆川 だから、良重さんの世界観の好きな人が着れば、
まちがいなく「似合う」と思いますよ。
── さきほど皆川さんが
「洋服は、着てくれる人に寄り添う」と
おっしゃってましたけど、
たしかに、試着しているみなさんを見ていたら
洋服が、さらに素敵に感じられました。
渡邉 そうですね。
で、それを見ているわたしも、うれしいんです。

「自分のつくった洋服を
 だれかが着ている姿を見ることって
 こんなにもうれしいんだ!」って。
── そう思われましたか。
渡邉 はい。

「洋服をつくる人って、
 こんなにうれしいことをしていたのか!」と(笑)。
皆川 うん、うれしいですよね(笑)。
渡邉 着てくれるだけでもうれしいのに、
本当に似合って、
その人が、もっとかわいくなったりしたら‥‥
もっともっと、うれしいんです。
── はー‥‥。
渡邉 人を、かわいくすることが、うれしいんです。

洋服のお仕事って、こういう感覚なんだなと
はじめて知りました。
── 他のプロダクトとは、ちがう感じですか?
渡邉 ちがいました。

もちろん、他のプロダクトだって
つかってもらえることは、すごくうれしい。

でも、洋服って、
その人にぴったりくっつくものだから‥‥。
── 皆川さんは
ずっとそういう「うれしさ」を感じながら。
皆川 そうですね。

その気持ちは、洋服をつくりはじめたときと
ぜんぜん変わらないです。
渡邉 それと、今回ものすごく感じたのは
「チームに恵まれたなあ」ということでした。

サポート体制が、ものすごくって(笑)。
皆川 それは、すばらしいことですね。
渡邉 パタンナーのかたは、
わたしが「こうしたいな」という形を汲んで
サッとパターンをひいてくれるし‥‥。
皆川 ええ。
渡邉 実際の生産してくれた三越伊勢丹さんのチームも、
「こういう感じの生地が、ほしいんですけど」
というと、すぐに見つけてくださったり。

担当が、男性のかたもいらっしゃるんですけど‥‥。
── それも、剣道部出身で恰幅の良い、
うでっぷしの強そうな、壮年男性ですよね。
渡邉 そう、そのかたにグラフィックを見せたら
「俺、こっちだと思うなあ」とか
けっこう、即答で返ってきたりとか(笑)。
皆川 いいですねぇ(笑)。
── 「当事者意識」が、ものすごいんです(笑)。
渡邉 もちろん、糸井さんや「ほぼ日」のみなさんにも
たすけられていて‥‥
本当に「いいチーム」に恵まれました。
── そんなチームに入れて、うれしいです。

でも、CACUMA誕生のきっかけになったのは
「あの質問」だったわけですから
皆川さんも、超重要なメンバーですよね。
渡邉 はい、皆川さんとのトークショーが
なかったら‥‥本当に、ありがとうございました。
皆川 いえいえ、そんな(笑)。
── では最後に、キューピッド役である皆川さんに
今後のCACUMAに期待することを‥‥。
渡邉 わ、緊張します‥‥(笑)
皆川 いやいや(笑)、そうですね‥‥
キギとして独立して1年以上は経つと思いますが
その名のとおり「木々」が「森」になるみたいに、
CACUMAも、
一本の幹だったものが枝分かれして
森のように、成長していくんだと思うんですね。
渡邉 はい。
皆川 ファーストコレクションのラインナップを見ても
良重さんと植原さんのお仕事を見ても
「あ、キギって本当に木々なんだな」と感じます。

だから、「木々」が「森」となるように
CACUMAも成長してくだろうし、
そのことが、すごく楽しいなあと思いました。
渡邉 うれしいです。
皆川 なんかね、良重さんと植原さんがつくる「森」に
たくさんの仲間や動物たちが
集まってくるみたいな、
そういう景色を想像できて、うれしかったな。
渡邉 ‥‥ありがとうございます(笑)。
皆川 ‥‥そのうち「メンズあればいいのに」とか。
── あ、それはすでに植原さんが(笑)。
渡邉 ちょっと気が早いと思うんだけど(笑)。
<おわります>

2013-06-26-WED

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